リライトは書き換えるではなく書き直す

バイトが終わり、大物のリライトにあたった。
文字数は大体9000文字。
しかも、内容が内容だ。
政治や歴史が関係するものだから、
細心の注意を払ってのリライトを行った。

とても骨の折れる作業だった。
まず、内容の偏りは潰さなければならない。
それでいて、ライターさんの良さは活かさなければならない。

ライターさんの良さ。
熱心にリサーチしてくださる方だと見受けられた。
参考記事もたくさん載せてくれたため、
内容に充実感があった。

しかし、言葉遣いが遠回しになったり、
やや視点に偏りがあるような箇所が散見された。

ディレクターの僕にできることは、
文章を書き換えることではない。
文章を書き直すことだ。
直すとは、元の文章を良好な状態にするということだ。

一から十まで文章を書き換えていたら、
それはライターさんの文章ではなくなる。
自分の文章だ。

ライターさんの文章を読み取り、
何を書きたかったのかを汲み取る必要がある。
それがリライトという作業だと思っている。

例えば、
「ハチという名の大群に襲われた私は必死な思いで家まで走った」
という文章があるとする。

これをリライトするならこうだろうか。
「私はハチの大群に襲われた。家まで必死に走った」

これが何を書きたいか汲み取るということだ。

でもこれが、
「私は走る。背後には蜂の大群だ。さあ、家に駆け上がれ」
になってはならない。

ライターさんはそんな文章を
書こうと思ったわけではないだろう。
好きで遠回しな文章を書いているわけではないのだ。

「ハチという名の大群に襲われた私は必死な思いで家まで走った」
は、ハチに襲われる衝撃が、
最初の文章をハチと書かせたのだと読むことができる。

ハチを振り切る私の躍動感ではなく、
ハチに襲われる私の危機感を書かなければならない。

「私は走る。背後には蜂の大群だ。さあ、家に駆け上がれ」
の主人公は間違いなく私だろう。
蜂にも負けない力強さが文章から滲み出ている。

でもこれは、ライターさんの意図に反している。
自分が勝手に解釈を加え、書き換えたものだ。

極端に書いたから、そりゃそうだと思うかもしれない。
でも、実際の原稿を読んだ時、
自分の意思ではなくライターさんの意図に合わせられるか。
それが大事なのだ。

大切なのは、何を意図しているのか。
その文章が書かれている意味はなにかを理解することだ。

意図を持って書かれた文章は、
例え、読みづらくてもわかるものだ。
その文章をあるべき姿に直すのが、
リライトの面白さであり、奥深さなのだろう。

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