人生のちょっとした煩い

ずいぶんと雪かきの合間に読んだ。雪が降る、雪かきをする。
部屋にもどり、坐蒲(ざふ)の上に半跏趺坐を組んで読む。だからというわけではないが、なにかしら禅の公案のような趣が本作にはあった。数年前に読んだ記憶があるがここまで記憶に残ってないのも珍しい…。公案のように滅却されてしまったのか…。

「変更することのできない直径」は、おっさん(エアコン取付などのビジネスを行う)が未成年の女性に手を出して法廷であれこれという話なんだけど、あらゆる登場人物が何かしらズレていて非常にコミカル。そのひとつ前の「人生への関心」も「コンテスト」も「いちばん大きな声」も、大切なテーマを扱っているように読み取れるけど何かが軽い。あくまで本のタイトル通り「ちょっとした」煩いを描いているのだろうか。
そしてまた雪かき。ときどきコーヒー(1月28日)

本作は珍しく(?)訳者による簡単な解説がついている。しかし訳者は自らの著作に解説なんてものはつけないわけで、その解説っぷりは読者に委ねるべきは委ねるという感じで心地よい。もちろん全然批評っぽくない。リスペクトが前提だからではあるけれど。

「そのとき私たちはみんな、一匹の猿になってしまった」は、奇妙な話…というよりも、ペイリーさんが遊んでいるというか、なにかしらぶっとんだ精神の男を描いているわけだが、そういうのはいつの時代にもおこりうる縮図というか、人間のあり方として何かいきいきとしていて、しかしそれをおもしろおかしくリアルに書けてしまうのがすごいと思う。「戦争減衰器」という殺虫剤が出てきます(笑)

訳すのはかなりホネであったらしい…。そうだろうなぁ。(2月1日)

引き続き、ペイリーさんを読んでいきます。

【出版社Web(もしくは裏表紙)より】
「ペイリーさんの小説は、とにかくひとつ残らず自分の手で訳してみたい」と村上氏が語る、アメリカ文学のカリスマにして伝説の女性作家の第一作品集。キッチン・テーブルでこつこつと書き継がれた、とてつもなくタフでシャープで、しかも温かく、滋味豊かな10篇。巻末にデビュー当時を語ったエッセイと訳者による詳細な解題付き。

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