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濡れた髪、シャンプーの香り

このまえ恋人の実家に泊まりに行った。

ごはんを食べてお風呂を借り、夜遅く、そろそろ寝るかあ、となって彼とともにベッドに横たわったとき、彼が私をぎゅうっと抱きしめて髪の匂いをかぎ、「シャンプーの匂いがする」と眠そうな声で言った。

シャンプーのにおいなど、お風呂上がりに一緒にいるときにはいつもしているだろうに、わざわざ彼が言葉にしたのがおもしろく、すこしうれしくて、「男の子というのは、やっぱり女の子からシャンプーのいい匂いがするとうれしいものなの?」と尋ねた。

恋人は私を抱きしめたまま「うん」と返事をし、私はそれがおかしくてくすくす笑った。

女の子の濡れた髪からするシャンプーのにおいというのが、一体どんなふうに作用して男の子をときめかせるのか、私には想像することしかできない。

私は男の子ではないし、女の子を好きになったこともないからだ。

でもそれはきっと、女の子が男の子から感じとる魅力とは根本的に違うのだろうな、ということは分かる。

なんとなくだけど、それだけは分かる。

そして好きなひとに「シャンプーの匂いがする」と言われて抱きしめられることは、たとえ相手が男だろうが女だろうが、きっとそれだけですごく満ち足りた気分になれることなのだろう、とも思う。

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