同時に学べる!世界史と地理 Vol.7 前600年~前400年の世界
生活環境の違いを越えた協力と対立④
歴史:さてさて、この時代にユーラシア大陸では遊牧民エリア・定住民エリアの両方に巨大な国が現れるよ。
国のスケールが大きくなるのに並行して、「生き方」や「考え方」に関する複雑な思想も現れる。
南北アメリカ大陸では、ユーラシア大陸に比べるとスローペースだけれど、都市が栄えている地域がいくつかある。
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●前600年~前400年のアメリカ
歴史:現在のメキシコ南部で栄えていたオルメカ文化は衰え、その“お隣”に位置するマヤという地域に中心地が移っている。
マヤってどんなところなんですか?
地理:もっとも古くから繁栄したところは、ユカタン半島(地図)の南部の部分だね。
熱帯雨林気候といって、一年中気温が高く雨の量も多い。
大きな川があるとろ以外にも都市がつくられ、カカオの取引で利益を得ていたようだ。
ユカタン半島の北はどうなっているんですか?
地理:こちらは乾燥した気候で、乾季と雨季に分かれる(注:サバナ気候)。
南のほうと違って大きな川もなく、水場の確保は大変だ。
というわけで、マヤの文明はまずはユカタン半島の南部のほうから栄えるよ。
ちなみにもっと南には高い山が連なるエリア(注:マヤ高地)もあって、火山灰が降り積もっていることから農業に向くので、都市が発達する。ナイフとして使うことのできる黒曜石(こくようせき)の産地でもあった。
地域によって気候が違うんですね。
歴史:情報があまりないから、中央アメリカの文明は全部が全部「ジャングルの文明」と誤解されがちだ。
映画「インディー・ジョーンズ」の影響もあるかもしれない(笑)
地理:一方、南アメリカでは「地上絵」で有名なナスカ文化のルーツとなる文化が栄え始めている。
こちらは海岸沿いの乾燥エリアを流れる川沿いを中心に発達した文明だ。
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●前600年~前400年のオセアニア
歴史:オセアニアでは、数千年前から続いていた島から島への移動はひと段落している。
このへんで一段落。
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●前600年~前400年の中央ユーラシア
歴史:この時期、草原地帯の遊牧民は絶好調だ。
西の方(北を上にして左側。現在のウクライナあたり)ではスキタイというグループが南の定住民エリアに進出している。この時期に巨大な国を建設した国王は、スキタイとの戦いで負けているよ。
東の方でも遊牧民は中国の定住民エリアに進出している。中国の王様たちは遊牧民の進出を食い止めるため、石を積んで「防護壁」をつくっている。
これがのちのちの「万里の長城」(ばんりのちょうじょう)のルーツだ。
Photo by Yifei Jing on Unsplash
万里の長城の北に「三日月」の形をした湖がありますが、これは何ですか?
地理:実はこの部分でユーラシア大陸が真っ二つに割れ続けていて、そこに水がたまってできた湖なんだ(注:断層湖)。
この手の湖は水深がとっても深くなる。
冬は凍る。Photo by Arisa Chattasa on Unsplash
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●前600年~前400年のアジア
この頃、黄河流域の周(注:周の領域)の王様は家来からナメられてしまっているんですよね。
歴史:形の上ではリスペクトされているけどね。家来どうしの戦いがエスカレートしてしまって、コントロール不能の状況だ。
中国では周の王様たちは、のちの時代の王様たちによってアイドルのように理想的な支配者だとされるんだ。中国の王国の「見本」のような国なんだよ。
だから歴史書を読んでも、盛った内容で書かれていることが多い。「本当はどうだったのか」を証拠をもとに判断するのが、現代の歴史学者の仕事なんだ。
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さて、周の家来たちの国どうしの戦争がエスカレートすると、各国は自分の国を強くするために有能な人材を雇うようになる。
昔は周の王様に与えられた位(くらい)によって、えらい国がどの国かが決められていた。
でも周の王様の権威が衰えた以上、これからの時代は実力がすべてだ。「新しい時代をどう生きるべきか?」「どうすれば国は生き残れるのか?」
儒学というグループを立ち上げた人は、こう言った。
「周の時代を思い出そうではないか。あの頃は、周の王様が儀式をおこない、それによってちゃんとした秩序があった。礼儀をちゃんとすれば、人々の心も家も国もまとまるはずじゃ」
ほら、やっぱり周の時代(=昔)は良かった、っていう考えだ。
結局、周の王様は秩序を復活させることはできず、家来たちのコントロール不能なバトルロワイヤルがはじまっていく。これが戦国時代だ。
もう周の王様などお構いなし。鉄器(中国は独自に鉄を発明した!)が農業に導入され、農業生産力をアップさせた国々が、軍事力もパワーアップさせて互いに争う時代のはじまりだ。この時代を戦国時代というよ。周の王様はまだいるのに、もはや学級崩壊状態だね。
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◇前600年~前400年の東南アジア
歴史:東南アジアでは稲作の規模が大きくなった場所で、リーダーが現れているよ。
東南アジアにはとっても長い川がいくつか流れていますね。
地理:北の険しい山々から、夏にたっぷり降る雨を集めて大きな川になるんだよ。
中国のほうから流れてくるメコン川が、一番長い川だ。
どうして東南アジアでは稲作が盛んなんですか?
地理:こういう大きな川が、上流の険しい山の土砂を削って河口に運ぶことで、平らで広い土地を作ってくれるからだよ(図)。
上流では勢いよく流れてくる川も、下流にいくにつれてクネクネと流れるようになる(注:蛇行(だこう))。
土砂を運ぶ力(注:運搬作用)も弱くなっていき、土砂を積もらせながら(注:堆積作用)複数のコースに分かれて海へとたどり着く。
すると、河口の部分には「三角形」に近い低い陸地ができる。この部分を三角州(さんかくす)というんだ。
そこがお米の栽培に適しているわけですね!
地理:そうそう。
ただ、川の通り道となるところは、雨季と乾季のはっきりしている「サバナ気候」だから、水が足りなくなってしまう時期もある。
メコン川の中流にはトンレサップ湖という堰止め湖(せきとめこ)もあるよ(注:下のGoogleストリートビュー)。
いつが乾季なんですか?
地理:だいたい5~10月が雨季で、11月~4月のシーズンが乾季だよ。
インドシナ半島の西側の部分は南からの季節風が山にぶつかって、雨がめちゃくちゃ降りまくる(注:熱帯モンスーン気候)。
インドシナ半島ってなんですか?
地理:インドと中国(フランス語でシーヌ(→シナ))の間に突き出ているとこだよ。
マレー半島を「鼻」に見立てると、「左向きのゾウの頭」みたいだ。
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◇前600年~前400年の南アジア
歴史:南アジアもこの時代は「戦国時代」に突入する。
戦争が激化する中、新しい価値観も生まれるよ。
従来はバラモンという神官階級がいばっていたんだけれど、それを批判する考えだ。そのひとつが「仏教」だよ。
ほかにも「ジャイナ教」という、「動物の命を大切にする教え」も流行する(注:お寺の例)。
仏教にしろジャイナ教にしろ、基本的には「動物のお肉を食べない」考え方をとった。「精進料理」(しょうじんりょうり)って聞いたことあるよね。
ベジタリアンですね? でもどうしてインドではそういう考えが広まったんですか?
地理:どうしてだろうね。
こういう「タブー」にはなんらかの合理的な理由があることも多い。
殺した動物の肉や血が「汚い」と考えられたこと。
それに、昔はインドの気候を考えるとお肉を衛生的に扱うことができなかったことなどが関係しているんじゃないかな。
インドはやはり暑いんですね。
地理:場所によるけど、4~10月に海から陸の方向に季節風が吹き付けて雨季になる。
とくに西側の海岸付近は山脈(注:西ガーツ山脈)に風がぶつかってめっちゃ雨が降る(注:熱帯モンスーン気候)けど、山を乗り越えた東側のエリアでは夏はあまり雨が降らず乾季の時期が長くなる(注:サバナ気候)。
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◇前600年~前400年の西アジア
歴史:4つの王国が並び立つ時代は、イラン高原のペルシア人の世界征服によって幕を閉じた(注:アケメネス朝)。
イラン高原ってどんな気候なんですか?
地理:雨がほとんど降らない乾燥気候だ。
砂漠のところと、まばらに草原になっているところ(注:ステップ)があって、草と水場を頼りに遊牧生活が営まれている。
どうして乾燥しちゃうんですか?
地理:地球全体の風の移動の関係から、上昇気流が発生しにくいエリア(注:亜熱帯高圧帯)にあたることや、海からの距離が遠すぎること(注:隔海度が大きい)、それに山脈の風下側にあたることが理由だ。
歴史:彼らペルシア人は馬を乗りこなして西アジア史上最大の領土を支配することになる。
だけど、草原の遊牧民(スキタイ人)と、地中海のビジネス民族 ギリシア人には勝つことはできなかった。
広い領土をどうやって支配したんでしょうか?
歴史:領土を細かい地域に分けて、そこに役人を派遣したんだ。取り立てた税を横取りする悪徳役人を防止するために、監視役まで派遣する用意周到さだった。
命令は文書によって伝え、急な命令を伝えるために馬用の高速道路まで整備された。共通語は西アジアで広く話されていたアラム語だ。
ゾロアスター教が正義の考えとされ、神をまつる神殿も建てられたよ。
地理:イラン高原は、エジプトやメソポタミアの方面と、インドや中央アジアの方面の「中間地点」に位置するよね。
だから、さまざまな物が行き交う場所として重要視されていたんだ。
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●前600年~前400年のアフリカ
歴史:西アフリカではバントゥー系の人々の大移動が続いているよ。
西に向かった人が多かったようだ。
⇒ 移動経路を示した図
どうして西に向かうんですか?
地理:南に行くと赤道付近の熱帯雨林が広がっているでしょ。
火を放って木を燃やして灰をつくり、そこで作物を育てる農業(注:焼畑農業)もできるにはできるけど、狩りや採集、それに釣りをする人々も大勢暮らしている。
バンツー系の人たちの中は、熱帯雨林迂回(うかい)して西に向かった人も多かった。
年中気温が高く、雨が降る時期と降らない時期がはっきりしているエリア(注:サバナ気候)では、草原地帯が続いているから、家畜を飼うことや植物を生やすことができる。
乾燥に強いモロコシとかアワを栽培することが多い。
でも、雨が降らない時期があったら栽培は大変じゃないですか?
地理:そんなときに困らないように、ひとつの畑に数種類の作物を植え付けておくんだよ。
たとえば、モロコシとササゲ(インゲンマメ)を一緒の畑に植えたりするんだ(注:混作)。
主食は、モロコシ、キャッサバ、ヤムイモなどだ。
それに家畜も一緒に連れておけば安心。
そうすれば「リスクを分散させる」ことができるでしょ。
家畜って、どんな動物を飼うんですか?
地理:サバンナ(乾季と雨季に分かれる熱帯の草原)では牛を飼うことが多いね。
もっと乾燥しているところ(現在のソマリアとかケニアの北部)だと、ラクダ。
若干雨が降るところでは羊とかヤギとかだ。
遊牧生活を送る人たちと農業する人たちの間には、ユーラシア大陸とおなじように「持ちつ持たれつ」の共存関係だけでなく、土地をめぐる競争関係も起きているよ。
北アフリカはどんな感じですか?
地理:地中海の周辺部は冬になると雨が見込めるから、小麦も栽培できる。
乾燥地域では泉や、外部から流れてくる大きな川(注:外来河川)、それに人工的な地下水路(注:北アフリカではフォガラと呼ぶ)も使われているよ。
これが「オアシス」だ。
乾燥しているところでは、どんなものを育てているんですか?
地理:ナツメヤシが重要だ。
実は栄養たっぷりだし、葉っぱはカゴや縄の材料になる。
木の幹は建物にも使えるよ。
エジプトはまだ栄えていますか?
歴史:この時代のエジプトは西アジアのペルシア人の支配下に入っているね。
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●前600年~前400年のヨーロッパ
歴史:ヨーロッパではケルト人が鉄器を手にして各地に遠征している。
地理:彼らが「神聖な木」と大切にする「オーク」の木は、当時の西ヨーロッパ一帯に広がっていた。
昔のヨーロッパは森に覆われていたんですね。
歴史:「ヘンゼルとグレーテル」なんて話は、「森に覆われていたころ」のヨーロッパを伝えるお話だ。
この当時、やはり「最先端」の地域は南の方の地中海沿岸。
今に比べて木に覆われていたところも多かったけど、開発が進むにつれて木がほとんどなくなる「はげ山」も増えていったようだ。
歴史が長いところほど、環境破壊もハイペースなわけですね。
地理:人口密集地帯はそうなりがちだね。
気候的には夏は乾燥するけど、冬でも暖かくて雨が多いから牧草や小麦がすくすくと育つエリアだ(注:地中海性気候)。
木材が足りなくなると、建物には石灰岩が利用されることが多くなっていった。
だから「白い建物」が多いんですね。
歴史:この時期にイタリアのローマ人は、ライバルのギリシア人やフェニキア人を押しのけながら領土を広げている。
一方、ギリシア人は西アジアのペルシア人がビジネスチャンスを求めて進出してくると、一丸となって戦ってこれを追い出すことに成功した(注:ペルシア戦争)。
勝利に貢献したアテネという国は、戦後に「自分のおかげで勝てたのだ」とギリシャのほかの国を支配下に置くようになり、ライバルだったスパルタという国の反感を買い、戦争に発展する。
時代が混乱すると新しい考え方が芽生えそうですね?
歴史:その通り。
ギリシアの人々は劇が大好きで、戦争の時期には悲劇がたくさん上演されたよ。
また、「一度きりの人生をより良く生きるにはどうすればいいか」ということをつき詰めて考える学問(哲学)も流行する。
このたびはお読みくださり、どうもありがとうございます😊