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事件です 49歳主夫の精神科入院日記(16)

薄衣です。

入院中って色々あったなぁ、と日々書きながら振り返っております。これが何らかの形で皆さまのお役に立てるものかどうか。立っていればいいなぁと思い、引き続き綴ってまいります。


考えさせられる出来事

今回は、入院中に起きたある出来事についてです。

私の入院中、一番驚き、そして色々と考えさせられた出来事でした。


ある日、私が病棟の廊下でお掃除業者のおじさん達と立ち話をしていた時のこと。

目の前の女子トイレから、1人の看護師が走って出てきます。その後を追うようにもう1人、女性の患者さんが走ってきます。
何が起きているのか、初めは全く分かりませんでした。

女性の患者が、看護師を追いかけ回していたのです。看護師が病棟内を走って逃げ、女性患者が追いかけ回す。これが数分続きました。患者達は何事かと廊下に出たものの固まっています。私もです。

するとちょうど、私の近くに別の看護師が来たので、慌てて上記のことを話しました。しかしこの看護師さんは「そうかぁ」で終わり。淡々と通常業務を続けています。

なので、もしかしてこれはよくあることなのか?みんな慣れているのか?と思い、お掃除のおじさん達に聞くと、「たまにはあるけど・・・」といった感じ。微妙です。判断に困ります。

見ると看護師は逃げ回った後、ナースステーションに駆け込み鍵をかけました。そこに女性患者が辿り着いたかと思うと、鍵のかかったドアに頭を打ちつけています。何度も何度も。心配になるほど強い力で。

これを見ても、ほかの看護師は誰も近づこうとすらしません。

ナースステーションの中を見ると、追いかけられていた看護師は電話中。医師でも呼んでいたのか。

すると、頭を打ちつけていた女性患者が突然立ち上がります。
ロビーに集まって、遠巻きに見ていた他の患者達がザワつきます。

何をするのかと思えば、私の近くに座っていた年輩の女性患者の背中をどつき始めたのです。

これに私は、咄嗟に彼女のもとに走り、腕を押さえて


「もう止めよう」


と声をかけました。
この時の彼女の腕、全然力が入っていなかったんです。私が触ったか触らないかくらいの、ほんのわずかな力で彼女の腕は動きを止めました。

すると、



なにやってんの~!!

裏返った大声でこう叫んで走ってきたのが、追いかけられていた看護師。

気づけば、私たちの周りに7~8人の看護師が集まっているではありませんか!

看護師達は、既におとなしくしていた彼女の腕を私から強制的に取り上げ、彼女の身体を押さえつけ独房へと連行していきました。


・・・・・・・・・・。

この時まず、私はなんとも言えないとても悲しい気持ちになりました。



直後の病棟

まずどつかれた女性患者さんは、幸い怪我はありませんでした。
それよりも、周りの患者達が大騒ぎです。

看護師の対応に文句を言う人、

泣きじゃくる人、

自分ならすぐに止めれたけど(自分は)キレると凄いから敢えて手を出さなかったとかイキる人

等々。

専ら、看護師達への不信が強かったと思います。


私は、「止めたの俺なんだけどなぁ」と思いながら誰からもイジられなかったことに少し寂しさを覚えつつ、1人で静かに座りドキドキを抑えようとしていました。

とにかく心臓のバクバクが凄かったのです。

病棟のザワつきはなかなか収まりませんでした。
看護師への不満を中心に、皆さんのマシンガントークが止まりません。


この騒ぎの後、看護師から患者へのフォローも全くありませんでした。
放置です。

なのでみんなしばらくの間大興奮。
そんなもんなのかなぁ、とチョット不安になりました。

この状況に疲れたので、私は部屋に戻りました。


1時間くらい経ったでしょうか、
病棟内がようやく落ち着いてきます。


そこで私は、アメニティをもらいにナースステーションに行きました。

しかし、ナースステーションでは看護師達がまだ盛り上がっています。

そのせいか私が3度、4度と「すいません」と声をかけても、けっこうな大声も出したのですが基本無視です。目の前に何人もいたのに。
自分としてはオペラ歌手並みの声で「すいません」を発したつもりなのですが・・・・・

とにかく誰も反応してくれません。そうしたところ、ちょうどナースステーションに入ってきた看護師を捕まえ、なんとかアメニティをゲットしたのでした。

さらに疲れました。

ちなみに、このナースステーションでの切ない体験。
この後何度も味わうことになるのですが、なぜ何度声をかけても誰も反応してくれないのか、今考えても分かりません。

タイミングを見計らっても、
ダメなときはダメでした。


なのでこの後、ナースステーションの敷居は、私にとってメチャメチャ高いものになりました。

そんなこんなでこの日の夜。
私はとてつもない不安に襲われます。



看護師への不信ですね。

私が止めるまで傍観していたこと。

追いかけていた彼女が既に静まっていたのに、無理矢理力ずくで押さえつけて連行したこと。

止めた私はもちろん、患者達に何のフォローもないこと。

ナースステーションで無視され続けたこと。

このとき私は、
もし私が看護師達と問題を起こして、たとえ殺されたとしても、きっと事故で済まされるんだろうなぁ。何も無かったことになるんだろうなぁ。

とか考え出して、止まらなくなりました。

それでも怖くて薬も頼めず。
辛い夜を過ごしました。





振り返ると

あの病棟は、何かあっても看護師からのフォローはありませんでした。たまたま私が経験しなかった、或いは目にしなかっただけなのか。そもそも精神科の病棟とはそんなものなのか。私には分かりません。

ある患者さんは、「何かあったら信頼出来る看護師がいるから、その人にだけ色々相談している」と仰っていました。

時と場合と人を、見定める必要があったようです。

看護師を追いかけ、他の患者に手を出した彼女。その力ない腕を今でも時々思い出します。本当に辛かったのだろう・・・そのくらいしか想像出来ませんが、思い出すたびに切ない気持ちでいっぱいになります。

その夜に襲われた不安。
今思えば飛躍してますし、
大げさなんですけどね。

でもいつもながら、
あの時の私はそういう状態だったのです。


長い目でも見られませんし、
その瞬間、その場その場が全てです。

だから、よく不安が圧勝してしまっていました。
あの時も本当に怖かったのです。

一旦落ち着く。
それすらなかなか出来ませんでした。

このあとこの日は、
部屋にこもっていたと思います。

何度か地獄の千本ノックも無視したらしく、後日言われました。
それくらい入り込んでいたということでしょう。


私はもちろん、病棟内全体がチョット異常でした。
この日は。

地獄の千本ノックについてはこちらをご覧ください。


50日間の入院生活で、病棟内の騒ぎとしては一番だったかもしれません。
いまだに、色々と考えさせられる出来事として心に残っています。


今回も最後までお読みくださり、ありがとうございました。

続きます。


今回のタイトル画像は、obkさんから。
ありがとうございました。
ホントに怖~い事件でした。

サポートに心から感謝です。主夫、これからも書き続けます。