雑賀孫一:謎めいた戦国スナイパーの生涯を解き明かす
雑賀孫一の生涯や、ゲームやアニメでどのように扱われているか、聖地やイベントを紹介
雑賀孫一とは
雑賀孫一(鈴木孫一)は、戦国時代に活躍した鉄砲の名手です。
現在の和歌山県を中心に、雑賀衆という鉄砲集団の頭領をしていました。
現在の傭兵のような集団で、頭領の雑賀孫一が襲名性だったようです。
最も活躍したのは雑賀孫一は、鈴木重秀・鈴木重朝の2代。
いつから代替わりしているか、詳しく判別できていません。
雑賀孫一が率いた鉄砲集団:雑賀衆
雑賀衆は和歌山市あたりを拠点にした集団です。
当時の和歌山は大名のような、力ある統治者がいませんでした。
そのため小さな地方勢力が多数存在し、協力して暮らしていたのです。
雑賀衆も、雑賀荘に住んでいたそのような集団の一つです。
雑賀荘は鉄砲の生産地であったことから、鉄砲の扱いが優れていました。
雑賀衆の鉄砲の腕前が素晴らしく、「遠くにつるした釣り針を撃ち」「暗闇でホタルを撃った」と伝わります。
雑賀荘の近くには「真言宗」の本山・高野山や、「根来寺」があり仏教勢力と懇意にしていたようです。
信長と敵対
1576年、懇意にしていた本願寺と織田信長が戦になります。
仏教勢力と仲のいい雑賀衆は、本願寺側で参戦します。
孫一率いる雑賀衆は信長と3度戦いますが、全て勝利したといっていい結果を残します。
1度目は本願寺の拠点を防衛した、「石山合戦」に参戦し大勝利。
鉄砲だけでなく水軍も駆使し、織田軍を撤退させることに成功します。
2度目は「雑賀合戦」での防衛戦です。
「石山合戦」で信長の怒りを買い、10万の軍が雑賀荘に攻めてきます。
これに対し一か月粘り停戦することに成功します。
3度目は「雑賀合戦」の数か月後の、織田軍の最侵攻の防衛戦です。
織田家の重臣「佐久間信盛」率いる8万の大軍が再び派遣されますが、これも撃退。
しかし本願寺が降伏したことで、雑賀衆も停戦。
織田家に従うことになります。
分裂する雑賀
織田家と停戦した雑賀衆ですが、平和にはなりませんでした。
雑賀衆内部で、親織田派と反織田派で意見が分裂したのです。
それぞれの有力者は以下の通り。
親織田派:「鈴木家」
反織田派:「土橋家」
雑賀孫一は鈴木家の人間ですので、親織田派だったと推測されます。
その後、反織田派が勢力を強め鈴木家は雑賀から追い出されてしまいます。
この時孫一の消息も不明になります。(本能寺の変の直後に行方不明という説も)
信長の死後
時代が流れ信長が本能寺の変で亡くなり、豊臣秀吉の時代。
雑賀荘は秀吉に攻められ雑賀衆は滅亡します。
秀吉と徳川家康が戦った「小牧・長久手の戦い」の際、雑賀衆は徳川方に付き秀吉と敵対したためです。
秀吉は家康に戦では敗北したため、和睦後その怒りを雑賀衆にぶつけたのです。
この時孫一が、豊臣方の降伏を勧める使者になっていたという説もあります。(雑賀衆として戦っていた説もあります)
雑賀衆の滅亡前後に、孫一は鈴木重朝に代替わりしたとされる説が有力です。
次代の孫一は秀吉に気に入られ、「鉄砲頭」として仕えたようです。
朝鮮出兵の際は九州を守ったといわれています。
一方全く逆の説もあります。
孫一は秀吉の朝鮮出兵には大義がないとし、朝鮮側に付いたとされる説です。
朝鮮軍に鉄砲を教え、「沙也加(さやか)」と呼ばれ将軍になったと言われています。
ただ朝鮮出兵の後も、日本で活躍した痕跡があるので真偽のほどは分かりません。
さらに時代が進み、関ケ原の戦い。
孫一はで西軍に所属し、伏見城の戦いで徳川家の重鎮「鳥居元忠」を討ち取ったと伝わります。
立派な手柄ですが西軍が関ケ原の戦いに敗れたため浪人に。
後に伊達家に招かれ、その際鉄砲技術を伝えたといわれています。
晩年は水戸徳川藩の旗本として余生を過ごしています。
アニメやゲームでの雑賀孫一
雑賀孫一は、現代でアニメやゲームのキャラクターとして登場しています。
代表的な作品を3つ紹介します。
『鬼武者』シリーズ
カプコンから発売されたサバイバルアクションゲーム『鬼武者』シリーズに登場。(鬼武者2より)
大きな鉄砲を持った、合理主義者として描かれています。
『戦国BASARA』シリーズ
カプコンから発売された戦国アクションゲーム『戦国BASARA』シリーズに登場。(戦国BASARA3より)
美少女化・女体化され、片手拳銃のような鉄砲を持つクールな女性として描かれています。
雑賀衆の仲間と固い絆で結ばれており、自分達を高く評価する者としか契約しない。
主要キャラクターの伊達政宗と顔なじみの設定。
これは政宗の父が雑賀衆を雇っていた史実と、晩年は伊達家に招かれていた史実を元にした設定と思われます。
本名は「サヤカ」となっている。(こちらも朝鮮側に付いたとされる史実ネタ)
『Fate/Grand Order』
スマートフォン向けRPG『Fate/Grand Order』に登場。
こちらも美少女化・女体化され女性になっています。
近代的な銃器を扱い戦う、やや内気な少女。
なんと外国人の設定で、奴隷として日本に来たところを先代の孫一に助けられた。
3代目孫一という設定で本名は「ホタル」。
これはホタルを撃ったという史実が元になっているかもしれない。
雑賀孫一のゆかりの地やイベント
雑賀衆が拠点にしていた和歌山県には、孫一ゆかりの場所やイベントが現代に残っています。
孫一にゆかりのある場所・イベントを3つご紹介します。
孫市まつり
「孫一まつり」は2005年から和歌山市内で開催されているお祭りです。
甲冑姿の参加者が行う武者行列が和歌山市駅付近から、和歌山城まで練り歩きます。
他にも鉄砲射撃、音楽ステージが行われています。
毎年3月に行われ、2024年は3月17日(日)に開催される予定です。
妙見山(雑賀城跡)
雑賀城は孫一の父によって築城されたと伝わる城です。
現在は城跡山公園になっています。
秋葉山(弥勒寺山)城跡
雑賀合戦の際に孫一が本陣を置いた場所です。
現在は「秋葉山公園」され説明版や石碑が設置されています。
和歌山城が望める、展望の良い場所でもあります。
まとめ
雑賀孫一は戦国時代に活躍した傭兵のような存在です。
織田信長と戦い苦戦させた人物
鉄砲の名手で、雑賀衆を率いた
秀吉の時代以降は詳しいことが分からず、いろいろな説がある
詳しい人物像や来歴の不明な点が多いですが、かえってそれが魅力を高めているのかもしれません。
鉄砲集団を率いた謎の男・雑賀孫一。
これからも私たちの心を打ちぬく魅力を、放ち続けるでしょう。
参考:紀伊国・雑賀の里 - 和歌山市観光協会
参考:信長に挑み続けた男・鈴木孫一(雑賀孫一)の合戦の舞台をたどる | わかやま歴史物語
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