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ありし日のうた


2023.1.31

朝いちで市の健診で清川病院に。朝のすがすがしい江ノ電で、先日今小路ブックストアで買った「あのひと」をテーマにしたそうそうたる顔ぶれの作家たちによる随想集を読む。あのひと、というくらいだからもう会えない人、この世からいなくなってしまった人の話がほとんどで、死に目の話なども多く生きることについてつい考えさせられてしまうのだが、佐野洋子さんの文章はそのようなテーマのもとでも痛快で軽快で、ほんとうにいつなにを読んでもそうで、あんなふうにものを考えられたらな、とふと思う。

初めて行く清川病院はかなり年季が入っていた。診てもらうと、二センチの子宮筋腫があります、経過観察で三ヶ月後にまたみてみましょう、とのこと。去年はなかったものが、今あるのか。一年で二センチにも?いったいどこからこの体までやってきたんだろう。ないにこしたことないけど、あるといっても今すぐどうこうっていうわけでもないらしい。

だから考えてもしかたのないことだけど、乳腺症しかり緑内障しかり、経過観察がぽつぽつ増えていく。このからだのなかで時間が確実に進行している。そのことをこうして身をもって知るとき、いい表しようのない気持ちに襲われへなへな力が抜けていく。生きれば生きるほどからだのどこかに当然のように不具合が生じてきて、なんにもなかったまっさらの頃がうそだったんじゃないかと思う。いや、ほんとうはなんにもなかった頃なんてなくて、この世に生を受けたその瞬間からすべてがすこしづつ壊れて始めていて、ただあまりに若い頃は元気があるので気がつきにくいだけなのかもしれない。

こういう不具合を多かれ少なかれ、三十代ももうすぐで半ばくらいになると皆だれしも抱えはじめるのだろうか。まあ、わたしの場合は二十代(十代の終わりからということもできる)からだったからか、どこかでは大げさにも思えるいっぽうそれでもずいぶん長いことこうしている気になってしまう。一度や二度の話じゃないから、またかと思う。またかと思うから、落ち込んでしまう。

なるほどと思うのは、乳腺症にしろ子宮筋腫にしろ、妊娠や出産を経験していない人のほうがなりやすいという。そういう人は、そうである人が生理のこない時間を一定期間経験しているのに対してずっと生理がある状態、つまりつねに女性ホルモンにさらされているため、女性ホルモンのなんらかの異常によるらしいそういった病気や症状におちいりやすいのだとネットに書いてあった。昔のひとは多産だったから、こういう病気は少なかったらしいとも。

これはすこし考えもので、わたしの場合は自分の子どもを産みたいのかどうかがいまいちわからないまま三十代半ばになっている。むずかしく考えずにすでに子どもを産んでいたら、こういう時間の病気ともいえるものを、まあ病気は進行性だから病気そのものが時間といえるけれど、抱える確率も減っていたのかもしれない。まったくいらない、とはっきりいえるのであれば、今の段階では思うところもぐんと減るような気がするが、そうではないような気がするので、色々と考えてしまう。ただ、自分が子どもを産むということが、すこしも想像できない。昔から想像できたことがない。

それにしても健診結果というのは、まるでなにもなかったときと、なにか不具合のあったときとでは、病院を出たあとの気分も足どりもぜんぜん違う。なにもなければほっと肩を撫でおろして、ありがとうございます、これからもまっすぐ生きていきます、などと純粋に思って、生きる許可をもらったような気分になる。いっぽうでなにかしら不具合が見つかると、思うようにいかないからだを案じて重たい気持ちになる。

朝をたべなかったのでベトナムフォーのお店に入り、いつものベジタブルフォーを食べ帰路につくが、中央図書館の前を通りかかって、ふとまだ鎌倉市の図書カードを作っていなかったなと思い作ってもらう。鎌倉にゆかりのある本コーナーが充実していて、ぱっと見た感じ面白そうだった。目に入った「かまくらの女性史」上下二巻を借りることにする。

そういえば今日行った清川病院が鎌倉養生院だったころ、中原中也がそこで亡くなっていることを思い出して、その一ヶ月前に完成させたという「在りし日の歌」を座って読む。昔にも読んだ記憶があるがいつごろか思い出せない。「頑是ない歌」がすきだった。わたしも生まれてからずっとわたしの「在りし日」を生きている。わたしは今どんな歌をうたっているんだろう?ひとつ思うとしたら、じぶんだけのために歌うというのではかなしすぎるということ。今日は落ち込んでしまったから、明日からまた元気を出したい。

元気でいるために大切なこと

23時には布団に入ること。
朝の時間を大切にすること。
食事は腹八分目にすること。
家にいる日は朝と夕方に30分歩くこと。
すこしづつ筋トレをすること。
小さくても目標をもった生活をすること。
メリハリのある生活を心がけること。
人と話すこと。
外に目をむけること。
ユーモアをわすれないこと。





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