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#1 「幸せの分母のつくりかた」(前編)

日本酒の枠を超え、色とりどりの分野で活躍する「ニホンジン」を訪ね、
日本の輪を広げて行きます。それはまさに「和の輪」。
第一回のゲストはフレンチレストランsioのオーナーシェフである鳥羽周作さんです。

鳥羽周作さん(左)と薄井一樹(右)

「sio」に場所を提供していただけるということで、ある日の昼下がりに代々木上原に降り立ちました。駅からほど近く、様々な飲食店や雑貨店のお店が肩を並べる中、sioはあります。
フレンチレストランという多くの人が想像する敷居の高さはなく、代々木上原という街に溶け込みながらも、輝くセンスの良さと、人の温かさが醸し出す居心地の良い空間が私達を迎え入れてくれました。
鳥羽さんと薄井さんは以前から交流があり、はじめて会ったその日にはもう、未来やビジネスに対して意気があった仲だそうです。
料理とお酒という、切っても切れない関係の中で、今を生きながら、常に先を見つめ、刺激を与えてくれる人とのこと。そんな鳥羽さんの情熱に今日はふれたいと思います。

薄井 ……なんか照れるね。

鳥羽 超照れるやつですよ。仲良いですけど、改めて話す機会ってなかなかないですもんね。

薄井 あんまりないかもね。

鳥羽 超〜緊張しますね。まあ、でも、あれですよ。真面目な話が八割、いつも最後はグダグダ二割ってのいうのが多いですよね。でも、薄井さんとは割と、お互い、モノを作ってるんですけど、モノを作るっていうすごいミニマムなところと、 もうちょっと広い視野での思想がすごい似てるんで、友達の少ない僕が唯一友達と言える中の一人が薄井さんだと 僕は思ってますね。

薄井 (俺も)友達少ない……

鳥羽 薄井さんの方が多いと思うんだけどな。俺、めっちゃ友達少ないから。(笑)

薄井 料理好きなんですか?そもそも。

鳥羽 料理は好きですよ。これ、結構みんな誤解しがちなんですけど、料理を自分のためにするのはまったく好きじゃないんですよ。だから、家で朝ごはんを食べるとしたら、何でもいい。だけど、誰かに作るとなったら、やっぱりめちゃめちゃ好きで。変な話、面倒くさいと思ったことないです、どんな状況でも。それは唯一、この仕事でよかったって感じです。

薄井 俺、日本酒、作ってるじゃないですか。でもね、麹と向き合ったり、発酵してるもろみと向き合うってことよりも、やっぱりその出来上がった「仙禽」っていう日本酒をみんなに飲んでもらう方が好きなんだよ。

薄井 それって、「幸せの分母」ってやつでしょ?いつも言ってる。

鳥羽 なんかストイックになりすぎて職人になりすぎちゃうと、見ているところが狭くなりすぎちゃうっていうのが良いことであり、デメリットでもあると思ってて。やっぱりバランスだって思いますね。

薄井 職人もね、必要なんだよね。良いものを作るためには職人がいなく ちゃいけないんだけど、でも良いものが作られたとしても、そこに滞在しすぎるのも良くない。

鳥羽 最後のゴールを見せるところはあくまでもお酒を飲んでくれた人たちで、料理を食べてくれた人たちってところに、一番のベクトルが向いてないと、そもそもやる意味もなくなっていっちゃうというか。で、そこへの答えって、お客さましか持ってないじゃないですか。それを見なくなったら、ただの自分が作りたいものを作るって話になっちゃうんで。だから、僕と薄井さんが似ているのは、作りたいものがある意味でないんだと思ってて。お客さんに求められるものを作るのが好きなタイプなんだなっていうふうに、同じ匂いがしているのはそういう部分です。

後編に続く


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