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<日本灯台紀行 旅日誌>2022年度版

<日本灯台紀行 旅日誌>

第14次灯台旅 能登半島編

2022年10月-12.13.14.15日

#3 二日目(1) 2022-10-13(木)晴れ時々曇り

比美乃公園展望台 移動

能登旅二日目は、能登半島の首根っこにある、<道の駅氷見>で、朝の五時に起きた。昨晩は、黒い軽バンのアイドリング音に、一晩中悩まされたものの、三時半ころからは、多少眠れたので、それほどの眠気はなかった。

外は、まだうす暗かった。車内で、着替え、シェーバー、歯磨きもしたかもしれない。そのあと、ビニールの手提げバックに、手ぬぐいと、排尿でほぼ満杯になったペットボトルと、空のおしっこ缶とを入れて、トイレへ行った。

ペットボトルの尿は、トイレの大便器に流し、空になったペットボトルとおしっこ缶は、自販機の横の、専用のごみ箱に捨てた。これでいい。あと、トイレの洗面台で、手のひらに水をためて、一、二回、顔を洗った。気持ちが新たになった。

車に戻った。窓ガラスの内側にかなりの量の水滴がついている。外が見えないほどだ。寝ている間に、室内が自分の体温で温まったわけだ。手拭いできれいにふき取る。さてと、行くか。道を隔てた、比美乃公園の駐車場へ行く。ほんの一、二分の距離だ。

外は、まだ薄暗かった。車から降りて、海の方を眺めると、白と赤の防波堤灯台が、それぞれ、緑と赤で点滅している。カメラを二台、それに三脚を手に持って、展望台へ行く。見上げた階段は、四階建てくらいの高さだろうか。きつい!

展望台の、海側の柵の前に陣取り、三脚を立てる。朝日を探すが、雲が多い。時間的には、もう出てきてもよさそうなものだが、ダメだ。じっと見る。正面の立山連峰の上から出てくるのだから、日の出時間からは少し遅れるのだろう。少し待つ。

うしろに人の気配を感じる。振り向くと、年配の品のいい夫婦連れだ。少し表情を緩めて、会釈を交わす。向き直って、柵の前で、さらに、十分ほど待つ。だが、情景に変化なし。諦めた。振り返ると、夫婦連れがまだいる。自分から声をかける。朝日ですか、どうも無理っぽいみたいですね。そうですか、と夫婦連れは残念そうに帰って行った。

自分は、もう少し粘った。と、三、四十代の、柴犬を連れた夫婦が、うしろに来て、なにやら、喋っている。立山連峰の上に出る朝日を待っているようだ。ちらっと振り返ったが、シカとしているので、こちらも無言。柵に腕をつき、夜明けの海景を断続的に撮り続ける。柴犬夫婦はまだいる。かなり時間がたっているというのに、しつこい。ややうんざりして、無言で立ち去る。

比美乃公園は、氷見港に面した、ちょうどサッカー場くらいの大きさの芝生広場だ。北側に駐車場があり、二、三十台車が止められる。トイレと東屋もある。南側には、巨大な展望台があり、富山湾の向こうに、天気が良ければ、立山連峰が見るはずだ。この朝は曇りで、この絶景が拝めなかった。少し残念だった。もう、二度と来ることもないのだ。

芝生広場を縦断して、車に向かった。振り向くと、展望台の上に、例の柴犬夫婦の女の方がいる。しつこく、スマホで風景を撮っている。男の方は、柴犬と一緒に下に降りている。なんとも、ふてぶてしい人間たちで、やや気分が悪い。

車の中で、たぶん、おにぎりと菓子パンを食べたのだと思う。はっきりとは思い出せないが、そのあと、駐車場のトイレに行った。だが、温水便座でなかったので、排便は道の駅だなと思って、すぐに出てきた。

道の駅に戻った。辺りは、すっかり明るくなっていて、朝の清々しい雰囲気が漂っていた。ナビに、今日のルートを打ちこもうとした。最終目的地は、能登半島の先端に立っている禄剛埼灯台で、経由地が能登町の赤崎灯台と珠洲市の長手埼灯台だ。とはいえ、なぜか、ナビで名称検索できない。仕方ないので、パソコンで、だいたいの位置を把握して、再度、ナビ画面でその場所で探し、ポイント指示した。面倒なうえに、時間がかかった。

そうこうしているうちに、便意をもようしてきた。トイレに行く。多少はでた。トイレから出てくると、目の前の駐車場に、なんと例の柴犬夫婦がいた。キャンピングカーで来ているようだ。大分ナンバーだ。愛犬と一緒に、日本中の観光地を巡っているのかもしれない。羨ましいとは思わなかった。それに、太った、ふてぶてしい感じの女性は好みではないのだ。

出発。比美乃公園の横を通りぬけ、比美乃大橋を渡ったところを、左側に回り込んだ。遊覧船乗り場があり、近くに岸壁がある。展望台から、車が止まっているのを確認していたので、氷見港の白と赤の防波堤灯台を、平場から撮ってみようと思ったのだ。だが、まったくの期待外れ。アングルがよくないし、モロ、逆光になり、写真にならない。すぐに回転して、いま来た道に戻った。予定通り、能登町の赤崎灯台へ向かう。

途中、氷見の市街地を通り抜けた。早朝の人気のない、長いアーケード商店街だ。一日が始まる。自分の全く知らないところで、多くの人間が、ちゃんと生活している。いやな感じはしなかった。それどころか、自分も、人並みに、朝の清々しさを感じた。

市街地を抜けると、道が広くなる。ナビに従い少し走って左折、能越道の文字を確認して高速道路に入った。有料なのか、タダなのか、判然としない。ま、どっちでもいいや。片側一車線だが、空いているので、走りやすい。小一時間走って、パーキングでトイレ休憩。売店も何もない殺風景なパーキングで、時折、車が入ってくる。大型車が何台か、休憩していた。ほぼ石川ナンバーだ。

用を足し、自販機で缶コーヒーを一本買って、車に戻った。車内から、ゴミ箱があるか、自販機のそばを眼で探した。車内で出た昨日来のごみを、道の駅で捨てるのを忘れたのだ。と、右隣、やや前方に、ガタガタの軽が止まった。中から、ほぼスキンヘッドの、黒っぽい、やんちゃな感じの爺が出てきた。手に、大きなビニール袋を持っている。ごみ箱に捨てるのかなと思い、見ていると、陰になってよく見えないが、横の方に、ゴミ箱があるようだ。

爺はそこにゴミ袋をすてたのだろう。そのあと、手ぶらでトイレに入った。
少したって、爺がトイレから出てきた。俺の車のナンバーをチラッと見て、車に乗り込み、行ってしまった。見ると、爺の捨てた白いビニール袋が、風に吹かれて、トイレの前を左方向へと転がって行く。

そのあと、また外に出て、爺がビニール袋を捨てた所に、ゴミ箱があるのか、たしかめた。だが、それは、缶専用のごみ箱だった。爺は、シカとして、ビニール袋をそこに捨てていったのだ。自分は、コーヒーの空き缶だけを捨てて、ビニール袋は車内に持ち帰ったような気がする。

いや、爺と同じように、シカとして、マナー違反とわかっていながら、缶専用ごみ箱の上に、ビニール袋を放置したのかもしれない。俺だって、切羽詰まっていれば、<マナー違反>どころか<犯罪>すら、やりかねないのだ。だが、このときは、切羽詰まっていなかったような気がする。したがって、<良心>が勝って、ビニール袋は車内に持ち帰った。間違いない。

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