【保存版】Web時代のライター・編集者らが選ぶ「 #今年の一冊 」9選
12月13日(水)、sentenceを運営する編集デザインファーム「inquire」のSlackに「#books」というスレッドが誕生しました。
パートナーとして関わるライター・編集者たちも含めて、10名以上のライターたちが、今年読んだおすすめの本を次々と紹介してくれました。
「このままスレッドが流れてしまうのはもったいない。。」そう考えたinquireでは、このスレッドで紹介された書籍をピックアップしてnoteで紹介したいと思います。
モリジュンヤ(@JUNYAmori)
■肩書き:
inquire代表取締役、IDENTITY共同代表取締役、NPO法人soar副代表
■プロフィール:
横浜国立大学経済学部卒。『greenz.jp』編集部に参加し、副編集長を経験後に独立。フリーライターとして数々のメディアに寄稿する他、『THE BRIDGE』等のメディアブランドの立ち上げや運営に関わる。2015年に編集デザインファーム「inquire」を創業。「問い」と「探求」をテーマに、個人、組織、社会の変革を支援している。
■2017年のベスト本:
『隷属なき道 AIとの競争に勝つベーシックインカムと一日三時間労働』(文藝春秋)
■選定理由:
今年の1冊、迷いましたがルトガー・ブレグマン氏の著書をおすすめしたいと思います。オランダの新興メディア「デ・コレスポンデント」の創立メンバーであり、思想家としても活動している同氏。メディア運営に関わる人間として、どのような思想を持つ人なのかが気になり、手に取りました。
同書ではベーシックインカムに関すること、貧困をどうしたらなくすことができるのかについて綴られています。ブレグマン氏は、1章において「過去最大の繁栄の中、最大の不幸に苦しむのはなぜか?」というテーマについて語っています。経済は成長しているにもかかわらず、現代はうつ病などの健康問題が蔓延し、社会が幸福になっているとは言い難いのが現状です。
こうした課題は、2017年に出版された「ウェルビーイングの設計論-人がよりよく生きるための情報技術」などの書籍でも言及されています(こちらも選書しようか迷いました)。これまでとは異なったパラダイムで社会を捉え、未来を構想していく必要があるということを強く考えさせられました。
工藤瑞穂(@mimimizuho)
■肩書き:
NPO法人soar代表・編集長
■プロフィール:
1984年生まれ。宮城教育大学卒。仙台の日本赤十字社で勤務中、東日本大震災を経験。震災後、「小さくても、わたしはわたしにできることを」をコンセプトに、仙台で音楽・ダンス・アート・フードと社会課題についての学びと対話の場を融合したチャリティーイベントを多数開催。2015年12月より、社会的マイノリティの人々の可能性を広げる活動に焦点を当てたメディア「soar」をオープン。イベント開催、リサーチプロジェクトなどのアプローチで、全ての人が自分の持つ可能性を発揮して生きていける未来づくりを目指している。
■2017年のベスト本:
『わかりあえないことから──コミュニケーション能力とは何か』(講談社現代新書)
■選定理由:
「みんなちがって みんないい」ではなく、「みんなちがって たいへんだ」から始めよう。
そんなメッセージがこもったこの本は、劇作家の平田オリザさんが演劇というフィルターを通し、コミュニケーションについて語ったもの。出版されたのは2012年ですが、世の中の様々な人の意見がぶつかり、傷つけあうような出来事が起こるたび、何度も何度も読み返しています。
人はそれぞれ全く違う道を歩んで生きているので、同じ言語をしゃべっていたとしても、その背景には全く違うコンテクストを持っています。それなのに、どこかで「わかりあえる」と信じたい気持ちがある。そのせいで衝突を起こすのは、とても苦しいことです。
だったら、人はそもそも「わかりあえない」と受け止めることから始めよう。そのうえで、相手のコンテクストを推し量り、じっくり対話しながら共通点を探していくようなコミュニケーションをしてみよう。
オリザさんの言葉によって私は、人との意見の違いで生まれる”葛藤”こそが、本当のスタートだと思えるようになりました。
私はメディアの仕事を、一方的に大勢の人に何かを伝えているようで、常に「たったひとりの読者との対話を生み出すもの」だと考えています。意見が違う相手ならば、対話がうまくいかなくて、怒りや虚しさが生まれることもあるでしょう。
それでも、対話することをあきらめたくない。そんな人にそっと勇気を与え、背中を押してくれる本です。
長谷川賢人 (@hasex)
■肩書き:
86世代の編集者・ライター/フリーランス/KAI-YOU.inc 社外取締役
■プロフィール:
1986年生まれ。日本大学芸術学部文芸学科を卒業後、紙の専門商社勤務を経て、編集者/ライターへ異業種転職。ライフハッカー[日本版]、北欧、暮らしの道具店を経て、現在はフリーランス。ウェブメディア運営をはじめ、記事広告、ブランディング広告、インタビュー、イベントレポート、製品導入事例などの制作や編集に携わる。音声配信に未来を感じて番組を制作・配信中。https://hasegawakento.com/
■2017年のベスト本
『“トークの帝王"ラリー・キングの伝え方の極意』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
■選定理由
オバマやトランプといった大統領クラスから、レディ・ガガといったセレブリティ、その他にも50年間で5万人と対談した“トークの帝王”が、半生を綴りながらキャリアを振り返り、ぼくらに「人とうまく話すための極意」を教えてくれる一冊。
彼はギネスブックにも掲載された伝説的トーク番組CNN『ラリー・キング・ライブ』の司会者として、数々のゲストとトークを繰り広げてきた。それだけに、さぞ昔から流暢にしゃべっていたかと思えば、初めてのラジオでは緊張から声が出ず、局長からドヤされるという失敗談を持っている。どんな名人も、最初から名人だったわけじゃない。
この記事を読んでいるということは、きっとあなたは編集やライティングに興味があるのでしょう。この仕事は「誰かと話して始まる」ことが、インタビューだけでなく案外多い。だからこそ、「書く」「まとめる」以外にも、「聞く」「話す」というスキルも磨いておいて損はない。もっとも頭でわかるより、体に染み込ませる以外に最善策はないのだろうけど。
ちなみに、本書で「会話の達人になるための習慣」がいくつか明かされるのだが、「達人は『独自のものの見方』をする」そうだ。ジャズのスーパースター、フランク・シナトラがある名曲をそれまでと異なる解釈で歌いあげ、観客を驚かせた一夜があった。そこからラリー・キングは「人の“ものの見方”を変えてしまう人こそが“話し上手”と言えるのである」と感じたのだという。
もし、「ライターは何のために仕事をするのか」と問われたら、この言葉をすこしだけアレンジして答えれば、たいがいは感心されるのではないでしょうか。
最所あさみ(@qzqrnln)
■プロフィール:
大手百貨店入社後、ITベンチャーを経て独立。フリーのコミュニティマネージャーとしてコミュニティ形成、Webメディア運営、イベント開催に携わるかたわら、個人でファッションや小売にまつわる有料マガジンを発行。
個人note:https://note.mu/qzqrnl
■2017年のベスト本
『小さなチーム、大きな仕事: 37シグナルズ成功の法則』 (早川書房)
■選定理由
無理に組織を大きくしていくことに長年疑問をもってきたのですが、「小さい組織のまま身の丈にあった成長」と「組織を拡大して大規模なプロジェクトをやる」ことは二元論ではなく、小回りのきく小さな組織のままで影響力のある仕事をすることもできるのだと気づき、「ヘルシーなスケール」を目指すきっかけになった一冊です。
ただ効率化するという話ではなく「失敗を過大評価しない」「最も重要なことは一度にひとつだけだ」「熱意を優先順位と混同するな」など根本的な哲学に共感する部分が多く、自分がチームを作るなら必ずみんなに読んでほしいと思っている一冊です。
望月優大(@hirokim21)
■肩書き:
コモンセンス代表/ニッポン複雑紀行編集長
■プロフィール:
ライター・編集者。日本の移民文化・移民事情を伝えるウェブマガジン「ニッポン複雑紀行」編集長。BAMPで「旅する啓蒙」連載中。経済産業省、Googleなどを経て、スマートニュースでNPO支援プログラム「ATLAS Program」のリーダーを務めたのち17年12月に独立。東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了(地域文化研究専攻)。関心領域は社会問題、社会政策、政治文化、民主主義など。趣味は旅、カレー、ヒップホップ。
■2017年のベスト本
『マッドジャーマンズ ドイツ移民物語』 (花伝社)
■選定理由
80年代の東ドイツとモザンビーク。内戦が激化するモザンビークから労働力として東独へと移った数多くの人々。そして、冷戦の終焉、ドイツの統一とともにまた別の人生へと変転することを余儀なくされた名も無き人々。当事者たちへの聞き取りから生み出された3人のフィクショナルでリアルなキャラクター。小さな歴史と大きな歴史が具体的な人間の生の上で交錯する。ある場所で生まれ、ある場所で暮らし、ある場所で死んでいく。忘れ得ない特異な痛み、その痛みを誰もが抱えている。移民でない生など、本当にあるのだろうか?
長谷川リョー(@_ryh)
■肩書き:
ライター・編集者、メディアプランナー
■プロフィール:
リクルートホールディングスを経て、独立。修士(東京大学 学際情報学府)日本テレビ『SENSORS』シニアエディターとして数多くのベンチャー経営者や最先端で活躍する研究者やクリエイターへ取材・執筆を重ねる。『AMP』編集デスク。『ONE MEDIA』企画顧問。将来の夢は馬主。ポートフォリオ:https://ryoh0508.tumblr.com/
■2017年のベスト本
『Homo Deus: A Brief History of Tomorrow』 (Harper)
■選定理由
日本でもかなり話題になった世界的ベストセラー『サピエンス全史』(ユヴァル・ハラリ著)の続編です。まず、ざっくりと本著を要約します。
飢饉・疫病・戦争を克服したあと、人類に残る課題とはなにか。ハラリは大きく「不死の獲得」と「幸福の再定義」をアジェンダに設定します。
永続的な幸福を得るためには、人間のリエンジニアリングが必要になる。そして、人間性がハックされれば、権力は個人主義からネットワーク化されたアルゴリズムへ移行していく。バイオテクノロジーとコンピューター・アルゴリズムによって、私たちはより力強い虚構や完全な宗教を創造する。不死と幸福の獲得により、ホモ・サピエンス(ヒト)はホモ・デウス(神)へ変身していく。
歴史哲学をベースにテクノロジーと未来の社会像を語る意欲作であり、知的興奮をビンビンに駆り立てられながら2-3日で一気読みしました。
向晴香(@m___hal)
■肩書き:
編集者・ライター
■プロフィール:
Inquire Incとgreenz.jpに所属し、ライター/編集者として活動中。大学卒業後、NTTドコモを経てオンライン英会話のレアジョブでオウンドメディア運営を担当。最近の関心はコメディーと社会問題とミクロヒストリー。TBSラジオとハロプロが生きる活力。
■2017年のベスト本
『エウロペアナ: 二〇世紀史概説』 (白水社)
■選定理由
文章に秘められたとてつもない可能性を垣間みたような気がしました。
この本では、20世紀に起きた歴史的な事象が、時系列やスケール、真偽すら無視して、コラージュのように叙述されています。
ブラジャーと第一次世界大戦、強制収容所とバービー人形、十月革命と終末論など。意外な形で紐づく事象の連なりを追いかけていくと、軽い車酔いのような感覚になりました。
客観的な事実を再配置することにより、これまでにない形で歴史を知覚する体験をもたらす。自分もいつかこんな文章を紡ぎ出してみたいと思っています。
大崎祐子(@yuko_osaki)
■肩書き:
inquire 広報
■プロフィール:
1993年生まれ、 長崎県長崎市出身。熊本大学在学中、熊本にいながら東京や海外の人と働く「リモートワーク」を企画・営業・広報の領域で実践。ハヤカワ五味・きゅんくんといった若手クリエイターのマネージャー、株式会社QREATOR AGENT代表取締役秘書、株式会社キャスターの広報・ブログ編集長を経て2016年より、IT大手企業に入社。2017年11月より、フリーランスの広報・ブランディングとして会社公認の副業を開始。
■2017年のベスト本
『【小さな会社】逆襲の広報PR術』 (すばる舎)
■選定理由
スタートアップ・ベンチャーで必要な「攻め」の広報で必要になるノウハウがぎゅっと詰まった一冊。これまでも広報にまつわる本は読んできましたが、これは自分の教科書として何度も読みたいと思いました。広報・PRを強化したい組織の方はぜひ読んで欲しい一冊。
岡田弘太郎(@ktrokd)
■肩書き:
編集者
■プロフィール:
1994年生まれの編集者 / DJ。慶應義塾大学でデザイン思考/サービスデザインを専攻。在学時に『greenz.jp』や『SENSORS』でライター、複数のウェブメディアで編集を経験し、現在は編集デザインファーム「inquire」に所属。ミレニアル世代向けのビジネスメディア『AMP』や『Unleash』の編集に携わる。音楽ビジネス誌『gig』編集長。関心領域はビジネス、音楽、デザイン、テクノロジーなどを横断的に。
■2017年のベスト本
『法のデザイン—創造性とイノベーションは法によって加速する』 (フィルムアート社)
■選定理由
新しい価値を社会に提示し、実装しようとする起業家やクリエイターを法律の側面からサポートしている法律家・水野祐氏の初の著書。ルールを柔軟に解釈し、そのルールを乗り越えていこうとする「リーガルデザインマインド」を身につける重要性が、音楽やアートなどの事例を踏まえながら語られています。
リーガルデザインマインドを学んだことで、日常の契約やルール、社会における決まりごとを捉え直すという思考の癖が少しでも身につきました。普段の取材で、新しい挑戦とそれに伴うルールに関する話になることが多く、その度に書籍の内容に立ち返った1年でした。今年立ち上げから関わったミレニアル世代向けのビジネスメディア『AMP』にて取材させてもらったことも相まって、とても思い出深い一冊です。
いかがでしたでしょうか? 読んでくださった皆さまも「#今年の一冊」などのハッシュタグで、オススメの一冊を教えていただけると嬉しいです。それでは、よいお年を!