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小澤メモ|NOSTALGIBLUE|思い出は青色くくり。

24 さすらうヒッチハイカー。

ヨセミテのヒッチハイカー。
アメリカはカリフォルニアのヨセミテ国立公園を訪れたとき、ひとりのヒッチハイカーを、撮影のモデルにハントした。長く伸びたヒゲと髪。鼻をついてくるすえた臭い。無精の向こう側に見え隠れしている若さ、そしてガッチリとしたフィジカル。サマー・バケーションで旅をしているという。撮影した後、持っていたお手製のボードを見せてもらった。どうやらイースト・ベイへ帰る途中のようだった。イースト・ベイというのは、サンフランシスコのベイエリアのある一部を指す。その近くのアラメダのコンクリート・スケートパークに、昔行ったことがあった。あの辺りということは、カリフォルニア州立大の学生かもしれない。彼が醸し出すメローな雰囲気がそのままボードの字の形や濃さに反映されていて、それじゃあ誰も気づかないというか読めないんじゃない?とつっこんだら、ゆっくりとジワっと笑っていた。

映画の中のヒッチハイカー。
ヨセミテで出会った彼のようなタイプなら、ヒッチハイクする方と乗せる方、どちらも心配はなさそうだ。しかし、映画でよく見るヒッチハイカーは何かと物騒なことが多い。そして、必須プロップスのように、そのヒッチハイクのシーンが多い。それには、欧米ではタクシーを止めるような気分でヒッチハイクするカルチャーが根強くあるからかもしれない。治安問題に直結する部分であるのにも関わらず。『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』で、マリリン・マンソン信者の女の子がブラピに手をあげたシーンみたいな感じ。もちろん、そういう出来事を必要としている物語なわけだから、当然といえば当然なのだけれど、『天国の口、終りの楽園』のような、友情を損なってしまうこともあったり、トラブルがつきものなのだろうか。とにかく、ヒッチハイクする方も、彼らを乗せる方も、(そういう映画の中では)命がけだったりする。『テルマ&ルイーズ』では、テルマが、チャーミングなブラピ(J.D.)を乗せてあげたばっかりに、全部を失ってしまうことになる。スティーヴン・キング原作の『ミザリー』では、結果的(というか否応なし)に、絶対やばそうな気配のアニーの厚意(高圧意?)にヒッチハイクすることで、ホラーな展開になっていく。このとき、アニーを演じたキャシー・ベイツは怖かった。

ヒッチハイカーと言えば。
とにかく海外作品では、ヒッチハイク・シーンを大変よく見るけれど、日本だとあまり思い浮かばない。個人的にはジャックス・カードのテレビCMシリーズの初期編を思い出す。場面は北海道。ヒッチハイクした農場のトラクターに乗った、パン職人を目指す伊藤歩さんと、脱サラしてカメラマンを目指す村上淳さんがすれ違うシーン。あとは、東名高速道路の用賀インター(ここが西へ向かう東名の起点)のとっつきにあるマクドナルドの前。ここはヒッチハイクのメッカのようになっていて、実際にボードを掲げる若者の姿をよく見かける。(ヒッチハイクをしたことはないが)何かにつけて金欠だった学生時代を思い出し、乗せてあげたいといつも思う。けれど、結局はブレーキではなくアクセルを踏んできた。会話するのが億劫なのかもしれないし、映画の残像のせいかもしれない。もし、もし、いつかヒッチハイクするときがあったなら、その距離の分だけでも今度は誰かに返してあげるべきだとは思っている。そうしたら、ヒッチハイクが映画だけの怖いものではないと感じるようになるかもしれない。夏休みとかバケーションの季節がやってくると、そんなことをふと思う。24

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