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#4 「人生を変える原料からこだわるものづくり」(後編)

日本酒の枠を超え、色とりどりの分野で活躍する「ニホンジン」を訪ね、日本の輪を広げて行きます。それはまさに「和の輪」。第4回のゲストはunitoブランドマネージャー・吉田栞さんです。
※#4の後編です。 前編は
こちら

薄井一樹(左)と 吉田栞さん(右)

薄井 化粧品の成分開示についてこだわる、そのきっかけは何だったんですか?
 
吉田 私自身が幼少期の頃からすごく肌が弱く、26歳まで家族以外には誰にも素顔を見せられなかったんです。いろんな化粧品を使っても酷くなるばかりで解決しない中で、ナチュラルなものを使うのがいいのでは、というのが化粧品業界に飛び込んだきっかけです。
 
薄井 それだけ苦しかった体験があると共感してくれる人は多いでしょう。
 
吉田 今の会社に就職して「完然無添加(*)」を学ぶと同時に、私と同じ悩みを持つ人が実に多いこともわかったんです。unitoは元々クラウドファンディングで立ち上げたブランドなんですけど、たくさん肌悩みのコメントをいただいて、「ああ、人の顔が見えるブランドにしたいな、どういう思いで作られたものなのかが伝わるものづくりが大事だな」って思ったんです。
 
薄井 確かに、化粧品は《イメージありき》ですものね。でも実際は難しいでしょう? 添加物を入れないって。
 
吉田 化粧品は基本的に水モノですから。そのままにしておくと本当に腐るので。
 
薄井 封を開けなくても?
 
吉田 腐ります。防腐剤というものがあって、使い方次第では何年でも腐る心配はなくなる状態になってしまうものもあるんです。けれども、うちの基準としては防腐剤を使いたくない、ってなってくると、自然界に存在する成分で抗菌の素質を持っているものを入れていくだとか・・・でもそうするとコストがかかりすぎたり、流通させるのが難しいなど、別の問題が起きてくるので。逆に聞きたいですが、仙禽さんの日本酒ってすごい色んなファンの方がいらっしゃると思うんですけど、やっぱりそこの部分を担保していく、色んな場所に置かれることもあると思うんですけれども、そこってどのようにされてるんですか?
 
薄井 そこはもう販売店はギュッと絞っていて、自分たちのポリシーを理解いただけるのに従って冷蔵庫の管理であったり、僕らが保てる味わいの鮮度の中で販売をしていただいて、万が一余ってしまうようなことがあれば、逆に次の月からは販売量を減らすとかって調整をしたり、かなり細かいレギュレーションがうちはあって販売してます。海外に行く場合もマイナス5度の冷蔵庫で行くとか。で、行った先の現地の冷蔵庫までチェックするし、そこまでしないとやっぱり本当にフレッシュでいい日本酒の味をキープすることは不可能なんですよ。
 
吉田 同じ品質を担保するために限定するってことですね。やっぱり条件が厳しくなってくるんですね。unitoは完然無添加の商品なので直接日光が当たる場所や湿度変化の激しい場所では内容物が固まってしまうこともあるし。色が変わることもありますし、どこにでも置けるわけじゃないっていうの も、扱うには凄い面倒くさい商品だろうとは思うんですけど(笑)。でもそこまでしてでもやっぱり自然で、できるだけ混じり気のないものを作りたいなっていう。

薄井 そのコスメに仙禽の酒粕を選んでいただきましたけど、一番工夫されたこと、というか、一番困ったことは?
 
吉田 そうですね、やっぱり香りのところとかで、やっぱりちょっと調整を。匂いが出てくるんですよね。
 
薄井 まあそうだよね。あの匂いはちょっと独特な匂いだからね。
 
吉田 酒粕自体も、酒粕の生って結構匂いがあるじゃないですか。あれを、やっぱうちも人工的な香りにはしたくないので、自然な香りにはしたいものの、ちょっと時間が経つと匂いが強くなったりっていうところがあって、そこをどう調整していくか。匂いを取ろうとすると薄めなくちゃいけないので、どんどん美容成分も薄くなってしまうんですよね。そこの塩梅をどうしていくか、みたいなところで調整をして、自然な香り、ふくよかな香りを残しつつ、成分の濃い状態を保つっていうところのどこにするかみたいなところが結構、試行錯誤を繰り返しました。私はこれ全然大丈夫!とかって、やっぱり好みになってきてしまうので、そこが一番苦労した点ですかね。
 
薄井 日本酒の酒粕使って、逆に思わぬポジティブな発見は?
 
吉田 そうですね。やっぱり日本酒っていうところから、男性の方に初めて興味を持っていただくことがあって(笑)
 
薄井 本当に(笑)?
 
吉田 先日、小規模なエシカル系の展示会に出た時に、男性のお客様がいらっしゃって、「日本酒? 酒粕?」っていうので来てくださってご購入されていったんですけれども。「酒粕を使った化粧品っていうけど、全然ベタつかなくていいね」って。皮脂を整える効果とかで凄くサラッと仕上がるようなものになっているので、男性に凄く評判がいいです。
 
薄井 分かる。男性ってね、ベタつくの嫌なんだよね。普段からベタついてるからコスメでまでベタつきたくないんだよね(笑)。ところで、原料ですが、うちの酒粕の他にどんなものをアップサイクルしていますか?
 
吉田 宮古島でアロエの赤ちゃんを調達してます。一般的に親株のアロエをどんどん太らせるために、回りに生える新芽は抜いて捨てられてるっていうのを聞いて。有効活用して、なにか新しい価値が出せないかなって。丸ごと使ってファイトケミカル、ポリフェノールがたくさん、抽出できるとか・・・しかも新芽は小さいので機械では抽出ができなくて、農家さんに包丁と俎での作業をお願いして、すごく労力をかけたり・・・

薄井 アップサイクルも大変ですね。他には?
 
吉田 新商品で黒大豆の美容液を出しまして、これも福岡の農家さんに電話して、急に。電話して、会いに行ったっていうところから始まったんですけれど。
 
薄井 すごいな、いろんな地方に行って原料の調達に行くってと思って。料理人か、みたいな(笑)。
 
吉田 福岡の筑前の町が町おこしで作っている黒大豆があって筑前クロダマルっていう品種のすごい希少なんですけど、聞いたら、大中小で選別して、小さいものは可食部が少ないから捨てちゃってるって、すごいもったいないことをしてる。黒い色はポリフェノールなんですよね。でかつ、含んでる水分も少ないので、抽出がしやすいっていうのがあって、化粧品にピッタリじゃないかっていう。
 
薄井 そのマッチング感は気持ちいいですね。今何種類ぐらいになったんですか?
 
吉田 はい、新しい黒大豆が増えて16種類になりました。仙禽さんの酒粕が15種類目なので。
 
薄井 うちが15種類目。精米した時に糠も期待してるんですよ。日本酒ってお米を磨けば磨くほど価値があったんだけど、磨くことにもエネルギー使ってるし、副産物の糠を大量に出して、産業廃棄しなきゃいけないとか。それってちょっとずつちょっとずつ地球を痛めつけてるでしょ。だから、仙禽のオーガニックナチュールって、米をほとんど磨いていないんですけどね。でも酒業界全体を考えたら糠のアップサイクルも重要なので。
 
吉田 薄井さんにいただいた米糠を早速抽出かけまして、今、試作中です。
 
薄井 楽しみにします。確かに今、昔は、本来やってたことをもう一度、見直す時期に来てる。
 
吉田 私、薄井さんの「時計の針を戻す日本酒造り」って言葉が大好きで。あと「日本酒を伝統工芸品に戻すんだ」っていうその志も大好きで!

薄井 恐縮です。ありがとうございます。

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(*) 自然の力を活かし、自然の知恵を用いた抽出方法や保存方法を選択し、防腐剤、鉱物油、石油系界面活性剤、合成香料、合成着色料、エタノールを含まずに化粧品を作り、お届けすること。完然無添加®は、(株)長寿乃里、(株)イングの登録商標です。
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次回(#5)に続く。

 


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