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小澤メモ|SENTIMENTAL JOURNEYMAN|おっさんの旅。

14 おっさんの旅  辺境編 琉球エア・コミューター。

東京へ戻る。
たんちょう釧路空港のラウンジで、うまそうにビールを飲むオッサンとタバコをくゆらすオッサン。そして、これまでのルートをまとめているオッサン。三者三様で、搭乗アナウンスを待っていた。とりあえずはハンドルを握らなくていい。あとは、気ままに寝るだけだ。道東の辺境を巡る撮影旅行はここで終了。そして、数時間後には、羽田空港だ。そこで、解散! おつかれさまでしたっ! では、ない。旅は、ここが折り返し地点。羽田空港で一泊した後、今度は、東シナ海と南シナ海をまたぐ辺境の島へと向かうのだ。羽田空港に着いてから、まずやったこと。それは、荷物を減らすことだった。こちらは、もともと荷物をほとんど持ってきていない。しかし、他の2人は、撮影に使うものがいろいろあって、重量オーバーのタックスを支払っていた。彼らは、とくに防寒対策のアイテムを、折り返し地点でリリースしたかったようだ。

羽田空港、曇りのち、時々不穏。
だいぶ疲労も蓄積してるし、ここから目指すのは南西の辺境だ。できることなら身軽になりたい。しかし、オッサンたちには、旅にで出る前に決めたことがあった。それは、この撮影旅行の最終場面までは、一度も(現住所がある東京での)普段の生活圏へと立ち入らないということ。だから、一旦、東京に戻ってきたからといって、空港の外へと出るわけにはいかないし、ここまで誰かに荷物を受け取りに来てもらうこともノン・メルシー。もちろん、タクシーで荷物を取り替えてくるのもダメだ。田附勝は、自分がこれの言い出しっぺのくせに、軽く機嫌が悪くなっていたから、おかしかった。雪の中標津空港に降り立ったとき、Tシャツのオッサンを笑っていたのは誰だったか。結果をいうと、この問題はあっさりと解決された。空港で宅配便を委託できるのだ。そんなことも知らないで、あたふたして、ギスギスしだしたオッサンたち。まあ、こういうことが、誰かと旅するということなんだと、妙に納得したりもする。

目指すは西の辺境、与那国島。
翌朝。一番の便で、まずは石垣空港に向かう。そこで、琉球エアー・コミューターに乗り換えて、最西端の島といわれる与那国島へ。この琉球エアー・コミューターの路線は、修行と称して飛行機利用している人たちに、とても人気がある。修行というのは、航空会社のマイレージや特典のアップ・グレードのために、 1日に様々な乗り継ぎをして飛行機に搭乗すること。琉球エアー・コミューターに乗って与那国島に行くと話したら、JALに勤務する友人に羨ましがられたほどだ。いつかは乗ってみたいと思ってる。そんなことを言っていた。与那国島は、石垣島から118kmのところに浮かぶ島で、外国の台湾の方が近い(111km)。ちなみに、ドラマ『Dr.コトー診療所』の舞台になった島だ。窓から見えるエアー・コミューターのプロペラ音に、興奮なのか緊張なのかわからない動悸を感じつつ、(純くんの番屋にしろコトー先生の診療所にしろ、この旅は俳優の吉岡秀隆さんの足跡を追っかけてるみたいだなあ)と思った。そういえば、先月5月、コロナ禍で自宅作業をしているとき。音声ファイルが添付されてるだけのメールが届いた。再生すると、エアー・コミューターのプロペラ音だった。ひたすら、ブブブブーと飛んでいた。田附勝からだった。14
(写真はマイル修行僧に人気のエアー・コミューター/2019年)

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