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【書評】 こちらの芥川賞受賞作品は読みやすくて面白い 『首里の馬』

ほぼ毎日読書をし、ほぼ毎日「読書ログ」を書いています。381冊目。

芥川賞受賞作品です。今回の芥川賞は、昨日ご紹介した『破局』と今日ご紹介する『首里の馬』の二本。

個人的には今日ご紹介する『首里の馬』が好きです。

主人公の未名子は沖縄で孤独に暮らす女性。彼女は、奇妙な資料館で役に立つのか解らない資料の整理を延々と続けている、そして日本語を母語としない人達に難解なクイズを出す仕事に就いている。双子台風の先発が通り過ぎたある日、未名子の住む家の庭に宮古馬が座っていた。

なんのこっちゃ解らない紹介になりそうなのだけど…… 読んで感じるのは、孤独ということについて、様々な角度から捉えつつ、その根っこを掘り当ててみようという試み。

主人公の未名子も、彼女が子供の頃から通っている資料館の館主の老人も、その娘も、クイズを出す相手も、皆、ひどく孤独だ。だが、そのまわりにいる人々は、その孤独を理解できないものとして恐れ、排除しようとしている。そうした周りの恐れがあちらこちらから迫り、未名子の生活を追いやっていこうという時、未名子は全ての孤独をつなぎ合わせ、骨とSDカードという記憶媒体にしまい込んでしまう。

スケールの大きな話のようでもあり、後から読み返すつもりもなかった子供の頃の文集をふとした拍子に開いてしまったような矮小さもある。良い意味で力の抜けた小説。文学賞狙いであざとく文学性を高めようといった事も無く、読みやすくて面白い。あまり深読みせず素直に読み愉しめば良いのだろうなと。

芥川賞の受賞作品は文藝春秋に全文掲載されます。選考委員のコメントを読むと気分が悪くなるので、読まないようにしています。なんであんなに偉そうなの。

文藝春秋9月号の芥川賞以外の見どころは渡辺二冠のインタビュー記事。藤井棋聖の凄みを感じさせる内容。

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