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子どもに望むこと 〜救急医たちの雑談〜

 以前の職場には個性的かつアグレッシブな救急医が揃っていました。呼吸器内科という診療科の特性上、救急科の先生方とは度々交流がありましたが、本日は日常の一場面に触れたいと思います。

 若手医師たちの中に熟練の救急医が混ざって雑談をしています。
 ふと、会話が自分たちの子どもに(あるいは子どもが生まれたら)何を望むか、どうなって欲しいか、という話題に移りました。

 エリート街道を直進する才色兼備なスーパー女医さんが少し悩みながら応えます。

「そうですねぇ、そんなに望むことはないです。ほんとに。人を殺さなければいいかな、くらいに思っています。」

と言って笑った彼女に対して、熟練の救急医は間髪入れずに切り返しました。

「じゃあ医者になっちゃダメだな。」

 これには若手医師一同、絶句です。
 おそらく彼女は半分冗談のつもりで、「ただ生きてくれていればいい」くらいの気持ちで「人を殺さなければいい」と表現したのでしょう。ところがこの切り返し。カウンター決まってKOです。熟練救急医恐るべし。

 一瞬凍った空気は、彼女の「あ、それもそうですね!アハハ!」という受け流しによって動き始めましたが、これは受け流すには惜しい極めて重要な視点です。

 医者は人を殺します。

 その自覚があるかどうかという問題です。

 漫画「ブラックジャックによろしく」の中で心臓外科医の北先生の台詞にこんなものがあります。

「極論すれば、俺はこの手で何人もの患者を殺している。」
「殺したんだ。その自覚が無い者は医者をすべきではない。」

 賛否両論あるかと思いますが、これは医者としての覚悟の問題であって、生死の境界を仕事にする以上は、必ず向き合わねばならないことです。
 ただ近年ではそういう「重さ」に耐えかねてか、あまり人の命に直結しないような診療科を選択する医学生や研修医が増えているような気もします。

 熟練救急医は「覚悟のある人」でした。
 若手医師にはまだその覚悟がありませんでした。

 「覚悟」とは!!
   暗闇の荒野に!!
    進むべき道を切り開く事だッ!

 はい。
「ジョジョの奇妙な冒険 第五部」ジョルノの台詞です。
 荒木先生は漫画界のシェイクスピアだと思います。

 なんだか最近、暗い話題に漫画関連の言葉ばかり想起されますね。ちょっと疲れているのかもしれません。ああ、ウイルス駆逐したい。

 拙文に最後までお付き合い頂き誠にありがとうございました。願わくは、貴方が覚悟をもって暗闇の荒野に進むべき道を切り開きますように。


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#シーザァァァァァァーーーーッ !!

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渡邊惺仁
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