【インタビュー連載】Senyou代表取締役CEO井上紫音 第三回:信頼関係の構築ー長期的な人間関係を前提として信頼を築く
第一回:カウンセリングでは現状や考えを淡々と聞き、受け入れる
第二回:その人にあった支援の手法を見つけて相手のやる気を着火させる
第三回:信頼関係の構築ー長期的な人間関係を前提として信頼を築く←New!! 今回の連載
第四回:納得感を持って仕事を決める事が参画後のパフォーマンスを向上させる
第三回:信頼関係の構築ー長期的な人間関係を前提として信頼を築く
ー前回はAさんの転職において、ご本人に深く内省し気づきを得てもらうことを目的に、あえて多くの面談を経験・失敗してもらったというお話しをお聞きしました。また、そのためには、エージェントとエンジニアの信頼関係が大切だと。
エンジニアさんと「信頼関係をつくる」というのはエージェントの腕の見せ所だと思いますが、井上さんの場合はAさんとどのように信頼関係を深めていったのでしょうか。
信頼関係を構築するため、Aさんと直接会い、2人でゆっくり話せる機会を作りたいと考えました。そういった目的から、あえて僕が同席できる会社の対面で行う面談を組みました。
この会社の面談は、Aさんの現況では落ちてしまう可能性が高いことは想定していましたが、案の定面談の結果はお見送り。ですが、ここが信頼関係構築のチャンスなので面談終了後に一緒に食事に行かせてもらいました。この日の僕の目的は、Aさんと信頼関係を作ることだったので、面談の結果自体はどちらでもよかったんです。受かったらもちろんそれで良いですしね。
ー落ちる面談と分っていても同席し、食事にいく。日々多くの仕事を抱えているビジネスマンにとってはものすごく手間がかかることですが、これが苦にならないのはなぜでしょうか?
そうですね、他のエージェントの場合、落ちる可能性が高い面談に同席して、終了後にエンジニアを食事に誘ってその後に向けて信頼関係を作る、という行動をとる人ははあまりいないかもしれません。時間の無駄と考えて落ちる面談は組まないし、このときのAさんの状態(思考性やスキルから決まりにくいと判断される状態)で面談後にフォローに入ることもないでしょう。
このときは、やはりAさんにとって一番良い仕事を見つけるためにご本人の良い状態を引き出したい、そのために信頼関係を作りたいっていうことが1番の目的でしたね。
あと、個人的な思想ですが、僕は人との縁は1回限りではないと考えています。ビジネスにおける短期的で利害の上にある人間関係より、中長期で、価値観が合う人との信頼関係の上で成り立つ人間関係の居心地が良く、それ自体が自分の幸せに繋がるタイプです。
そういった価値観なので、例え今回Aさんにお仕事が決まらなかったとしても、関係性を続けていきたいと考えていたこともあり、他のエージェントと比べるとコスパが悪いと思われる対応やフォローを苦に感じるということはないです。
ー短期的で利害の上にある人間関係ではなく、長期目線での信頼関係の上で成り立つ人間関係。この価値観が根底にあることが井上さんが他のエージェントとは異なる大きなポイントかもしれませんね。具体的に、このときはAさんにどのようなお話をされたのでしょうか。
食事の席では、まず面談がダメだった理由をしっかりお伝えしました。面談に臨む準備が不足していたこと、とくに今やっているアルバイトの仕事と参画する仕事との繋がりがない点や、自発的に何か勉強しているのか聞かれても言えることがなかったこともお見送り理由ですと。まぁシンプルに求められていた経験が足りなかったという要因もあったのですが。
これは、正直僕が気づいた落ちた理由もあったのですが、一般的な観点や、クライアントがこう言っていますっていう言い方で伝えましたね。
ここで、敢えてそのように伝えたのは、井上の主観ではなく、一般論・客観論としてクライアントに求められていることをご本人に理解して欲しかったからです。
先にもあったように、Aさんには自分の頭で深く考えてもらうことが必要だと感じていたので、落ちた理由に対して、僕が正解を伝えて指導するっていう方法ではなく、まずはシンプルに、「そういうことでした」っていうのを伝えました。その上で「どうします?」というスタンスで、フラットに話したほうがご自身の考えが出てくるんじゃないかなって思って。
初回のカウンセリングでは、「目の前に来た仕事をやるだけ」だと言ってたけれど、自分で認識できていない深い部分にある価値観や、長期的な将来展望みたいなことがあるはずなので、それを引き出せるような会話をしました。
そうして話していく中で、Aさんにはいざ仕事を始めたら純粋に、かつ一生懸命やるという価値観があり、仕事を怠惰に進める人ではないという事がわかりました。
ただ、自分から仕事を取りに行くことや、将来を見据えて今自分が何をすべきかを考えることをしてこなかった。そういう環境に置かれたことがないんだ、ということを感じました。
Aさんから深い部分にあった価値観が出てきて、前向きな方向に向かうための光が差したところでやっと、僕の方から「やりたいことを叶えたいなら、こういうやり方があるよ」というお話とか、僕が今まで経験してきたことや知識から、将来的に目指せる報酬やキャリアチェンジなど幅広い可能性を提示しました。
ここまで話したとき、Aさんのやる気が着火されたというか、ちゃんと僕の言葉が耳に入るような状態になってくれたと感じました。
この状態が僕が狙っていた信頼関係ができた状態ですね。僕の言葉が耳に入るような状態になってくれると、メリットが2つあります。
1つ目は、今後仕事をしていく上でこちらの言うことを信頼して実行してもらいやすくなるというビジネスライクな側面からのメリット、2つ目は仲間として互いに言葉が響く状態でありたいというウェットな側面からのメリットです。
第四回:納得感を持って仕事を決める事が参画後のパフォーマンスを向上させるに続く
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