名も無き言語 《詩》
「名も無き言語」
本物の言葉が行き場を求めて
彷徨っている
言語のエネルギーは
いかがわしい程に息づいている
僕が手を伸ばして拾い上げたものは
地上には居場所を見いだす事が
出来ないまま
意識の薄暗闇に潜り込む
名も無き言語は死なずして地下に眠る
陰鬱な機械共が
ゴシック的な風景を描き
共通認識を持たない
湾曲した生命体が
惨殺された思考で社会を単調に語る
利己的な言葉の為の言葉が
全ての成り立ちを阻害する
意図的に棚上げした本心で
当たり障りのない
衣を纏いながら通り過ぎる
鋭利な刃物で切り取られた
魂の欠片は
心の中に生きている
その鮮やかさは次第に薄れて行き
やがては圧倒的な時間の中の流れに
消え去る運命なのだろうか
森の中に差し込む木漏れ日が
風の流れや雲の動きにより
少しずつ印象を変えて行く
神に愛された者の輝きを見た事があるか
舗道を微かに濡らし始めた七月の雨
本来の目的を逸脱させる程の
美しい女の様な魅力
不可思議な道筋を通り唐突に
僕の頭上から落ちて来た光
其の名も無き言語に魅了され
影を追う
そして最後の扉を開けて
風の事だけを考えた
風は僕と共に目覚め常に其処にある
窓辺に置いた小さな花を静かに踊らせ
君の声を運んで来る
名も無き言語が其処にある
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