綿貫灯莉

「小説家になろう」、「カクヨム」で小説を投稿しています。

綿貫灯莉

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最近の記事

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自己紹介

綿貫灯莉(ワタヌキトモリ)と申します。 数日前からnoteの投稿をはじめました。 noteでは引き続き、小説を投稿する予定です。 個人的に欲しかった物語を書いています。 そして、広い世の中、近い感性の方がひょっとしているかもしれないと思い、試しに投稿しています。 すでに2作品を投稿していますが、どちらも「スキ」を頂けて、とても驚きました。読んでいただけるだけでもありがたいのに、アクションをいただけると嬉しいものですね。 これから、細々とやっていけたらと思っています。

    • さくらこまち

      (短編:約6,000文字ー約12分)  帰宅すると、塗装が一部剥げた白木のキッチンカウンターの上に小さな花が飾られていた。  ジャムの空瓶らしい透明の小瓶に生けられていたのは、爪の先くらいの淡いピンク色の小花を、弾けんばかりにたくさんつけた可愛らしい花だった。そして桜とも少し違う、名前の知らないその花は、確かに見覚えのある花だった。 「かなちゃん、これどうしたの?」  換気扇をつけ忘れているのか、部屋中に焦げたニンニクの美味しそうな香りが広がるキッチンで炒め物をしている

      • 希死念慮の詩

        (自由詩:約1,000文字ー約3分) 死にたい 「死にたい……」  つらいことが、あったんですね 「死にたい……」  今いる場所から、逃げ出したいんですね 「死にたい……」  苦しいんですね 「死にたい……」  希望が持てない未来に、絶望しているんですね 「死にたい……」  誰かに復讐、したいんですね 「死にたい……」  取り返しのつかない、失敗をしてしまったんですね 「死にたい……」  生きたいんですね 「死にたい……」  行き詰まってしまったんですね

        • 学校の帰り道

          (短編:約2,700文字ー約6分) 帰り道  学校帰りの買い食いが好きだ。  持ち帰ったものを暖房のきいた家の中で食べるのも悪くないが、寒空の下、コンビニ前で買ったばかりの中華まんにかぶりつくトキメキは外でしか味わえない。  鼻の頭を赤くしながら、陽菜は買ったばかりのオレンジ色のピザまんを、コンビニの外に置かれたベンチに座って一口食べた。  トマトソースの甘さと、チーズの濃厚な塩味が口いっぱいに広がる。求めていた味に陽菜は目を閉じて、口角が自然にあがるのを止められなか

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          おやすみなさい

          (短編:約5,320文字ー約10分) おやすみなさい  ソレはいつの間にか、わたしの部屋にいた。  ソレの存在に気がついた時には、すでに手のひらサイズになっていた。白くモコモコとしたソレは床の上に落ちていたのだ。最初はホコリだと思って無視していたが、何となく成長しているように見える。  わたしはソレをなんとなく拾って、テーブルの上のチョコが入っていた箱に入れてみた。  生きているのか、時々もぞもぞと動く。  普段は会社に行っているので、日中の様子は分からないが、何

          おやすみなさい

          来年も会いたい友人がいる

          (短編:約9,230文字ー約20分) あけおめ 「俺、来年になったら死のうと思っているから」  ユウキはそう言って改札を抜けると、階段を下りはじめた。  年始、まだ正月の雰囲気を町全体が引きずっている土曜日の午後。  久しぶりに集まって飲もうぜと、大学時代の同級生から誘いを受けたユウキとオレは、都内へ向かう電車に乗るため、駅のホームに向かっていた。同じ駅を利用するなら一緒に行こうと、改札前で待ち合わせをしていたのだ。 「え?」  オレは何かの聞き間違いかと思い、聞

          来年も会いたい友人がいる

          ある少女の、ある日の話

          (短編・827文字ー約2分) 虹  七海は、体の半分が無くなってしまったような喪失感に苛まれながら、スーパーに向かって歩いていた。  母親に頼まれたものを買いに行くのだ。  いつまでも部屋から出ようとしない七海を、外に出すための口実だとは分かっている。  三日前にクロが、虹の橋を渡ってしまったのだ。  七海が子供の頃から、ずっと一緒にいたあの子は、半身といっても良いくらい心が通じ合っていた。  学校で嫌なことがあって、泣きながら帰った時には、静かに寄り添ってくれた

          ある少女の、ある日の話