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『サイバーパンク2077』のエッジラーメンが食べたくて

先日、ついにNetflixに加入しました。気になる作品が独占配信されるたびに「入ってみようかな」と思いつつも、月額料金の高さとプライムビデオの利用頻度を理由に毎回躊躇していたのですが、今回ばかりはそんなケチ臭い理由よりも視聴したい想いの方が上回りました。
決め手はもちろん、アニメ『サイバーパンク エッジランナーズ』です。

丁寧に描かれたナイトシティの日常風景とデイビッドの成り上がりストーリーに引き込まれながら5話ほど一気に視聴し、気付いたときには正午過ぎ。口寂しさと小腹の減りを感じながら、心はハイテクと汚濁にまみれた“夢の街”にある。こんなときはヘルシーな食事よりジャンキーなものを口にしたくてたまりません。

そんなときに思い浮かんだのは、数日前にTwitterで見かけたあるサイバーパンク飯のことでした。

エッジラーメン(『サイバーパンク2077』)

『ブレードランナー』で描かれた2019年のロサンゼルスといい『ニューロマンサー』に登場する千葉シティといい、サイバーパンクものといえばなんちゃって日本がつきものです。

バブル最盛期の80年代日本が欧米諸国にとって脅威と見なされていた時代背景を反映してか、東京の夜景がリドリー・スコットが思い描く近未来像とそっくりだったのか、単に「なんて書いてあるかわからないけどなんとなくかっこいい」と読めもしない外国語Tシャツを着るようなノリでたまたま日本が選ばれただけか……まあそんなことはどうだっていいです。
とにかくステレオタイプの日本要素が無いサイバーパンク作品なんて、締めに蕎麦湯が出ない蕎麦屋も同然。食事自体は普通においしくても、どこかに物足りなさを感じてやみません。

ナイトシティでよく見かけるラーメンの看板

もちろん『サイバーパンク2077』も例外ではありません。アラサカやキロシをはじめとした日系企業、ジャパニーズヤクザのタイガークロウズ、アジア系移民の多いジャパンタウンやカブキ、日本語の看板や広告など、街を見渡せばいたるところに日本要素が盛り込まれています。

ナイトシティでよく見かける解像度低めの寿司

飲食店や屋台を覗いてみるとアジア料理のオブジェクトが多く、寿司・焼き鳥・ラーメンといった日本食もよく見かけます。
といっても合成肉や加工食品がポピュラーな世界観なので、米の触感を改善し着色料の無害化に成功した握り寿司が存在するなど我々が知る日本食とは少し異なるようです。しかしこれも日本文化が現地流にアレンジされ、ナイトシティの人々に受け入れられているという証でしょう。

エッジラーメンもそうした地元民に愛される日本食のひとつ……ではありません。

Netflixで『サイバーパンク エッジランナーズ』が配信される前日、突如CDPRがTwitter上で公開した謎のラーメンがこれ。「エッジランナー(傭兵)」と「ラーメン」をかけただけのダジャレ料理です。

そんなくだらないダジャレから生まれたサイバーパンク飯ですが、レシピ(PDF)を見るとかなりまともな料理であることがわかります。
スープの作り方やトッピングのチョイスは我々が想像する日本式ラーメンとは異なりますが、異国風と考えれば断然アリ。ラーメンだけなら手間も時間もそんなにかからなそうですし、材料もスーパーで手に入るものばかりなので再現も難しくなさそうです。

ナイトシティでよく見かけるまずそうなラーメン

そしてなにより、ゲーム内に登場する味噌スープか泥水かまったく区別がつかないような茶色いラーメンに比べるとずっとおいしそう!

厳密にはゲーム飯でもアニメ飯でもないのですが、CDPRがああしてSNSで公表した以上は公式ナイトシティ飯であることに変わりありません。
もうこのときの私は完全にエッジラーメンの口になっていました。

しかしレシピを忠実に再現しようにも、材料が揃っていません。
スープに使うカレーは粉もペーストもレトルトも手元に無く、似たようなものがあるとしたらクミンとガラムマサラぐらい。しょうがとにんにくは普段からチューブタイプを使っており、珍しく買った生のしょうがも自家製ジンジャービアを作った際にすべて使い切っています。トッピング用のケールやコリアンダーにいたっては、そもそも自炊で使ったことすらありません。
おまけにこの日は台風の影響で外は大雨かつ大荒れ。買い物に行く気力も起きませんでした。

ですが「○○が無いから作れないよ~!」と泣き言を言うのはサイバーパンクらしくありません。お気に入りのおもちゃに固執するのもいいですが、そのへんで拾ったテキトーな武器でゴロツキどもをサクッと蹴散らしてこそ一流の傭兵ではないでしょうか。
アニメでもメインたちは綿密な計画を立てたうえで行動しつつもアクシデントには臨機応変に対処していましたし、心なしか私の中のシルヴァーハンドも「コーポが好き勝手決めたルールなんざクソくらえ」と悪態をついているような気がします。

今回スープ作りに使用した材料の一部

ということで、冷蔵庫にあるものオンリーで作っていきました。

分量だけはレシピで確認しながらスープ作りを進めていく

しょうが(チューブ)・にんにく(チューブ)・クミン&ガラムマサラ(カレー粉の代わり)を軽く炒め、豆乳と水を入れて弱火で煮ること10〜15分。仕上げに醤油・レモン果汁・メープルシロップを入れて味を調整すればスープの完成です。

そして別ゆでしたインスタント麺を入れて、ゆで卵・刻みネギ・黒ゴマ・炒めたニラ(ケールの代わり)・炒めたえのき(揚げマッシュルームの代わり)・食べるラー油で味付けした厚揚げ(揚げスイートチリ豆腐の代わり)を乗せれば……

いついかなるときもエッジを攻めるサイバーパンク向けのラーメン……にしてはかなり普通で家庭的なラーメンができました。

実食

レシピを見た時点では「東南アジアでありそうなクリーミーでちょっと癖のあるカレーヌードル」という印象でしたが、実際に食べてみるとかなりあっさりした味わいで驚きました。
……というのも、分離した豆乳を全部アクだと思って取り除いてしまったのです。

そのため私の作ったエッジラーメンは豆乳のコクもまろやかさも無い澄んだスープになってしまったのですが、これが意外とおいしい!
レモンとにんにくをベースとした醤油スープはあっさりしていてフルーティー。レモンのさわやかさがクミンとガラムマサラのスパイス感を上回り、ほんの少し異国感のある塩分控えめのレモンラーメンに仕上がっています。

ただ、どうも塩っ気が足りないというか……味がめちゃくちゃ平たい。パンチを出そうと胡椒や食べるラー油を足しても表面的な辛さが増すばかりで、スープそのものに深みがまったく感じられませんでした。
決め手はやはり、出汁の有無でしょうか。レシピには「水またはベジブロス」とありましたが、後者で煮た方がもう少し味に奥行きが出たのではないかと思います。もしくは鶏がらスープの素かコンソメキューブか……いっそのこと和風だしで日本人好みの味に仕上げて「アラサカラーメン」に改名するのもアリかもしれません。

要するに「エッジ(崖っぷち)」という割にはそこまで癖が強くなく、かなり平坦な味です。おいしいといえばおいしいのですが、その味からは栄誉の死に向かって命を燃やし続けるエッジランナーの姿をとても想像できません。
しかし、トッピング次第で和にも洋にもエスニックにもなりそうなポテンシャルを秘めているあたり、多民族都市のナイトシティっぽいといえばナイトシティっぽい料理……なのかもしれません。

「和風エッジラーメンをアラサカラーメンとするなら、カレー粉を入れまくってスパイスをガンガンに効かせたインド風エッジラーメンはダラーメン(ダラ・ポリテクニック・ラーメン)になるんだろうか」……などとくだらないダジャレを考えているうちにあっという間に完食。本当に軽くてあっさりしていて、スープまで飲み干すのに罪悪感すら感じませんでした。

……味も量もおやつすぎて物足りなくて、追加でカップ麺まで食べちゃったけど。

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