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雨音 《詩》

「雨音」

僕は彼女と交わした

話しの断片を思い出していた

いつの間にか天候は崩れて空は

湿気を含んだ重い雲に覆われていた


僕は傘を持っていない

長く降り続きそうな雨 

ネクタイを緩めた

彼女は不思議な事に
雨の夜にやって来る


もう逢えないかと思ってたよ 

そう言った僕に

貴方は私に逢う度に

同じ事を言うのね 

彼女はそう言って微笑んだ

そして唇を噛んでまた少し笑った

ロミオとジュリエット 

遠くで輝いていた星が
近くに見える そんな夢を見た


僕等は此処に居る 

何があっても構わないよ

暖かい鼓動の中 

ふたりは瞳を閉じた

君の柔らかな髪を撫で 

その匂いをかいだ


君の名前を呼ぶ度に
其処に引き摺り込まれて行く

螺旋に似た感覚に襲われ 

僕はまた深く瞳を閉じた

君の身体に触れ
唇を這わし全てを確認し記憶した


君の震えを僕の身体の中に受け入れ

もう戻れない事を知った

あの日と同じ

止まない雨をずっと見ていた 

熱く甘美な螺旋の渦 

幻影を連れた雨音 

僕は傘を持っていない

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