せら(塩野谷恭輔)

宗教学や文学を勉強しています。第六期『情況』。編集長になりました。noteはお休み中。…

せら(塩野谷恭輔)

宗教学や文学を勉強しています。第六期『情況』。編集長になりました。noteはお休み中。お仕事募集してます。

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COVID-19と、世界認識の一断面

 COVID-19をめぐってはネット上で確認できるだけでも、巷間すでにかなりの数の論攷が世に出ているので、あえて私が新しく付け加えるべきことなどあまりなさそうに思う。だけれども、あくまで自分の思考の整理のために、noteを書いておくことにする。  私は医学の専門家ではないし、これから論じる内容はなんらかの提言を目指したものでは全くない。とはいえ(当然だが)医学的見解を無視して論じるつもりもないので、その点において何か誤りがあればぜひ指摘してもらいたいと思う。  さて、本題に入

    • 供養

       以下は、今年度の大学の講義で書いた短い小説ですが、どこにも掲載する予定もないので、供養としてここに置いておきます。 ───────────────────────────────── 茶店にて その日、通された席の足元には、床材が腐り落ちて片足がすっぽりとはまるほどの穴があいていた。以前何度か、ものは試しとその穴に足を差し入れてみたことがあるが、汚水でじめじめした土の表面を靴底で撫でると、彼岸の溜息のようにひんやりとした風が吹き込んできて、そんなことをした翌日には決まっ

      • パンデミックをどう見るか───世界の言説から:2020-2021

         本記事は、2021年4月28日(水)に東京大学政治経済研究部というところの定例会にて発表したレジュメを転載したものです。データの更新など最小限のものを除いて改稿は行なっていません。  COVID-19関連の拙論では4本目になりますが、発表の性格上、内容的にはこれまでの文章に負うところもかなり多いものになっており、内容上の重複もあることを最初に断っておきます。以下、本文です。 ───────────────────────────────── 1. はじめに  新型コロ

        • サロンえんとつ町ーー『えんとつ町のプペル』と西野亮廣という父

           西野亮廣原作の映画『えんとつ町のプペル』が話題になっているらしい。それは単に、今年1月の国内映画興行収入で現在3位につけており、先日には日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞を受賞した、という理由だけではない。特にオンラインサロンという西野氏のビジネスモデルとの関係においても、それは善かれ悪しかれ注目を集めてはいる。  また、西野氏の“悪名高さ”ゆえに、実際に観に行った人たちのレベルを超えて、映画そのものも一種の「炎上」の様を呈している。これに対して、『海獣の子供』などで

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        COVID-19と、世界認識の一断面

          COVID-19をめぐる議論と、それを取り巻く磁場について

           本記事は、ルネサンス研究所の2020年9月定例研究会にて発表した内容を一部改稿したものです。  公開がこの時期になってしまったのはひとえに私の怠惰なのですが、そのため、内容的には少し古いものになってしまっています。とはいえ、当時の状況についての観測記録という面も持っているので、あえてほとんどそのままの形で残しておこうと思った次第です。  さて、新型コロナ関連で私が書いた記事では、これが三本目になります。一本目は、「COVID-19と世界認識の一断面」という記事で以下のN

          COVID-19をめぐる議論と、それを取り巻く磁場について

          環境ノート グレタ演説と『天気の子』(後編)

          4.『天気の子』――環境問題への応答作品として【ネタバレあり】  新海誠の『天気の子』は、環境問題をテーマにした作品である。新海自身もインタビューの中でこれを認めているし、さらに以下に記したように私見では、本作は気候変動問題に対して資本主義体制を擁護する上で教科書的な作品にまで仕上がっている。  舞台は2021年夏の東京。主人公の森嶋帆高は離島から東京に家出してきた高校一年生だ。劇中の東京は異常気象のため、連日の大雨に見舞われている。行き場のなかった帆高は、東京へのフェリー

          環境ノート グレタ演説と『天気の子』(後編)

          環境ノート グレタ演説と『天気の子』(前編)

          1.序スウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥーンベリが引きつづき話題を呼んでいる。12月2日から開催されるCOP25(註1)の開催地が、現地の政情不安のためにチリから急遽スペインのマドリードに変更されたのだが、グレタ氏は移動手段がなく困っているらしい。というのは、「飛行機は温室効果ガスの排出量が多く乗ってはならないから」である。  ネット上の反応は、冷笑的なものがほとんどである。こうした見解はネットだけでなく、リベラル派から保守派にわたる多くの知識人(?)が共有しているものだ

          環境ノート グレタ演説と『天気の子』(前編)

          「表現の自由」は誰のもの?—— 欽定:戦後民主主義——

          0. あいちトリエンナーレ2019でのできごと 3年に一度開催され、今年で4回目を迎えた国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」で、企画展「表現の不自由展・その後」が開幕からわずか3日で中止となったニュースが大きな話題となった。はじめに言っておかなくてはならないが、筆者自身はこの展示を実際に見に行ったわけではないので、そのつもりで以下の文章を読んでほしい。  経緯を確認しておくと、「表現の不自由展・その後」とは、「日本の公立美術館で、一度は展示されたもののその後撤去された

          「表現の自由」は誰のもの?—— 欽定:戦後民主主義——

          京都アニメーション放火事件に際して、わたしの思うこと

           2019年7月18日、京都府伏見にある京都アニメーション第一スタジオが放火され、多くの死傷者を出した。事件発生当日午後22時の時点において、死者は33名、負傷者は36名に及んだ。戦後最大の死者を出した事件として世間の関心も高く、翌19日の段階で本件についてのwikipediaページも既に作成されていたものの、警察に確保された容疑者もまた重体であり、事件の詳細についてはまだわかっていないことが多い。  本件がこれほどの注目を集めることになったのは、死傷者数の多さもあれ、京都ア

          京都アニメーション放火事件に際して、わたしの思うこと