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「回顧バイアス」とは何か/記憶はアテにならない話

 ヒトの記憶は有機的で曖昧なもので、時間経過によって容易に変容することが知られています。

 「言った/言わない」の喧嘩がなくならず、決着もつかないという現象には、ヒトの記憶回路の不完全性が大いに関係していることでしょう。

 最近、心理学領域に興味深い研究がありましたので、ご紹介させていただきます。
 2022年11月に心理学系の専門誌に掲載された論文で、パンデミックに対する認識と記憶を分析して人々の回顧バイアスを浮き彫りにする内容です。

 
 一行でまとめると、『喉元過ぎて熱さ忘れたね』という結論でした。

 回顧バイアスとは、思い出した過去は当時のリアルとだいぶズレてるという心理現象です。

 これを避けるためには、人間の記憶は変容して当然だという前提に立ち、記録をつけることが有効な手段となります。その際のコツは事実を記録するのみに留まらず、付随する感情や思考を残しておくことです。その瞬間を保存するように、忘れたくないことは書いておくのがよいでしょう。

 この回顧バイアス。
 逆手にとるのも面白い手法です。

 記憶はどのように変化していくか分かりません。失敗は都合よく改竄されるかもしれないし、嫌なことが余計に悪化して塗り替えられていく危険性もあります。

 嫌な出来事こそ、記録した方がいい。

 忘れたらそれでよし。
 薄まり気にならなければそれもよし。
 その場合には読み直す必要はありません。

 忘れられない記憶が負の感情を煽る時。
 心の傷が命の芯まで蝕もうとする時。
 そういう時は大抵の場合、当時の事実が記憶の中で恐ろしいものに変容しているものですから、記録を振り返ることで冷静さを取り戻せるかもしれません。自分は一体何と戦っていたのだろうと、敵は自分の記憶/認知が作り出していたのではなかろうかと、そんなことに気付きます。

  
 もし貴方が今、苦しみの中にあるなら。

 記録して手放すと、幾らか楽になるかもしれません。そうして記憶の熟成を待つのです。

 記憶が好ましく変化したらそのままに。
 恐ろしい記憶に襲われたときには、記録を振り返ってリセットを試みるのがよいでしょう。


 拙文に最後までお付き合い頂き誠にありがとうございました。願わくは、貴方が過去の呪縛から解かれて明日を迎えられますように。



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