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10.3.3 革命の終了 世界史の教科書を最初から最後まで

人々の“平等”を重視する共和政を目指した結果「独裁」にたどり着いたロベスピエール

その独裁が終わると、今度は“自由”な競争社会を重視する共和政を目指すグループ(穏健(“マイルド”)な共和派)の発言力がアップした。


1795年には、有産市民に選挙権を限って議員を選び、5人の総裁によって政府をつくることに。
まあ、5人もいれば「独裁」にはならないし、選挙権を「有産市民」に限ればロベスピエールのときのように過激にもなるまい。
この政府を総裁政府というよ。

人々の“平等”を重んじた社会をつくろうとして総裁政府の転覆をはかろうとしたバブーフ(1760〜97年)の反乱未遂事件や、王党派によるリベンジへの動きが巻き起こる中、「もう土地や財産は保障してもらったんだから、もう社会を安定させようよ」と望む有産市民層や農民の気持ちが高まっていった。

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そんな中、人々の前に現れたのが、軍司令官ナポレオン=ボナパルト(1769〜1821年)だ。

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地中海に浮かぶコルシカ島生まれの彼は、エリートコースの士官学校に進学。砲術を専門に、幸運にも恵まれ急ピッチで名声を獲得。


1796年には、いまだ続いていた“革命をやめさせようとする”周辺諸国のとの戦いのため、イタリア方面にいるオーストリア軍に抜擢。いちやくこれを撃退。




オーストリアとフランスは講和条約によって“仲直り”し、ルイ16世の処刑以来つづいていた第一回対仏大同盟をようやく崩壊させることに成功した。


“フランスを救った男”として名声を高めたナポレオンは、さらに1798年に敵国イギリスの最重要地点であるエジプトにも遠征


イギリスが植民地経営していたインド・ルートの重要拠点だったエジプトを狙うことで、産業革命を驀進(ばくしん)中のイギリスの通商を妨害しようとしたのだ。



当時のヨーロッパ諸国では、ヨーロッパの文明のルーツが古代ギリシアやエジプトにあるんじゃないかという「古代ロマン」が高まっており、ナポレオンはこれも利用。
多数の古代オリエントの専門家をエジプトに連れていった。
その成果が、ナイル川下流域のロゼッタ(現・ラシード)で発見された、エジプトの神聖文字・神官文字・ギリシア文字で同一の内容が刻まれている石碑だ。このロゼッタ=ストーンは、フランスの天才的言語学者シャンポリオンによって解読されているよ。


とはいえ軍事的にはイギリスに敗退。


ナポレオンはこの敗北を覆い隠すように、すべての責任を総裁政府にしむけさせた。


ナポレオンのエジプト遠征を受け、1799年までにイギリスはロシア、オーストリアなどと第二回対仏大同盟を結成し、フランス国境をおびやかすようになり、すでに総裁政府は国民の信頼を失っていた状況。

そんな中ナポレオンはエジプトからパリにとんぼ返りし、1799年11月に総裁政府を力ずくで打倒。黒幕は『第三身分とは何か』で有名な、あのシェイエスだ。
シェイエス、ナポレオン含む3人の統領(とうりょう)からなる統領政府を樹立したこの事件は、革命暦のブリュメール18日に起きたので、ブリュメール18日のクーデタというよ。

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シェイエスはいつのまにか後ろに追いやられ、ナポレオンは第一統領として事実上の独裁権を握ることに。
巧みな宣伝戦略もあり、ナポレオンの人気はめちゃめちゃ高い。


そもそも、すでにフランス革命を通して、「フランス国民」としての“まとまり” はかなり強い。
1793年にロベスピエールによって導入された徴兵制も続けられ、さまざまな身分・職業・地域の人々が「おなじフランスの軍隊」として「フランス」のために戦うようになっていたのだ。

「フランス国民」ならば、だれでも「仲間」。
「フランス国民」が「フランスという国」を構成する。

現在では当たり前となった、この「国民国家」というフィクション上の「まとまり」が、フランスで生まれたわけだ。


ナポレオンは、こうしたフランス革命で育まれた価値観を守ることを宣言。
彼のスピーチの中にも、自分がフランス革命の中で生まれた「自由」と「平等」の理念を守ることがはっきりと現れている。



1799年11月のブリュメール18日のクーデタによって、事実上の独裁権をにぎったナポレオンは、「これ以上「革命」を続けちゃだめだ。ここを“落とし所”にしよう」と革命を“終わらせた人”とみることもできる。
そういう観点から見れば、フランス革命の終わりは1799年11月とすることができるね。

時期や時代の区切りというのは、絶対的なものじゃない。
「どのように過去を見るか」という意味付けの仕方や根拠によって、さまざまな区切り方ができるんだ(学問的手続きを踏んだ時期区分が、時々変わることがあるのはそのためだ)。

このたびはお読みくださり、どうもありがとうございます😊