盲点 《詩》
「盲点」
彼女の瞳の奥に
時間を超えた深い世界を見た
其処にある
意志の煌めきと確かな熱源
僕はその一対の瞳に
激しく心を揺さぶられた
行き先を持たず
ただ移動する為だけの
移動を繰り返す日々
そんな僕の心を
静止させる輝きを見つけた
そう思っていた しかし
僕の盲点が何かを見逃している
そして また彼女も同じだった
その何かが
最も大切な事だと知ったのは
ふたりが別れて
暫く時が過ぎてからだった
僕は彼女の話を額面通り受け取り
彼女も僕の嘘を疑わなかった
人格と存在と役割
僕の言葉は
鏡に映し出された僕自身であり
其処には単なる
物理的な反射像があるだけだった
僕が映る其の景色には
僕自身が含まれていない
そんな錯覚を覚えていた
あの日
僕を立ち止まらせた
熱源の様な煌めき
全ての思考を停止させ
嵩張る沢山の荷物を廃棄した
そしてまた
移動の為の移動を繰り返す
僕はあの日見た瞳を探している
そしてまた繰り返す
盲目のまま また繰り返す
少し躊躇った後で
僕は部屋の明かりを消した
Photo : Seiji Arita
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