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紛争鉱物って何?

 ブラッドダイヤモンド(原題 : Blood Diamond)という映画をご存知でしょうか?2006年公開、レオナルド・ディカプリオ主演の紛争ダイヤモンドを巡るサスペンス映画です。この映画、公開されたのは一昔前ですが、現在でも地球の大地が生んだ天然資源を巡る争いは続いています。皆さんも知らないうちに紛争に、そして世界の貧困問題に加担しているかもしれません。

● 紛争鉱物って何?

 紛争鉱物とは、重大な人権侵害を引き起こす内戦や紛争や戦争によって武装勢力や反政府組織の資金源となっている鉱物のことです。主にアフリカのコンゴ民主共和国及びその周辺9か国(コンゴ共和国、アンゴラ、ザンビア、タンザニア、ブルンジ、ルワンダ、ウガンダ、南スーダン、中央アフリカ)で採掘される鉱物資源を指します。コンゴ民主共和国ではツチ族とフツ族の民族対立及び資源獲得競争に起因する第二次コンゴ紛争が勃発しましたが、形式上は2003年に終結しています。しかし、残念ながら現在でも大小様々な反政府組織が各地で活動を続けています。反政府組織は鉱物を資金源として武器を購入し、その武器を脅しに虐殺・略奪・強姦を繰り返し、更にはその再現性を高めるため薬漬けにした少年兵を育成して彼らに同じことをさせています。まさに北斗の拳のような世界が広がっているのです。
 この紛争鉱物は通称3TGと呼称されており、内容としてはスズ(Tin)、タンタル(Tantalum)、タングステン(Tungsten)、金(Gold)といった4つの鉱物を指します。

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● 紛争鉱物は何に使われているの?

 恐らく多くの日本人は、遠いアフリカの話と感じるかもしれません。ところが、その反政府組織の資金源となっている鉱物が何に使われているのかというと、実は皆さんが使っているスマートフォン、パソコン、自動車等なのです。全て現代の生活には欠かせないアイテムですので、当然市場の需要は莫大な値となり、結果的に供給量の増大が要求されます。紛争鉱物が使用されている工業製品の使用者や利用者は結果としてコンゴ民主共和国及びその周辺9ヶ国の反政府組織の資金を増大させ、人権侵害に結果として加担している可能性があります。このことから紛争鉱物を使用しない、使用率を下げる動きが世界で活発化しています。

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● そもそもコンゴ民主共和国ってどんな国?

 コンゴ民主共和国はアフリカ大陸の中部に位置し、国土はアフリカ55か国の内2番目に大きいです。世界遺産リストに登録されている5件は全て自然遺産で、ボノボやオカピ等の固有種、キタシロサイや東ローランドゴリラなどの絶滅危惧種が多く生息する自然豊かな国です。更に、世界有数の天然資源の埋蔵量を誇っており、特にレアアースと呼ばれる貴重な鉱物が多くあることでも知られています。しかし、このような有数の自然、余りある資源があるものの、世界最貧国の一つになっています。
 コンゴ民主共和国は19世紀のベルギー国王レオポルド2世による圧政、20世紀の長期に渡るモブツによる独裁、続く内戦とエボラ出血熱の感染拡大と非常に多くの困難を経験している国です。コンゴ民主共和国は本当はとても豊かな国になるポテンシャルはあるものの、政治は混迷を深め、インフラは完全に破壊され、反政府組織が各地で活動することから発展が大きく遅れています。この遅れに大きく関わってきているのが「紛争鉱物」です。

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● 国際社会は紛争鉱物の問題をどう対応しているの?

 アメリカ合衆国では株式市場に上場する企業に対し、3TGについて供給元等の情報についてを開示する事を義務付けるドット・フランク法が2010年に制定され、2013年から施行されました。鉱物供給元開示義務の対象となる企業はアメリカ国内外の約6000社と推計され、対象企業のサプライチェーンの企業にも影響を与えています。この法律では紛争鉱物の使用が禁止されている訳ではありません。しかし、サプライチェーン上のどこかで紛争鉱物を使用していることが明るみに出れば企業価値は大きく損なわれます。これに加えて、部品供給や取引を行う企業のどこかが人権侵害、社会経済、環境破壊に繋がる行為に加担していることを管理把握できていないことはCSR(企業の社会的責任)を十分に果たせていないことになります。多くの企業では上流サプライヤーと精錬所を特定し、Responsible mineral initiative(RMI)が提供するConflict Minerals Reporting Template(CMRT)とCobalt Reporting Template(CRT)の提出を各サプライヤーに求めています。

● 最後に

 先進国に生きる私たちは自分が手にする製品に対して責任を持つ必要があると思います。値段が安いから、皆が持っているから等の安易な理由ではなく、エシカル(倫理的)に考え、どの製品を購入選択することが持続可能な社会に貢献できるのかを頭に入れておくことが大切だと感じます。確かに多くの企業は社会的責任を全うするため多くの費用をかけてサプライチェーン上に紛争鉱物の使用がないことを確認しています。しかし、まだまだ不十分であるからこそ、その購入資金の一部は反政府組織に渡り、非人道的な行為を助長させています。日本から見れば遠い遠いアフリカの国々のことかもしれませんが、世界から悲しみを少しでも無くすために、自分自身にできることから始めてみても良いのではないかと思います。

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