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フェイスブックの残酷な写真

 知人の話・・・
彼女は時々、前夫の名前をネット検索する。何回目かの時にフェイスブックがヒットした。同姓同名はたくさんいるのであまり深く考えずに同姓同名のアイコンを見ていった。
 するとそこで目が留まった。間違いない、前夫だ。そのアカウントはたまたま公開になっていたので彼女がフェイスブックにログインすれば見ることができた。
 見つけてしまったからには見たくなる。アイコンの写真は誰が撮ったのだろう、そんな事から気になりだした。
 彼女の前夫は、彼女の父親の介護を手伝うことを条件に彼女の親に住宅購入資金を提供してもらった。介護と言っても直接看るのは彼女だからそうそう手伝う機会はない。
 ところが前夫は、彼女が父親の介護で帰宅が遅くなると「俺の飯はどうしてくれるんだよ」と言うようになった。こんな人だったのか!と正体がわかった時にはすでに遅し、家目当て、金目当てが透けて見える。
 結局、離婚に至るのだが、向こう側に誰かの存在を感じる彼女の直感は、たまたま見つけたフェイスブックで確実となった。
 フェイスブックには沖縄での写真が数枚あった。沖縄は彼女が前夫を連れて行ったのだ。それにも関わらずまるで自分が沖縄を知ったような口ぶりでコメントが付いていた。
 他にも食卓の写真があり、犬まで飼っていた。その犬は別れる時に彼女の家に置いて来た犬種と同じだった。
 「誕生日はいつも蟹を食べに行く」そんなコメントに大皿に盛られた蟹の写真がアップされていた。
 やっぱり女がいたんだ、だから預金通帳を寄越せと言って引き下がらかったのだ。彼女の恨みは再燃した。
 親の介護に疲れている彼女を怒鳴っている裏で、他の女に優しくする亭主の残酷を数年後に知った彼女は、絶対に許さないと決めた。ましてや結婚していたのだ、こちらとの約束を踏みにじり結婚なんてそんな事は許せない。
 でも直接何かすれば犯罪になるので、そういうことはしない。その代わり何をしたか、まだ持っていた前夫の写真を壁に貼り釘を打ち込んでいった。
 私は気が済むならそれでいいと思った。ちょっと恐いけれど。
 

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