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彼ってサイテーやろーかな?


朝のコーヒーを淹れているハルの前で、ハウスメイトのベンが唐突に聞いてきたとき、誰について話しているのか理解するまで数秒が必要だった。

ハルとベンと共通の友人達5人で昨夜食事に行った際、メイが言った。  『私の友達、「君のことは大好きで、一緒にいるのは楽しいけど、結婚とかそういうことは考えてない」ってBFに言われたんだって。彼女、もうすぐVISAが切れるし、1年以上つき合ってて結婚も考えていたのに。あの男、サイテー!』その場にいた女子3人は、「ひどーい。悲しー」と口を揃えた。

昨夜の席上では唯一の男性だったベン、その件に関する特段の発言はしていなかった。そして今朝、自問するような中途半端な問いかけをハルにしたのだった。
「Is he really an asshole?]

「だって彼は正直に彼の気持ちを伝えただけでしょ? 彼女を好きで、一緒にいて楽しくて、他に浮気をしてるでもなし。それとも交際したら絶対結婚しなきゃいけないってわけかな?そうじゃないでしょ。」

ベンは二年以上つき合った彼女と国際結婚をして、数年後に離婚。今はGFがいるけれど、自分が今後結婚することを想像できないとよく口にしている。そんなベンだから、例の彼に対する意見は察しがつきやすい。

「そうね。私の大好きな本に書いてあった。あなたには他人の行動や発言に責任はない、自分自身の言動に責任があるだけであるって。そうであるならば、彼はサイテーやろーってわけじゃないかもね。」とハルは返した。

ハルは最近読んでいるドン・ミゲル・ルイスの「四つの約束」の文章を引用した。原文はこうだ。

You are never responsible for the action of others;

you are only responsible for you.

そしてこう続く、「このことを本当に理解し、物事を個人的に受けとめるのをやめることによって、あなたが他人の軽率な発言や行動により傷つくことはなくなるのだ。」と。

実は最近の失恋の痛手に四苦八苦していたハルは、この文章によって結構ラクになったのだ。

とはいえ、大抵の女性は好きな男性と交際したら結婚の二文字はちらつくし、ましてメイの友人のビザ期限はかなり切実な問題ではある。彼女の悲しさや辛さは想像するに難しくない。

お互いの気持ちや言動だけでも行き違いが生じでしまう恋愛なのに、他国の人とのそれとなると、その他もろもろも関わってくるのだ。


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