見出し画像

希死念慮の詩

(自由詩:約1,000文字ー約3分)

死にたい


「死にたい……」
 つらいことが、あったんですね

「死にたい……」
 今いる場所から、逃げ出したいんですね

「死にたい……」
 苦しいんですね

「死にたい……」
 希望が持てない未来に、絶望しているんですね

「死にたい……」
 誰かに復讐、したいんですね

「死にたい……」
 取り返しのつかない、失敗をしてしまったんですね

「死にたい……」
 生きたいんですね

「死にたい……」
 行き詰まってしまったんですね

「死にたい……」
 大切な存在を、失ってしまったんですね

「死にたい」
 口癖なんですね

「死にたい……」
 生きることに、疲れてしまったんですね

「死にたい……」
 孤独、なんですね

「死にたい……」
 南の島で、のんびりしたいんですね

「死にたい……」
 全てを、投げ出したいんですね

「死にたい……」
 頼れる存在が、いないんですね

「死にたい……」
 衰えていくことに、恐怖しているんですね

「死にたい……」
 なんとなく、死にたいんですね

「死にたい……」
 今、幸せなんですね

「死にたい……」
 追い詰められているんですね

「死にたい……」
 消えてしまいたいんですね

「死にたい……」
 誰かに、引き留めて欲しいんですね

「死にたい……」
 現状を、打破したいんですね

「死にたい……」
 自分のことが、嫌いなんですね


 もしも今いる場所から離れて
 誰も自分のことを知らない
 新しい環境でやり直せそうなら

 そんな居場所を
 探してみるのも、いいかもしれない
 

 もしも隣に
 静かに寄り添う
 温かい存在があったなら
 
 死にたい気持ちを持ちながらも
 今日だけは生きようと思えるかもしれない

 そんな寄り添ってくれる存在に
 まだ出会えていないだけなら
 あと少しだけ、生きてみるのもいいかもしれない


 もしも、孤独を愛し
 もしも、言葉を愛しているのなら

 まだ見たことのない言葉の羅列に
 出会いに行くのもいいかもしれない

 今まで想像したことのない
 思いもよらない出会いがあるかもしれない

 
「死にたい……」
 わたしは、この人生の幕引きを望む

 理性で死を求めても
 本能は死を恐れる

 自殺の成功の裏側には
 数多くの失敗がある

 失敗して、今より悪い状況で
 生き残ってしまったら……

 だから、躊躇う
 

「死にたい……」
 わたしは、この人生の幕引きを望む

 今はまだ、生きている
 この先、死ぬことも知っている

 ただ、いつ死ぬかわからない
 どんな死に方をするのかもわからない

 今、生きていることは間違いない
 それは紛れもない事実


「死にたい……」
 わたしは、この人生の幕引きを望む

 がんばらなくてもいい
 立ち止まってもいい
 そのままの自分でいい
 
 そう優しく声をかけられても
 相変わらず、死を求める

 人間として生きていくのが
 わたしという意識で、肉体で
 この先も生きていかなければならないことが

 堪らなく、つらい

 でも
 それでも

 意気地なしのわたしは
 この人生の幕引きを望みながら
 「死にたい……」と呟くだけ

 そんな風にまた、諦めながら
 
 今日を生きる






こちらの作品は、「小説家になろう」で過去に掲載していたものを、一部修正してnoteにアップしています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?