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【書評】 計算を武器に男性社会へ切り込んだ 『ロケットガールの誕生: コンピューターになった女性たち』

ほぼ毎日読書をし、ほぼ毎日「読書ログ」を書いています。395冊目。

昨日紹介したメアリ・ロビネット・コワルの『宇宙へ』を読んで真っ先に思い出したのが映画『ドリーム』と本書『ロケットガールの誕生』だ。

『ドリーム』の原作は本なのだけど、それはまだ未読。

今日紹介する本書は、半分くらいまで読んで積読状態だったので、良い機会なので最後まで読んでみました。そして、これがとても面白かった。


ジェット推進研究所(JPL)というNASAの研究所があるのだけど、まだ半導体も無い時代、そのJPLでロケット開発や宇宙開発の為に必要な膨大な計算を担当していた女性のグループがあった。

彼女たちは「コンピューター」と呼ばれ、鉛筆とノート、それにアナログの計算尺を武器に「計算」で能力を発揮し、重要な仕事は男性だけのものではないと証明してきた。表紙の誇らしげな女性たちは1950年代に実際に活躍していたコンピューター達だ。

彼女たちはミサイルに使うジェットや人工衛星の打ち上げなど、宇宙開発に必要なロケットの開発に関わり、計算の仕事を一手に担っていた。

やがて、実用化されてきたデジタル計算機、つまり現代でいう「コンピューター」が現れてくると、彼女たちの多くは、初代の職業コンピューター・プログラマーとして活躍する事になる。

彼女達は、女性が軽んじられていた時代にもかかわらず、そういった逆境をはねのけ、抗い、自ら道を切り開いた。

その活躍は戦後の宇宙開発を支え、後に、男性の牙城だった研究者やエンジニアの分野にも女性が進出するきっかけとなっていった。

本書は、実際にコンピューターとして活躍していた彼女たちのインタビューを元に構成されていて、当時の女性たちがおかれていた状況やロケット開発の現場の裏話などが豊富にかかれていて、とても興味深く読めた。

第2次世界大戦中にロケット開発を牽引し、後にNASAの一部となったジェット推進研究所(JPL)が大学の同好会からスタートしていたというのが意外だった。雰囲気も随分と牧歌的。そんなのんびりした空気を壊したのは、日本の真珠湾に対する奇襲だ。

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