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「言葉ハンター」の異名も取る日本語学者で辞書編纂者・飯間浩明氏の言葉に対する柔軟な考え方に感銘を受けました

『バラいろダンディ』昨日のゲストは日本語学者で辞書編纂者の飯間浩明氏でした。話を聴いていて、映画『舟を編む』を観て辞書編纂者という仕事の奥深さを知り、心が深く動かされた時のことを懐かしく想い出しました。

辞書に載せる言葉の説明を考える作業は、本当に骨が折れる作業だと思います。飯間氏も常にあらゆる言葉と向き合って、どのように表現するのが適切なのか頭を抱えながら闘い続けているようでした。

特にここ最近言葉の使い方は”多様性”のこともあいまって、さらに複雑になってきているようですね。

たとえば「帰国子女」という言葉もMCのふかわりょうは「使わないでください」と言われたことがあるそうです。飯間氏いわく「”子”が男性を、”女”が女性を表すから言葉としてはおかしくない」けれど、近頃大学では「帰国生」と表現することもあるとか。何気なく使ってしまっている言葉だったりしますが、過敏に反応する人も増えているということですね。

昨日番組全体を通して感じたのは、飯間氏の言葉に対しての考え方が非常に柔軟なんだなーということでした。”学者”と名のつく方々は、自分の主張が正しいとどこかこちらに押しつけてくるようなイメージがあります。でも飯間氏は「言葉はこういうもので、こういう使い方をしなければならない」というようなことは一切言いませんでした。

物腰柔らかな口調で、時代の変化によって新たに生まれてきたような言葉も含めて、この世に存在している言葉すべてを愛しく想っていることが伝わってくるように「こういう風に言葉を使ってみたらどうでしょう?」と優しく提案されているような気持ちになりました。

飯間氏の言葉で印象に残ったものがいくつかありました。言葉そのものに対してもっともっと深堀りしてみたくなるような内容ばかりですよね。

「この言葉を使ったら差し障りがあるということではなく、こういう言い方をすると言われた当人はどう思うかな?というのを常に考えて言葉を使えばいいと思う」

「言葉というのは、みんなが思っているように変わっていくもの」

「言わされているんじゃなくて、この言葉を使おう使わないを自分で判断しよう」

『バラいろダンディ』より

私もnoteを書きながら常に「この言葉遣いはおかしくないか?」「この漢字はどちらを使用するのが適切なのか?」「この言葉は読む人たちが不快に思わない表現になっているか?」等以前よりさらに言葉に対して敏感になっていることもあり、いろいろ発信する上で飯間氏の言葉を念頭において、より丁寧に自己表現していこうと思いました。

来月、名古屋短期大学・現代教養学科の学生が「オタク用語」約1600項目を採集した辞典「オタク用語辞典 大限界」が出版されるということで話題になっているそうです。

「最近の若者が使用している言葉を知りたい」「一昔前の”オタク用語”とどう変化したのか知りたい」とSNS等で盛り上がっているらしいです。

この「オタク」という言葉自体も、昔は”コア”な世界が好きな「愛好者」を意味するどちらかと言えばマイナスな表現だったときもありましたよね?今は「詳しい人・熱い人」たとえば「コーヒー・オタク」等の使われ方をするように変化してきました。

「オタク用語辞典 大限界」では普通の言葉の意味と少し違う解釈で表現されている言葉もいろいろあるそうです。一例として、

【けしからん】
本来の辞書的意味では「常識外れで許しがたい行動をとがめたりする時に使う」

「オタク用語辞典 大限界」では「叱るそぶりを見せつつも、本心では”もっと”というときに使う表現」

(用例)
「けしからん!いいぞもっとやれ」

「オタク用語辞典 大限界」掲載より

この言葉の解釈についても、飯間氏は「”けしからん”と言いつつ”好き”だった…は昔もあったし、日本人は表向きと内心が違う使い方をするのが好き。”オタク用語”は自分の生息している狭い界隈では、この意味は違うということなのではないか?」と。決して“否定形″の受け止め方をしない方なんですよね…飯間氏は。この「オタク用語辞典 大限界」も読んでみたいとおっしゃっていました。

「翻訳家によって作品の質感が変わるのや指揮者によって曲の解釈が変わるのと同じように、辞書は辞書によっていろんな解釈がある。それぞれ書いてあることが違う。いくつかの辞書を比べるのも大事」とも。

言葉というものは″生き物″で、時代によって常に変化していくものだと思います。その変化を飯間氏のように柔軟に受け入れながら、自分の考え方を相手に押しつけることなく、適切な言葉の″チョイス″をしながら表現していきたいと改めて感じました。非常に勉強になる有意義な時間でした。

長い文章最後まで読んでくださり、ありがとうございました。


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