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キャッチボール 20210924

会話する事をよくキャッチボールに例える。
投げる側は不自然の無いフォームで、相手のミットを目掛けて、不測の変化の起こらない様な回転で球を放る。
受け取る側は投げる側の多少のブレを了承し、尚おおよそミットの方へ向かって放られる球を不自然なく受け止める。
これを交互に繰り返して行く。
円滑であればある程、褒められ、それが出来る事が良い事だとされる。

キャッチボールのできない者は、訓練が足りないと叱責され、そのフォームを矯正される。
いつからだろうか。
自由に球を放る事を許されなくなったのは。
小学校に上がった時?制服を着始めた時?大学に入った時?就活を始めた時?
覚えた言葉の数が増えるにつれ、奔放な投球は制される様になった。
相手のミットをよく見て、相手が受け取り易い球を投げなさいと入念に教え込まれる。

その窮屈さがとても嫌いだ。
できる事であれば、思い切り遠くへ、一方的に幾つもの球を放ってみたい。
そして、他人のそんな無秩序な投げ込みを眺めてみたい。
相手に関心が深まれば深まる程その欲求は増していく。
コードから解き放たれた時にあなたはどの様な球を放るのか、どの様なフォームを見せるのか知りたいと思う。
これはすけべ心とほぼ同じだ。

この頃、コミュ力という言葉に言い換えキャッチボールの巧さで人の能力を測る事が圧倒的に多い。
はっきり言って俺は正しいキャッチボールが嫌いだ。
かと言って苦手かと聞かれればそうではない。
謙遜を抜きにして言えば中の上の腕前というところだろう。
嫌味な性格で申し訳ない。
心の中で「無駄だな、無益だな」と思いながら一通りの投げ合いができる。
だが、このところキャッチボールに疲れてしまった。
心の中で呟いた「無駄」という言葉が体外に飛び出してしまった様な感覚だ。

世の中で行われているコミュニケーションなんて大概が上部だけのやり取りであって、投げ合われる球に重みなどない。
多くの人は自分が決めた特定の親しい間柄を除いて、他所行きのキャッチボールをルーティンの様にこなしていく。
それが時として規範であり、時としてモラルになるからだ。
その場に応じたボールが投げられれば社会はそれを受け入れる。

とは言え多少不恰好なフォームであれ、その人なりの球があるのであれば俺はそれを見てみたい。
危険球ギリギリの球でも精一杯の投球にはなんらかの輝きが秘められていると信じている。
もっとも、死球ありきの乱投など許されるはずがないとも思うが。
(狙って死球が投げられればそれは乱投ではないかも知れない。)

世に蔓延るキャッチボール至上主義に一石投じたいという訳ではない。
ただ、同じ球でも遊び方に幅を持たせられないだろうかとエゴイスティックに考えている。
自分が遊びを持たせた球を放るのと同じくらい、相手にも楽しいボール遊びをしては貰えないだろうかと考えてしまう。
何なら自分は相手が球を投げる様を眺めるだけで満足かも知れない。

この日記の文章はとても回りくどい。
何を言いたいのか読み取れない日の方が多いのではないだろうか。
少なくとも連日のこの日記を"解って"読んでいる様であれば、余程の読解力・想像力が備わっている事だろう。
何故なら書いている自分自身が何を言いたいのか解っていないのだから。

それなのに何故分かりやすい方へ接近して行かないのか。
単純に回りくどいのが好きだという事もある。
しかし、それ以上にごちゃごちゃさせたがるのは、投げ込み続ける事で"分からない"の筆致を浮かび上がらせたいという目論見があるからだ。

キャッチボールが嫌いで。
何かを強制・矯正されるのが嫌いで。
でももっと楽しく話がしたくて。
楽しい話が聴きたくて。
どうしてよいのか分からない。

人間生きていると相手に意図がちっとも伝わらない瞬間にぶつかる事がある。
ああ、なぜ、と無力感に苛まれる。
それでも尚どうにかして伝えようと試みる。
時としてそれは伝え方の問題でない事がある。
そもそもの意図が相手の想定を外れている場合だ。
これは苦しい。
あの手この手で自分の思いを伝えようと思っても、そもそも相手の世界にはその概念が存在しない。
こうなると相手の頭の中にゼロから概念を植え付ける必要がある。
そんな時、人は伝えようとする事を諦めるのか、それとも尚踏ん張り続けるのか、そんな選択を迫られる。
どうでもいい相手なら簡単に諦めてしまうだろう。
ではどうでもよくない相手ならどうだろうか。
きっと諦めがつかずなんとか伝われと踏ん張るのだ。
その諦めの悪さの愛おしさを忘れてしまってはいけない。

いよいよ何が言いたいのか分からなくなった。
全部ひっくるめて言うと、今俺は気を病んでいるという事。

はっはっは。

今日はここまで。

Passion Pit / Constant Conversations

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