見出し画像

それは本当に喘息か。

 咳。

 それは医療機関の受診理由として最も多い主訴のひとつです。クリニックに限れば最多となる主訴の咳。呼吸器内科に紹介されることも多く、その原因は多岐にわたり厳密な診断と適切な治療には相応の診療スキルが求められます。

 見逃してはいけないのが肺癌と肺結核。間質性肺疾患も治療の機会を逸すると取り返しのつかないことになり得るものですし、挙げればキリのないほど数多の疾患を想定しながら診療に臨みます。

 最近、非専門医から「咳喘息」といって紹介される誤診が相次いでおります。気管支喘息のうち、気流制限を伴わない咳発作のみのものを咳喘息と表現し、しばしば気管支喘息の前段階と理解されます。

 発症から概ね2週間の急性咳嗽では、原因疾患の多くは感染症です。3〜8週間ほど続く咳は遷延性咳嗽と呼ばれます。このあたりはまだ感染症や感染後咳嗽の割合が多くを占めています。問題は8週間以上続く慢性咳嗽と呼ばれる状態です。統計によりバラつきはありますが、概ね本邦では半数以上が「喘息または咳喘息」と診断されています。これは諸外国と比較すると異様に高い比率です。


 そんなに咳喘息がいてたまるか。



 私は考えます。

 真の咳喘息を厳密に診断するのは難しいことです。相次ぐ誤診例の紹介を受けていると、統計の「喘息・咳喘息」には相当数の「なんちゃって咳喘息モドキ」が紛れ込んでいるような気がしてくるのです。一応の診断基準はありますが、他疾患が除外されていることが前提です。そしてその判断は、専門家でも慎重になるものです。

 実際に、喘息または咳喘息と言われて治療を受けていたものの、まったく改善せずに漸く呼吸器内科を受診した頃には、例えば気管結核だったり、気管支腫瘍だったり、特殊な肺線維症だったり、酷いケースではレントゲン一枚で分かるような肺炎や肺癌が見逃されていたこともありました。

 もちろん全ての咳を患う人が呼吸器内科を受診するのは現実的ではありません。

 ひとつの目安は、2ヶ月以上続く咳。

 ひとつの指標として、レントゲンを撮らない/撮ったのに見せない医者に疑問を抱くこと。

 「何かオカシイ」と感じたら、場所を変えることを積極的に考えるのも良いでしょう。


 私はドクターショッピングに肯定的立場を取ります。藪医者の蔓延る斜陽産業に辟易としながらも、今日も今日とて誰かの肺を治しましょう。



 拙文に最後までお付き合い頂き、誠にありがとうございました。願わくは、貴方の肺がのびのび元気でいられますように。




#仕事について話そう
#呼吸器内科医 #漢方医
#咳 #とは #もうね色々原因ありますからね
#とりあえずレントゲンは見ようぜ
#って言ってもさ #胸部レ線ちゃんと読める医者が少ないんだコレがほんと参っちゃうのよ
#エッセイ #気管支喘息 #咳喘息
#桔梗 #キキョウ #花言葉は #誠実 #永遠の愛

ご支援いただいたものは全て人の幸せに還元いたします。