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コロナ禍に翻弄されるフットボーラー スペイン1部CDレガネス・井手航輔がいまもTOKYOを目指すワケ


井手航輔。いまこの名前を知っているとしたら、あなたはかなりの「サッカー通」かもしれない。井手航輔は、現在スペイン1部・CDレガネスに所属する22歳のプロサッカー選手だ。


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スペインで活躍するサッカー選手といえば、乾貴士(エイバル)や久保建英(マジョルカ)、香川真司(サラゴサ)、柴崎岳(デポルティーボ・ラ・コルーニャ)らを思い浮かべるだろう。

これまで井手の名前が日本のサッカー界で話題にあがることはほとんどなかった。その理由の一つに、井手がアメリカ生まれで、日本でのプレー経験がないことが挙げられる。

謎多きフットボーラー・井手航輔とは?

井手がサッカーの世界で頭角を現したのは、15歳のときだった。MLS・ロサンゼルス・ギャラクシーの下部組織に所属していた井手は、世代別のアメリカ代表候補に選出され、さらにはチームでも飛び級でU-18のスタメンに抜擢されるなど、得点力不足に悩むチーム監督の目に止まった。

その後、ヨーロッパでのプレー機会を求めて単身ドイツに渡り、ドイツ4部のアレマニア・アーヘンに所属。プロサッカー選手としてのキャリアをスタートさせた。そして20歳の時にさらなる飛躍を求めてスペイン1部のCDレガネスに練習生として参加したところ、その攻撃センスが監督の目に止まり、スペインへの移籍を果たすことになった。

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井手のプレーは、とても攻撃的だ。上下動を繰り返すスタミナ、右サイドも左サイドもできる器用さ、簡単にボールを失わず攻撃の起点となれる技術、タイミングの良い攻撃参加などに特徴がある。

また今回オンライン取材をして感じたのは、とにかく会話の受け答えが22歳とは思えぬほどしっかりしていたこと。日本在住期間が短いため、「どれだけ日本語を話すことができるのか」と、取材前は少し不安があったのだが、そんな心配は杞憂に終わった。またこれまでアメリカ・ドイツ・スペインでプレーし、豊富な国際経験を積んできたことも彼の強みだろう。


父と交わした約束の場所

そんな井手には厳格な父と交わした大切な約束がある。

「東京オリンピックに出られなかったら、引退する」というものだ。

ドイツに渡りプロサッカー選手としてのキャリアを歩み出す際に、父と交わした約束の期限は刻々と迫っている。

新型コロナウィルスの世界的な流行により、目指していた東京オリンピックは1年の延期が決まった。最大の目標が遠く霞んでいる状況を、井手はどのように感じているのだろうか。

「いまはとても難しい時期です。東京オリンピックが開催されるかも不透明ですし、スペインリーグも再開の目処が立っていません。僕自身の去就も不透明な状況です。それに加えて、いまはサポートしていただくスポンサーも探さないといけません。まずは目標とする東京オリンピックに出場するためにも、集中してプレーできる環境をなんとかして作りたい」。

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レガネスとの契約は6月末で満了するが、まだ井手の元に契約延長の話はない。レガネスもチーム活動は再開していないため、今後チームに留まることができるかは不透明な状況だ。

「いまはレガネスに残留することを第一にしていますが、目標とする東京オリンピックの出場を狙える環境に移籍することも視野に入れて行動したい」と日本国内チームへの移籍も視野に入れている。

今後、井手が、オリンピック代表候補メンバーに割って入るためには、まずは所属チームで出場機会を得て、結果を残すことが求められる。早く安心してプレーできる環境を手にいれて、東京オリンピックの秘密兵器になるような活躍を期待したいところだ。


取材・文:瀬川泰祐(編集者・スポーツライター・プランナー)
写真:本人提供


瀬川泰祐の記事を気にかけていただき、どうもありがとうございます。いただいたサポートは、今後の取材や執筆に活用させていただき、さらによい記事を生み出していけたらと思います。