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子と東京を見る

次男がどうしても行きたいコンサートが東京であり、私も付き添いで行った。東京に行くのは私が小学生の頃の家族旅行以来だ。果たして予約した新幹線にちゃんと乗れるのか、在来線に乗り継いで目的地にたどり着けるのか、不安と緊張で胃がひねり揚げになりそうだった。

不安のあまり早めの新幹線を予約し、その新幹線に確実に乗れるようにこれまた早めに家を出たので待ち時間多めのスケジュールになった。それでもギリギリになるよりはずっと胃に優しい。次男も気が長い方なのでのんびり一緒に待ってくれた。

私は目的地に着くことしか頭になかったが次男に「せっかくだし東京駅着いたら一回改札出てあのレンガのやつ見てみたいな」と言われ、やっと道程を楽しむことを思い出した。あのザ・東京駅というレンガ造りの建物は何出口に出ればいいのかググり、駅員さんに行き方を尋ね、私達は無事そこに出た。「わーすごーい、かっこいいー」と見上げながら歩く私は田舎者丸出しだったが、同じような人は他にもたくさんいた。ここはそういうところだからいいのだ。私達は東京駅をバックにひとしきりイエーイと写真を撮って気が済んだ。

そしてまた電車に乗って車窓からの東京観光を楽しむと、目的地に着いた頃には私は半透明になっていた。残りエネルギーがなくなって体が点滅するゲームのキャラクターか、過去を操作されて存在が消えかかっている人のようだ。ヤバイ、また頭が痛くなってきた。体力のなさが恨めしい。コロナが怖いからお弁当買って外で食べる予定だったが涼しい店内で食べることにした。早めに出発したおかげで時間はたっぷりあった。次男が「ゆっくり食べて大丈夫やから」と優しい言葉をかけてくれたのでそうさせてもらい、温かいスープをちびちびちびちび時間をかけて飲んだ。薬も効いてきてだんだんと私の色が濃くなってきてるのを感じた。私が次男の付き添いだったはずなのに申し訳ない。

コンサート会場まで次男を見送り私はカフェへ。一人でカフェに入るのもケーキセットを食べるのもいつぶりだろう。しばらくして休憩時間に入った次男から「鳥肌がすごいです!最高!」とラインがきて心から「よかったね!よかったね!」と思った。今まさに次男の魂が満たされている、命が励まされている。学校を休んでまではるばる東京に来た甲斐があったなと思った。

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