フランス旅)トゥールーズ)アルビジョワ十字軍と反骨精神の街
ラグビーワールドカップ、盛り上がっていますね。日本の初戦、チリ戦を観戦するためにスタジアムのある南フランスのトゥールーズを訪れました。
タイトルの写真は街のランドマーク、キャピトル広場の市庁舎です。正面には日本とチリ、そしてフランスの国旗が掲げられています。
世界史の文脈では、アルビジョワ十字軍に抵抗し、今でも独自の文化を持つ「オクシタニア」地域として独立と反骨の気風のある素敵な街でした。
「バラ色の街」、レンガ造りのトゥールーズ
トゥールーズは「バラ色の街」と呼ばれています。南フランスでは石造りの建物が一般的です。トゥールーズ近郊では石が採れないため、代わりにレンガ造りの建物が多いです。
そのレンガも薄ピンクの「バラ色」です。ロンドンの濃い赤茶色とは違い、素敵な雰囲気です。
カタリ派の拠点、アルビジョワ十字軍に抵抗
トゥールーズは、12世紀に発生したキリスト教の「カタリ派」の拠点として知られています。
善悪二元論的なマニ教の影響を受け、また教会の堕落、富や権力への批判をして、キリスト教の原点回帰を目指しました。
ただカトリックからは「異端」と認定されます。こうして1209年に始まったのが「アルビジョワ十字軍」です。
イスラム教という「異教」から聖地を奪還する十字軍と同様に、カタリ派という「異端」を滅ぼすのが目的です。
トゥールーズ伯は抵抗しましたが結果的に敗北。アルビジョワ十字軍を率いたフランス王のルイ8世は南フランスを自らの直轄地とし、勢力拡大に成功しました。
ドミニコ会初の修道院、カタリ派を異端審問
トゥールーズの観光地のひとつが、ジャコバン修道院です。カトリックのドミニコ会が初めて建設した修道院です。
内部はヤシの木のような柱と屋根で、高い天井の下に広々とした空間が広がっているのが特徴です。
ドミニコ会は13世紀初めにスペインで「托鉢修道会」として設立されました。信者の寄付による清貧を旨し、篤い信仰で知られています。トマス=アクィナスなどの高名な神学者を輩出しました。
その熱心さの裏には、カタリ派の取り締まりの先頭に立って活動したという別の顔があります。
彼らは異端審問を積極的に実施し、カタリ派の信者を火あぶりにし、さらに墓を掘り返して刑罰を与えたとも言われています。
「オクシタニア」クロス、独自の文化圏
こうしてフランス王という中央権力に屈したトゥールーズですが、反権力の気風はいまでも残っています。
この南フランスを中心に、スペイン、イタリア、モナコに広がる地域は「オクシタニア」と言われています。
独自の言語であるオック語を話し、緩やかながらオクシタニアの自治を訴える政党もあるほど。今でも独自のアイデンティティーを主張しています。
そのシンボルが「オクシタニアクロス(十字架)」です。かつてトゥールーズ伯の紋章として使われていました。市庁舎や街のあちこちにシンボルマークとして描かれています。
フランスの地域圏のひとつ、オクシタニー地域圏のシンボルも、オクシタニアクロスが一部で使われています。
ラグビーワールドカップのスタジアム会場のブースの赤いテントにも、マークが描かれていました。
フランスといえばパリを中心とした北フランスのイメージが強いのは否めません。
ですが、こうした南フランスの反骨精神と独自の文化を持つトゥールーズという街に非常に好感を持ち、フランスの多様性を感じることができました。
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