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【小説】黒く塗れ(5/13)

 そんな指導は結局、それから1週間続いた。せっかく上がってきていた僕の成績はまた落ち始めた。落ちればまた厳しく指導された。厳しくされればされるほど成績は落ちて、まさに悪循環だった。成績は今までで最低になってしまった。

 「でも、それは指導を受けたから落ちたってわけよね。あなた自身のせいじゃないわよね。会社って、まったくおかしな事してるわよね。どうかしてるわ!」

 本当におかしいし、本当にどうかしている。でも、僕はこの会社に所属していて、あのグループに所属している。僕はそれで僕と彼女の生活を支えているわけだし、そして何よりそれがこの社会の普通のやり方なのだ。僕を含めて他の皆も同じなのだ。僕だけってわけじゃない。その中でたまたま僕がちょっと不器用でノロマでダメなやつなのだ。こんな僕でも彼女と僕の生活を支えていかないといけないけれど、たぶん、いまより昇進したり給料が上がって楽になれる事はないだろう。僕はずっと耐えて耐えてやっていくのだろう。そんな事を考え始めたら、心も身体もとても疲れている事に気付いた。

 「そう、それならちょっと休みましょうよ。休暇を取って久しぶりに海でも見に行くのが良いわ。」

 僕は休暇を申請して1週間休む事にした。


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