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静寂の向こうから

「ラドゥ・ルプーは語らない」 坂垣千佳子編

静けさの向こうからやってくる
ルプーのピアニッシモがたまらない。

もうこの世にはいないけれど
この本を読むとルプーに会える、ルプーの声が聴こえる
・・何度でも会いたい・・と思わせてくれる。
(読み終わるころには いつも号泣・・)

・・・・・

「ラドゥ・ルプーの音楽の魔法によって
聴き手の魂は天空へと放たれる」・・本文から

音楽家たちが語るラドゥ・ルプーとの珠玉のエピソードから
多くの音楽家から愛され大切に思われていたこと、
演奏だけはなく、人そのものが、
温かく魅力的であったことが伺える。
本全体に美しいハーモニーが流れていて
その美しさに涙が込み上げてくる。
まるでルプーの音が聴こえてくるようだ。
ルプーを語る言葉たちを通してルプーは語っている。

・・ルプーが悩めるピアニストに贈った言葉・・

「自分の存在を忘れ 音楽に没頭できるといいね。
音楽と楽器と自分の三者が融合する状態。
誰が誰のために演奏しているかから離れて・・
もしかしたら、音楽がピアノを弾いて、
ピアノがピアニストのために音楽を奏でているのかもしれない」

「どんな欲からも離れ、演奏しようと意識しない。
・・・エゴを忘れるのです。
ピアノがあなたのために弾いてくれるのです」

・・・帰りは、ルプーはバス停まで送ってくれた・・・

・・・・・

ルプーの見つめていたもの、聴こえていた世界・・
たった一度のレッスンから、一番大切ものを受け取る。
この本を読んだ人すべてへのレッスンでもあるかのようだ。

数々のエピソードは、
ピアノを弾くとは?の問いかけに、真摯に答えてくれる。

私の大切な一冊。
この本の存在に心から感謝している。

・・・

読み終えて ブラームス間奏曲Op.118−2を弾く。
この曲が、より一層 大切な曲になった。

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