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#1 「幸せの分母のつくりかた」(後編)

日本酒の枠を超え、色とりどりの分野で活躍する「ニホンジン」を訪ね、
日本の輪を広げて行きます。それはまさに「和の輪」。
第一回のゲストはフレンチレストランsioのオーナーシェフである鳥羽周作さんです。
※#1の後編です。 前編は
こちら

鳥羽周作さん(左)と薄井一樹(右)

薄井 まあ絶好調だと思いますけど。去年からね。

鳥羽 そうですね。大変なコロナという状況続いていますけど。緊急事態宣言が出る前日かな、わざわざ寄ってくれたんですよ。心配してくれて。で、3分5分くらい話して帰るっていう、本当にそういうところが薄井さんらしいなっていうか。恩着せがましくしないけど、無茶苦茶、愛があるみたいなね。

薄井 超アクセス悪いんだよね。

鳥羽 わざわざ京都から戻る時に途中で寄ってくれて、なんかああいうことがあってよかったなって。記憶に残りますからね。まあ、絶好調と言われながら、毎日絶望しながら僅かな希望見て、毎日生きてますけどね。

薄井 でもさ、コロナの前と後で大きく変わったでしょ?

鳥羽 そうっすね。コロナの前と後で変わったのって、これ飲食におけることだけじゃないと思いますけど、いろんなことが制限されて。例えば、外食しちゃいけませんよってなった時に、人って初めて限りがあると尊いと思うようになって、そこを重要視するようになるじゃないですか。だから、その時に何をみんなが重要にしてるのかって、常に考えてたのが一番ですね食事っていうものが限られて、10000回食えている食事には大してみんな気を使わないけど、あと100回って言われたら一回をめっちゃ大事にするじゃないですか。その一回に対してレストランは何をするかみたいなことはめちゃくちゃ考えてましたね。

薄井 具体的にいうと何が変わったんですか?何か新しいものが生まれたとか。

鳥羽 まず一つは、時間の使い方が変わったと思うんですよ。8時以降はそもそも出れないじゃないですか。で、その中でリモートワークをしている人がめっちゃ増えた中で、前は9時に出社して仕事してみたいなところが、1日のタイムスケジュールが、夜8時から一気に仕事する人もいれば、朝一気にやって家で一日趣味やるって人も増えた。時間がフレキシブルになった時に、レストランって今までは6〜12時くらいの夜中心だったのがもっといろんな時間に食べたい人が増えて。そういう中で、これまで12時までやっていたのを、大体8時閉店になったその4時間を朝にくっつけたら、めちゃくちゃ評判が良くて。朝ディナーっていうのがコロナの時にめちゃくちゃ流行って。今はお休みしているんですけど、次の準備で、予約がもう一年くらい取れなかったですからね。

薄井 朝ディナー?

鳥羽 朝ディナー!めっちゃ、最初、文句言われましたからね。朝からディナーって何だよっていうのと、夜がダメだから朝やるなよみたいなのも、めっちゃ言われて。それに対して一個一個S N Sで全部丁寧に俺が説明するっていうので納得していただいて。ただ、この朝ディナーのディナー体験っていうのが重要で。朝ごはんを作っているところはいっぱいあるんですけど、朝にレストラン体験するパッケージという、さっき言った、食が制限されたことで求められたのは食体験なんですよね体験価値を朝に持ってきたのは意外とやっているところは少なくて、そこの朝ごはん食べつつ、レストランも感じるっていう体験がめちゃくちゃ人気になったっていう意味では、意外とどこも朝ディナーってやってなかったので新しいかなって思いましたね。

薄井 すごい評判良かったんだね。

鳥羽 めっちゃ良かったと思いますね。あと、自分も体感して思ったのは、ご飯食べ終わって10時半で、まだすごく明るくて1日長っ!みたいになるんですよ。昼ごはんも食べなくていいし、みたいになって。あと、ビジネスシーンの人も結構打ち合わせで使ったりとか、そういう感じで朝ディナーは需要がありました。10月にレストラン出すんですけど、その影響もあって、朝昼晩と三部営業するみたいな。

薄井 三部営業ってすごいですね。

鳥羽
 そうなんですよ。三部営業するのに一番大事なことっていうのはシェフが店にいないことなんです。「シェフの稼働時間=レストランの営業時間」ってなると絶対に無理なんですよ。でも、そこは、シェフがいなくても回るようにすると、マネタイズできるポイントが24時間になるというか。これはコロナで気づいた、シェフじゃなくてチームで戦うシステムを作ることでもっとたくさんのマネタイズポイントができるというは大事なことだと思いますね。

薄井 それはコロナがきっかけじゃなくて、ずいぶん前から準備はしてきたんでしょ?

鳥羽 そう。薄井さんもそうだと思いますけど、2年も前に僕はnoteで、こういうことがあるとは予想してなかったですけど、シェフが店にいない店づくりっていうのを「愛がある故に厨房を去らねばならん」っていうnoteを書いて、僕はもう厨房にいるのをやめますっていう宣言をしてて。これは奇しくも薄井さんも蔵に入るのをやめて任せてるっていうのと一緒で、来たる未来にたくさんの人を幸せにするために、どうしてもプレイヤーでい続けたらできないフェーズってのがあって、そこを見据えてるって意味では結構似ていますよね。

薄井 プレイヤーであることが必ずしも良いわけじゃない。

鳥羽 でも、なんかやっぱりプレイヤーでいたいって時期もあって。でも最近みんなが、何かやっていることを外から見守っているお父さん的な立ち位置になっちゃっている自分がいて、それを受け入れると割と物事もっと大きく動くなみたいな。コロナで大きく変わったのは、そこに拍車がかかったこと。きっかけはコロナでふくらんだっていうのは間違いないですね。

薄井 でもさ、やっぱりさ元々はプレイヤーだからたまに入りたくなるじゃん厨房に。蔵に入りたくなるしさ、たまに入ると、なんかいろんな細かい変更があったり、知らないうちに物の場所が変わってたり、仕組みがちょっと変わってたり、あれ?みたいな。

鳥羽 あるある!超ある!なんか、もうそうなってんだっていうのとか、こんなふうにやってたっけみたいなの、めちゃくちゃあって。

薄井 報告なくやってくれているのが嬉しかったりするでしょ?

鳥羽 なんか良い感じに回っているなって。その喜ぶポイントが昔と比べて変わりますよね。でも、これ、多分プレイヤーを辞めてこっちの世界に来た人しかわからない喜びだったりするじゃないですか?

薄井 前は美味しいお酒を作ったことを褒められて嬉しいていうのがあったけど、せんきんっていうブランドが喜ばれていることが嬉しいじゃないですか。

鳥羽 僕も本当にそうなんですよ。僕がお店にいなくて残念って時は言われる時はまだまだ自分の会社としては成長がまだまだ足りないなって思いますね。

薄井 なるほどね。

次回(#2)に続く。


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