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自主研究は「好きを仕事にする準備」

好きなことを仕事にする

「好きなことを仕事にできるほど、世の中は甘くないぞ。」
大人たちからはそう言われてしまうかもしれませんね。まあまあ、我々大人たちの結果がどうだったかは、いったん脇に置いておきましょう。そりゃ、結果がさまざまなのは仕方ありません。それに、おじさん・おばさんになったって、まだ結果ではなく過程ですし。

とは言え、少なくとも未来ある生徒たちには、「好きなことを仕事にしよう」と希望を持たせてあげなければ。そうでないと、教育の存在意義が崩れてしまいます。

さて、好きなことを仕事にしている一番究極的な例として、生徒たちが納得するのは、ギョギョギョで有名なさかなクンです。彼は小さい時から魚が大好きすぎて、その結果、魚の魅力を日本中の人に伝えるという仕事を自分で作ってしまった人物だということは、生徒たちもよく知っています。

そんなさかなクンも実は苦労人です。魚に夢中なあまり大学を受験しそびれて、専門学校に通いながら水族館や寿司屋でバイトをしたものの、そこでも魚に夢中になりすぎて、仕事がおろそかになりクビになった……。これを聞くと、さかなクンがそこから這い上がったことを知り、生徒たちはさらに感心します。

さかなクンほど波乱万丈のレアな存在になれとは言いませんが、「好きなこと・得意なことを仕事にできるに越したことはない」ことには、生徒たちとも共通見解が得られることでしょう。

自主研究ゼミとは

本校で行なっている自主研究ゼミとは、自分の好きなことや興味のあることを題材に、調べてまとめて発表するまでの一連の活動のことです。「総合的な探究の時間」の授業枠で行う、いわゆる探究学習です。全学年の全生徒が実施しています。

好きなことや興味のあることと言っても、趣味や“推し”について調べるのは、あまりお勧めしていません。それ自体悪いことではないのですが、もっと大切なことは、自分の進路に結びついているかどうか。この方針を軸にしています。

もちろん高校生の段階では、自分の進路がある程度絞れている生徒も、そうでない生徒もいます。ですので、そのときに関心のある分野や職業に結びついているかどうかでOKです。研究をしてみたら、その分野の面白さに気づき、その方向にしっかりと進みだすこともできます。逆に、ちょっと違ったなと感じて、軌道修正を図ることもできます。

いずれにしても、学校の授業の中で、自分の進路について具体的にじっくりと考えることができるわけです。これはとても貴重な時間です。

なぜ自主研究が、好きを仕事にする準備なのか?

もう一つあります。自主研究は進路について考える時間というだけでなく、将来社会に出たときにプラスになる、もっと大きな意義があります。どういうことだと思いますか?

順番に説明しましょう。まず、好きなことを仕事にできたら幸せだということは、冒頭にも書いた通り異論ないですよね。では次ですが、「仕事」って何でしょうか!?

仕事とは、働いてお金をもらうことである。仕事とは、やりがい・生きがいである。いろいろな答えがあると思いますが、私はこの定義を取り上げています。

仕事とは、誰かの(社会の)役に立つことである。

例えば、ショップの店員さんは、お客様が欲しいものに出会えるようお手伝いをしています。道路工事の作業員さんも、みんながその場所を気持ちよく安全に通れるように働いてくれています。どんな仕事も、誰かの(社会の)“こうしたい”や“困った”を解決して、役に立っているわけです。

実はこの「誰かの(社会の)ニーズや困りごとを解決する」というのが、自主研究と仕事との共通項です。自主研究は「課題解決型」であることが理想だからです。
例を挙げてみましょう。

よく家で料理をする生徒がいて、冷蔵庫の中身を見ていて、賞味期限が切れたものがいつもあるなぁ、と思ったとします。そこで、どうしたら賞味期限が切れる前に使い切れるかを色々と試してみようと考えた。着目したのは冷蔵庫の中身に関する情報管理。でもまさかレシートを冷蔵庫に貼って、使ったら線を引くなんてことはしたくない。冷蔵庫管理アプリも見つけたけど、登録が大変そうで気が進まない。そこでその生徒は、バーコードを思いついた。スーパーのレジでスキャンするバーコードを、冷蔵庫にスキャンさせたら??
――こういうのは課題解決型の自主研究といえます。

この研究のきっかけは自宅の冷蔵庫の悩みでしたが、どこの家庭にも共通する悩みですから、誰かの役に立つ可能性大。つまり、冷蔵庫メーカーに勤める人たちにとっても重要な課題ということになります。自主研究が仕事につながることがわかって頂けると思います。

このように、自主研究を通して学生時代に課題解決に取り組むことは、社会に出ていい仕事をするために必要な根幹的な力につながる、というのが私たちの考えです。

まとめると、以下の2つが自主研究ゼミが「好きなことを仕事にする準備」である理由です。
1.授業の中で自分の進路についてじっくりと考えることができる。
2.社会人になったときに必要な課題解決力を鍛えることができる。

「好きなことを仕事にする準備」を学生のうちから始めておくと、社会に出てから自分探しをしたり、あれこれ彷徨うことも減り、何倍も有意義なキャリアパスを歩むことができるはずです。

これは、大学入試を必死に頑張って、高い学歴という有利な立ち位置で社会に飛び込むことと同じくらい、否、もしかしたらそれ以上に価値のある戦略だと、私たちは考えています!

(H Sakamoto)


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