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ハクエイ・キム&グザヴィエ・デサンドル・ナヴァル「カンヴァセーションズ・イン・パリ」(UCCJ-2165/Universal) +ノートルダム大聖堂パリ写真数点

「カンヴァセーションズ・イン・パリ」

ジャズピアニスト ハクエイ・キムの最新作「カンヴァセーションズ・イン・パリ」(4月3日発売)は、パリのジャズクラブSUNSET SUNSIDEでのライヴを記録した作品です。韓国で知り合ったフランス人パーカッション奏者グザヴィエ・デサンドル・ナヴァルにブッキングをしてもらって実現したというこのライヴは、ぶっつけ本番すべて即興とのこと。

ハクエイ君にとってパリを訪れるのは今回が初めて。リリース予定でレコーディングしていたわけではなく、内容がよかったのでリリースを決めたそうです。私も事前に公演については聞いていましたが、居合わせることはできませんでした。その模様は、下記の映像で少し見ることができます。

こちらを撮ってくれたパリの映像制作者マリアンヌを紹介したことで私の名前もクレジットしてもらえています。ありがとう、ハクエイ君!

グザヴィエ・デサンドル・ナヴァル、エネルギーについて語る

先日、そのパーカッション奏者グザヴィエ・デサンドル・ナヴァル氏とシャトレの私の定番カフェ Le Petit Opportun で会う約束をしました。ここは私に様々な“小さな機会”をもたらせてくれる幸運を呼ぶカフェで、初めてのミーティングに活用しています。

グザヴィエ氏は、1961年フランス南部出身。これまでにダイアン・リーヴス、デヴィッド・サンボーンやジョン・スコフィールドなどの一流ミュージシャンと共演を果たす一方で、映画『レオン』やフランス・ワールドカップ開会式への楽曲提供等、フランスを代表するパーカッション奏者です。ラーシュ・ダニエルソンとも仕事をしているらしく、今月これからはセシリア・ノービーの仕事でデンマークに行くと言っていました。

洞察力に優れた人という印象で、面白いことをたくさん言っていました。ここからはグザヴィエ氏との会話です。

パリの街は人からエネルギーを吸い取るから、時々パリから外に出て充電して戻ってこないといけない。

−−私がパリジャン、パリジェンヌと話をしていて、「そのうちパリに住みたいと考えている」と言うと、みんな一様に「なんで?」という顔をします。「日本の方がいいじゃないか、私はむしろ日本に住みたい」「パリはネガティヴだからいると憂鬱になる」と言われることが多いです。(グザヴィエはちょっとわからないという顔をした後にこう言いました)

ネガティヴとは思わないな… それは、その人の持っているエネルギーが少ないからだと思う。パリはハイエナジーだから、自分をそのレベルに持って行かないと弾き飛ばされてしまうんだ。エネルギーが低い人はパリの街にネガティヴにさせられてしまうのだろう。

−−なるほど。でもニューヨークは違いますね。

その通りだね! あの街はエネルギーを貰うし、与えている。NYは世界でも数少ない例外だと思う。NYと同じではないけれど香港も例外的な街だと感じたな。

−−それでは音楽はあなたにとってエネルギーを与えるものか、得るものかどちらでしょう。

両方かな。ライヴではまず最初に自分がエネルギーを出して、それからオーディエンスに与えてもらう。

−−フリージャズはエネルギーの集合体だと思いますか?

うーん、私はフリージャズのミュージシャンではないからね… そういえば、先日ストラヴィンスキーを聞いていて、ある瞬間にキース・ジャレットを思い出した。何故かはわからないのだけれど。どこかに向かおうとしているエネルギーが感じられたような気がしたのかもしれない。フリージャズにはどこにも行かず何も起きていないものもある。

−−キースにはエネルギーの向かう先がわかっていたんですね。私もフリージャズが好きなわけではないですが、中には良いものがある。それはもしかしてエネルギーの向かう先が見えているプレイヤーの演奏かもしれないと今思いました。

ハクエイとのライヴもそんな感じだった。前々日にミーティングをして、当日に曲もなく本番を迎えた。全部即興で決め事は何もなかったので、私自身あんなに上手く行くとは思っていなかったんだ。なかなかああやって上手くやれる共演者はいないよ。シンプルな曲はシンプルな感情が宿る。複雑な曲には複数の感情が交錯する。ハクエイの曲がシンプルだと言っているんじゃないよ。彼は難しい曲を書くけれど言おうとしていることはシンプルだ。それが即興のプレイにも表れているんだと思う。私も同じシンプルな人間なんだ。

今度は東京のエネルギーについて、東京で話合うことにしましょうと言うと、長らく行っていないから是非行きたいと言っていました。

今作、「カンヴァセーションズ・イン・パリ」では、ハクエイ君の持つ叙情性がパリに宿る土地の精神に呼応しています。初めての土地、ハイエナジーな街で、現地のアーティストとわかりあえずぶつかる可能性もあったのかもしれませんが、ハクエイ君とグザヴィエ氏のエネルギーは結びついて更に大きな新しいエネルギーとなっています。美しいエネルギーと言ってもいいかもしれません。

アルバムのアートワークに使われている写真はノートルダム大聖堂です。今となっては、それを意識するとまた違った印象に聞こえてくる音もあります。

ノートルダム大聖堂を中心に、最新パリ写真

パリは今週から突然夏日になりました。初夏を思わせる気持ちの良い天候が続いています。

掲載した写真はセルフィーを除いてすべてNIKONdf + AF-S NIKKOR 50mm F1.8Gで撮っています。

ノートルダム大聖堂の早い復旧を祈ります。

読んで頂いてありがとうございます!