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書評#8)両利きの経営-「二兎を追う」戦略が未来を切り拓く

こんにちは。一か月半以上、間が空いてしまいました。ご無沙汰しています。

本日ご紹介させていただく本はこちら。

変化の激しい時代に求められる経営や組織の在り方について、勉強したいと思います。

■ 両利きの経営とは

「深化」と「探索」を両立させている状態を、両利きと言っています。

なるべく自身・自社の既存の認知の範囲を超えて、遠くに認知を広げていこうという行為が 「探索」である。探索によって認知の範囲が広がり、やがて新しいアイディアにつながるのだ。しかし一方で、探索は成果の不確実性が高く、その割にコストがかかることも特徴だ。一方、探索などを通じて試したことの中から、成功しそうなものを見極めて、それを深掘りし、磨き込んでいく活動が「 深化」である。深化活動があるからこそ、企業は安定して質の高い製品・サービスを出したり、社会的な信用を得て収益化を果たすことができる。

お気づきかと思いますが、多くの成熟した大企業・中堅企業は、「深化」に特化していることがほとんどです。ただし、これは決して悪いことではなく、むしろ当然のことで、成功する・している領域を、より深堀し、利益を最大化するということで安定して企業活動を継続することができるのです。

しかしながら、「深化」偏重の組織では、その成功体験や組織構成に固執してしまい、イノベーションが生まれにくい環境になってしまうことも事実。イノベーションが生まれなければ、社会の変化に取り残されてしまいます。社会の変化を無視して、例えば、いつまでも一つの製品だけを作って売る、という事業だけではいけませんよね。日本の”ケータイ”がiPhoneに取って代わられたように、企業も時代の変化に合わせて、イノベーションを生み続ける必要があります。

本書の中では、実際の企業の事例を、成功したもの、失敗したもの含め、ふんだんに集められているので、非常にイメージがわきやすいのではないかと思います。

例)ネットフリックス、SAP、Amazon、富士フィルム etc

■ 両利きの経営を実践するためのポイント

表現を変えて、様々な言葉で書かれていますが、大きくは『① 経営陣のコミット』『② 既存事業のリソーセスの活用』『③ リーダーシップ(notマネジメント)』の3つと理解しました。それぞれについて、ご紹介します。

① 経営陣のコミット

当たり前のように感じるでしょうが、とっても大事です。想像してもらえば理解いただけると思いますが、既存事業(深化)サイドから見ると、新規事業(探索)サイドはどうしても、「結果も出していない」「金食い虫だ」などと煙たがられることがほとんどです。それでも、新規事業が継続して、活動を続けていくには、経営陣が明確に新規事業に対してコミットする(保護する)必要があります。探索をいつまでもボトムアップに任せていては、つぶされることが目に見えます。

また、求められる成果やスピード感も「深化」と「探索」では全く異なってくるので、既存の組織と切り分け、独自の裁量で、「探索」し続けるような形にすることも重要。

② 既存事業のリソーセスの活用

①の最後に組織は切り分ける、という話をしましたが、新規事業もすぐにスケールするとはいきませんし、価値のある「探索」にするには、新規事業側がどれだけ既存事業のリソーセスを最大限活用できるか、にかかっています。資金面はもちろんのこと、技術や顧客情報などのデータをうまく活用することによって、既存事業の強みを生かした新規事業を成立させることができるというわけです。

③ リーダーシップ(マネジメントの違い)

本書の特徴の一つとして、最終的な両利きへ経営の要件として、リーダーシップを取り上げていることが挙げられます。

上級の幹部だとしても、イノベーションストリームにおいては、既存事業と新規事業の矛盾を受入対処しなくてはならないという基本的な課題があり、それを受入、両利き組織の可能性を引き出せるように必要なものが強烈なリーダーシップだという。結局、という気もしますが。(笑)

【5つのリーダーシップの原則】
①心に訴えかける戦略的抱負を示して、幹部チームを巻き込む。
②どこに探索と深化との緊張関係を持たせるかを明確に選定する。
③幹部チーム間の対立に向き合い、葛藤から学び、事業間のバランスを図る。
④「一貫して矛盾する」リーダーシップ行動を実践する。
⑤探索事業や深化事業についての議論や意思決定の実践に時間を割く。

また、本質とは異なるかもしれませんが、非常に印象的でわかりやすい表現でしたので、抜粋します。

マネジメントは確実に列車を定時運行させるのに対し、リーダーシップは適切な目的地に列車を確実に向かわせるマネジメントは実践を、リーダーシップは戦略と変革を扱うのだ。長い時間をかけて組織を成功へと導くためにその両方が必要なことは、ほとんどの学者や実務家はすでに認識している。


なお、本書の中では、両利きになるための4つの要素が取り上げられています。ここで書いているものとは若干違いますので、詳しくは読んでみてください。

■ 所感

いま、日本の多くの大企業が直面している課題に対する一つの向かうべき指針なのかなあ、と思いました。最近いろいろな情報収集をしている中で、気になっていたのですが、どうしても「イノベーション」(=探索)に振り切ったものが多いなあという点です。そんな中、本書では、既存事業(=深化)と両利きで経営をしていくことが必要であるということが書かれており、それも、単なる事業フェーズの違いに過ぎないということが明確に示されていたので、自分の中のモヤモヤがなんとなくクリアになった気がしました。既存のものに対して固執してしまったり、しがらみになっていたりしてはいけませんが、時間軸や事業の変遷を踏まえて、適切に現状を把握することが大事だと改めて感じました。

以上です。最後まで読んでいただきありがとうございました。




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