【怪談】夏だから「浄霊」という話を作ってみた~第一部~

序章から時が経ちましたが、ここから本編の第一章!!
まだ、序章を見てないという方は、ぜひ冒頭からご覧になってください。

「浄霊」という力を持つ巫女と記者の男性が出会い、徐々に深みへと足を踏み込んで行ってしまいます。

深みへと近づいた先に何が待ってるのか?
第一章をお楽しみください。

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第一章~出会い~

(シャン シャン シャン)
ブォーとほら貝のなる音の中に鈴の音が鳴り響く。
これは錫杖の鈴の音だ。

今日は巫女たち十数名が滝行という儀式を行う日だった。
最後尾にはこの神社で一番霊力が強いとされている巫女がいて、儀式に向かう準備をしている。

その傍らにはカメラを持った男性がいた。
今回、新聞社の企画で巫女の取材に来ていた「あきら」という男性だった。

「舞衣(まい)さんはいつから巫女に?」
舞衣と呼ばれた巫女は準備をしながら答える。
「20歳になった年には巫女としてここにいました。」
「この神社で一番力が強いという噂ですが、ご自身としてはどうお考えでしょうか?」
とあきらは矢継ぎ早に質問をする。
「皆さんよりも長く修行をしていますので、特別に力があるとは思っていません。彼女たちのほうが優秀ですよ。」
と舞衣は儀式に向かう巫女たちのほうを見て言った。
「それではそろそろ私も行きますのでこの辺で。」

取材を終えたあきらは取材道具を片付けながら、夕焼けの中儀式のために山を登っていく彼女たちを見送った。

(シャン、シャン、シャン、シャン….)
鈴の音が小さくなる頃には辺りはすでに暗闇となっていた。

第二章~初めての浄霊現場~

あれから数日たち、あきらと舞衣は一緒にいた。

「今回のお仕事はどんなことをされるのですか?」
あきらは前回と同様に質問をする。
「今回は4人家族のお住いの浄霊を行います。」
舞衣が説明する。
どうやら今回は巫女の仕事の取材のようだった。
「今回は比較的安全なお仕事ですので、後輩の巫女を一人連れてきていますがよろしいでしょうか?」
「よ、よろしくお願いします。」
恥ずかしそうに後輩の巫女があいさつする。
「もちろん、こちらとしては同行させていただけるだけでありがたいので問題ないです。」

しばらく歩いたのち、青い屋根で大きな庭付きの戸建てが見えてきた。
「着きました。」
舞衣の顔が険しくなる。
後輩の巫女も緊張しているようだ。

「ここが例の浄霊を依頼してきた家族の家ですか。」
「えぇ、でも聞いていたお話よりも状況が進んでいそうですので、二人とも気を引き締めてください。」
あきらは少し戸惑ったが気を引き締めて巫女の後に続いた。

ピンポーン。
巫女が呼び鈴を鳴らす。
「はーい。」
中から女性の声がする。一家の母親だろうか。
扉を開けた中年の女性は巫女を見て、安堵したような表情を浮かべて中に招いた。

「巫女さんが来てくれて本当に良かったです。」
と母親が答えると後ろのほうから
「何件も連絡したけど、どこも取り合ってくれもしなかったんですよ。」
と父親と思われる男性が歩きながら言った。

「お話を伺った時と状況が違うようですがあれから何かありましたか?」
と舞衣が質問をする。
「うちには娘と息子の二人いるんですけどね。巫女さんが来てくれると二人に伝えたら息子が怒りましたが関係がありますか?」
母親は今にも泣きだしそうに答えた。
「その息子さんは今どこに?」
「そろそろ帰ってくると思うんですけど。」
時刻はすでに20:00を回っていた。

「私たちがいると帰ってこないかもしれないので、帰ってきたら連絡をお願いします。」
「連絡の際には息子さんに気づかれないようにしてください。」
そう言い残すと、舞衣たち三人はその場を立ち去り少し離れた公園に身を移した。

「なぜ私たちがいると息子さんが帰ってこないんですか?」
そう質問したのはあきらではなく後輩の巫女だった。
「私たちが来ることを2人の子供たちに話した時に息子さんが怒ったと言っていたでしょ?」
「今回の件は息子さんに憑依した何かが原因ということよ。」
と舞衣が説明するとなるほどという表情で後輩の巫女がうなずいた。
「帰ってきましたね。行きましょうか。」
舞衣の合図をもとに、3人はまた家のほうに向かう。

3人は玄関のほうではなく、裏口のほうへと歩みを進める。
今回は裏口から和室部屋のほうに入るように事前に打ち合わせをしていたのだ。
3人は巫女は和室に入ると浄霊の準備を進める。
「ここからは秘密の儀式になります。」
「この部屋にいても良いですが、ここで起きたことは他言しないようにお願いします。」
あきらは「はい。」と短く返事をする。
「あと、何が起きてもこの部屋からは絶対に出ないでください。」
「わかりました。でも、この部屋外にいるの人たちはどうするんですか?」
「大丈夫です。あの方々も浄霊対象ですので。」
あきらは額から冷たい汗が流れるの感じた。

「それでは始めます。」
巫女2人が儀式を始めると2階から物凄い音がした。
階段を勢いよく降りてくる音が聞こえる。
次の瞬間。
「開けろ!ふざけるな!」
とふすまを思いっきりたたいている音がする。
だがしかし、開けようとはしない。いや、開けられないのだ。
後輩の巫女が一瞬ビクッとなった。
「結解を張っているので開けられることはありません。」
「あなたも修行を積んできたのでしょう?自信を持ってやりなさい。」
舞衣は冷静に後輩の背中を押す。
あきらは今起きていることに衝撃を受けて言葉が出なかった。

しばらくすると、辺りは静かになった。
「終わりました。ご家族を呼んできてもらえませんか?」
ぼーっと前を見ているあきらに向かって言った。
「えっ、あっ、はい。」
あきらは状況が掴めないまま和室に一家4人を集めた。

「もうこれで安心です。息子さんとこの家にあった不浄は取り除きました。」
この家に来た時とは違う、優しい笑顔で舞衣は家族にそう伝えた。
「ありがとうございます。本当にありがとうございます。」
家族は泣きながら何度も何度も繰り返し感謝した。

「では、そろそろ帰りましょうか。」
これが巫女の中で最強と言われた女性なのだと、この時あきらは初めて時間した。

第3章~惹かれあう二人~

「前回の件は大変でした。」
「私も舞衣さんのお仕事に何回か付いて行ってますが、いつも以上に緊張感があって声が出ませんでしたよ。」
オシャレなカフェに二人の笑い声が響いた。
あれからも浄霊の仕事があり、今日は休日のようだ。

「普段は当たり前ですが巫女さんの衣装は来てないんですね。」
あきらがいつもの調子で質問をする。
「あれは神社にいるときかお仕事の時にしか着ませんよ。普段は私服なんです。と言っても神社にいることが多いので私服はあまりないのですが。」
舞衣は恥ずかしそうに答えた。
二人の会話が進むにつれて距離も縮まっていたが、あきらには気になることがあった。

「舞衣さんは恋愛的なところはどうなんですか?やっぱり巫女だと恋をしてはいけないという掟があるのでしょうか?」
舞衣は少し驚いた表情を見せたが、すぐにこう答えた。
「修行中は恋愛禁止ということもありましたが、今は修行も終えた身ですので恋愛をすることは問題ありません。」
「ただ、、、」
と言いかけた時、あきらの電話が鳴った。新聞社からだった。
と同じ時をして舞衣の電話にも一報が入る。

「会社から連絡があって戻らないといけなくなってしまいました。」
とあきらは申し訳なさそうに言った。
「私も次のお仕事の連絡が来まして、大きなお仕事になりそうなので準備をしに戻らなくてはなりません。」
と舞衣も申し訳なさそうに答えた。

「ちなみにどんなお仕事か聞いても良いですか?またご一緒させていただきたいので。」
舞衣は顔を険しくさせながら渋々答えた。
「今度のお仕事は家ではなく、土地なんです。それもお城の跡地の浄霊となります。」
舞衣の表情からお城の跡地を浄霊することが余程の仕事なのだろうとあきらも察して、それ以上追及することなくその場は別れることとなった。


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第一部終了

第一部はここで終了となります。
次回、第二部はいよいよ深みへと到達。

2人はどうなってしまうのか?
次回はあきらの妹も登場しての新展開!

この取材の先に何が待ち構えているのか、ぜひお読みいただけたら嬉しいです。

第三部も近いうちに出しますので、最後までお楽しみに♪

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