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【短編小説】UNO


「ご飯も食べたことだし、みんなでUNOやろうぜ!」

「やるやるー、けんちゃんもやろー?」

「おっ、久しぶりだ!奏と律、僕は強いから覚悟するんだぞ!」

「俺友達と学校で毎日やってるから負けないもんね」

「奏、この前怒られてたよね」

「おいっ、それは言わないって約束だろ!」


今日は大晦日。
私の実家に旦那の鍵(けん)と一緒に帰省している。
奏(かなで)と律(りつ)は姉の子供である。
2人とも姉に似たのだろう、とても人懐っこい。そして、もちろんのこと可愛い。
私達はまだ子を授かっていないため、
2人を見ていると早く自分の子供が欲しくなってしまう。
それは鍵も同じなのだろう。
普段から優しい彼だが、子供と触れ合ってるときは一層笑顔が輝いている。
じゃれ合っている所を側から眺めるのが私の趣味だ。

「姉ちゃんもやるんだから、早く来いよ」

私の幸せである平穏な時間はすぐ壊された。
さすがモンスター。

私含めた4人でUNOをすることになった。
奏は仕切りたがりなのでカードを切っては均等に配ってくれた。

「じゃ俺の番からな!」

「ずるい」

奏とは対象的に大人しくて優しい律。
基本受け身で静かな子だが、心を開くとよく喋ってくれる。

「紳士は女の子を優先してあげるものだよ」

「ちぇっ、わかったよ。じゃ律から時計回りな」

口では強気だけど根は優しいから私は2人とも大好きだ。
はじめに山札からめくられたカードは黄色の3だった。
ゲームスタート。

「えーっと、、やった!はじめは黄色の5」

「じゃ俺は黄色の9と緑の9の2枚だし!」

「奏やるじゃないか、流石毎日やってるだけある。テクニシャンだ」

「だろーっ!次兄ちゃんだよはやく!」

「焦るなよ。まだゲームは始まったばかりだ。それでは、赤の9で色を変えさせてもらうよ」

私も赤のカードを1枚場に出した。
それからぐるぐる回っていき、右の人にバトンを渡すようになったり、1人飛ばされたり、4枚カードを引かされたり場の状況は目まぐるしく変わっていった。
5周をした頃、奏が鬼気迫る声をあげた。

「UNO!あと一枚であがっちまうぜー!」

「はやいよぉ、みんな少ないのに私だけ5枚も持ってる」

「律、早くしないとビリになっちゃうぞ!」

「わかってるよ〜…」

律の声はしょんぼりしていたが、鍵がカードを出してゲームは再開した。
私は出せるカードがなかったため1枚引いてパスをした。
律は場に2枚同じ数字のカードを出した。
すると勢いよく奏は立ち上がった。

「やっほーい!律サンキュー!あっがりー!!」

「えーっ、早いよ。つまんないじゃん」

「勝ったもんは勝ったの!」

「そんなのわかってるよ」

律はぶっきらぼうに答えてからゲームは再開された。
律は3枚、鍵は2枚、私も2枚の手持ちだ。
鍵は出せずに1枚引く。
私はたまたま同じ数字の黄色で出せて、UNO。

「お姉ちゃんも〜?私負けちゃう」

「まだわからないよ?さあ続きをやろう」
鍵は優しく律に言葉を返す。

律は同じ色を出して残り2枚になった。
鍵は出せなかったのでカードを1枚引き、そのカードを場に出した。
現在の色は黄色の8。
私は何も考えず出せるカードを出してきただけだ。
ただ運だけは良かった、青の8であがり。

「うぅー。けんちゃんと一対一…」

「さぁ、一騎討ちといこうか」

「うん、じゃ私の番だよね。はい、UNO!」

「むむむ、これは困ったな。青は出せないから1枚引こう。出せるカードはないな、パスするよ。」

「ほんと?やったー!!あがり、あぶなかったあー」

「あらら、負けてしまったよ。完敗だ」

鍵は右手で後頭部をかいたときに左手が下がり、持っているカードがちらっと見えた。
あれっ、一個前の色って、、、なるほどね。


やっぱり鍵は私のウーノだ。

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