続・時代劇レヴュー⑥:竜馬がゆく(1982年、1997年、2003年)

タイトル:竜馬がゆく(①~③共通)

放送時期:①1982年1月2日 ②1997年1月1日 ③2003年1月2日

放送局など:①テレビ東京 ②TBS ③テレビ東京

主演(役名):①萬屋錦之介 ②上川隆也 

       ③七代目市川染五郎(現・十代目松本幸四郎)

原作:司馬遼太郎(①~③共通)

脚本:①下飯阪菊馬、沢島正継、岡本育子、武末勝 ②、③長坂秀佳


『竜馬がゆく』は、司馬遼太郎の代表作の一つであるだけでなく、その後の坂本龍馬像に大きな影響を与え、とりわけ現在一般に流布している龍馬のイメージにはこの小説の影響がかなり強く、また坂本龍馬と言う人物の知名度を飛躍的に上げた作品でもある(司馬は「竜馬」表記を用いているため、作中における龍馬を指す場合は「竜馬」を、歴史上の人物としての坂本龍馬を指す場合は「龍馬」と表記する)。

それだけに映像化作品の数も多いが、ここではソフト化されており現在でも視聴が容易である三作品について紹介したい。

番号を振った順番に書いていくが、まず1982年にテレビ東京で放送された①は、同局が毎年1月2日に放送していた「12時間超ワイドドラマ」(後の「新春ワイド時代劇」)の第四弾で、同局の「東京12チャンネル」から「テレビ東京」への社名変更記念企画も兼ねて制作された作品である。

竜馬の脱藩から暗殺までを描いたものであるが、脱藩から始まるために江戸での剣術修行時代などの序盤のエピソードがばっさりカットされており、どちらかと言えば後半生が重点的に描かれている。

本作は元々は別の題材になるはずだった所を、諸事情でその企画が頓挫し、急遽「竜馬」に変更になったと言うのを以前に何かで読んだことがあったが、錦之介自身が司馬遼の『竜馬がゆく』に惚れ込んでいて、竜馬を演じることをライフワークとして本作以前にも何度も竜馬を演じており、本作はそのうちの一つである1970年の映画「幕末」(原作は司馬遼太郎)の伊藤大輔のシナリオをベースにしている(伊藤はこの時すでに故人)。

そのため、ある程度は原作に忠実であるが、所々で伊藤大輔のシナリオの影響が強く見られる箇所がある(暗殺直前に竜馬が中岡慎太郎と天皇の存在について議論する所など)。

錦之介の竜馬は確かに迫力と存在感はあるが、年齢的にはちょっと無理があり、かつ竜馬が寺田屋で大立ち回りを披露すると言うちょっとびっくりなシーンもある。

また岸田今日子の乙女が良い味を出していて、本作の中では一際異彩を放っていた。


②は、TBSが毎年元日に放映していた「新春大型時代劇」の第十弾で、シリーズの最後を飾った作品でもある。

こちらは龍馬の江戸留学から暗殺まで、ほぼその一生を描いているが、どちらかと言えば前半に重点が置かれており、後半はかなり駆け足である。

末尾のテロップで時代劇らしからぬ変な言い訳をしているものの、原作と異なる箇所や史実と異なる描写もあり、特に寺田屋での竜馬襲撃と薩長同盟成立の順番を入れ替えているのは(史実では同盟成立→寺田屋であるが、本作では逆になっている)、意図がよくわからない(これに関しては後述)。

NHKのドラマ「大地の子」で知名度を高めた直後の上川隆也が、爽やかな竜馬を熱演しているが、個人的にはキャストでは西田敏行が演じる、飄々とした勝海舟が印象的であった。


③は、①と同じテレビ東京の「12時間超ワイドラマ」(当時は「新春ワイド時代劇」に模様替えした後)の第二十六弾で、テレビ東京の開局四十周年企画も兼ねている作品である。

②と同じ長坂秀佳が全編の脚本を担当したため、台詞やストーリー展開は②と重なる部分もあるが、③の方が放送時間がずっと長いだけあって、②には登場しない人物も多数登場するなど、詳細な内容になっている。

竜馬役が七代目市川染五郎であることから、実父の九代目松本幸四郎(現・二代目松本白鸚)が松平春嶽役、実姉の松本紀保が武市瑞山の妻・富子役、実妹の松たか子が長崎の豪商・大浦慶役と、一家総出で出演している(なお、九代目松本幸四郎と松たか子は、②でも千葉貞吉・さな子役と言う父娘の役で出演している)。

②でも見られた寺田屋と薩長同盟成立の順番の入れ替えは、③でも見られるが、長坂には何かこの順番を入れ替えなければならない都合でもあるのだろうか。

また原作に反して、③では竜馬暗殺の黒幕が(はっきりは描かれないものの)薩摩藩になっている。


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