ふたりはうさぎさん

閉ざされた空間
文字だけの世界

ふたりは何時間と
閉じ込められている

延々と続く川の如く
流れ続ける文字列


<< もういかなきゃ


戻るべき世界がある
わたしはいつまでも
”ここ” にいるわけにはいかない


>> さびしくてしんじゃう

あなたにしてはめずらしく弱気ね

<< いくの

>> どうせさびしくて戻るだろう

<< そう言われると戻りたくなくなる

>> 天の邪鬼か

わたしはアマノジャク
悪鬼になることで
あなたの心を探っている


>> 引き止めると逆効果になりそうだ

<< 明日考えるわ


いつものように画面を閉じて
わたしは眠りにつくの




また太陽が昇れば
閉ざされた空間が開かれる

躊躇なく今日も
文字だけの世界へと旅立つ


>> あらためて君を大事にしなければと認識した

<<  言葉ひとつひとつ、大事にしてもらっています

>>  どんな ”形” であれ  俺は君が好きだから


文字のせせらぐ音は
なおも絶えず心地よく耳に残る


>> この関係が続くように努力するだけだ

<< ピュアね、恥ずかしすぎる

>> 純愛っていいだろ?

<< ほんとね、初めてかもしれない

>> ?

<< 純愛?


愛しい想いを
文字だけで綴り合うことは
純愛以外の何物でもない
違うのかしら


>> 君をもっと深く知る必要がありそうだ


きっとあなたは苦い顔をして
微笑んでいる

どんな顔をしているのかは
知ることはないけれど


>> 俺の人生はただ日々平和に生きてのんびりできればいい
  せわしない世の中で今一番不足しているものだ

<< わたしには共感できないわ

>> ウッドデッキで椅子に腰かけながら紅茶を飲む

<< ふふ、縁側で緑茶じゃないのね


ドラマのワンシーンのような映像
優しい太陽の光に照らされて
ぽかぽかと心が温められてゆく


>> ただ、その風景は一人だったり二人だったりする

<< どういうこと、奥さんってことかしら?

>> そう

<< 一人でもいいの?

>> うん


温かい日差しは一気に陰り
モノクロの世界へと戻ってゆく


<< さびしくないの?

>> さびしいかもね

<<  わたし、一人は無理ね

>> 最終的にいなかったら連れていくか

<< あの世に、連れていってくれる?

>> あの世ってなんだよ


わたしの心の鬼が
再び顔をのぞかせる


<<  孤独になるくらいなら、早く閉じるの

>>  それはないな

<<  孤独を ”楽しめる” 人?

>>  それなりにな



悪鬼はほくそ笑んで満足すると
飛び跳ねるようにして

心に消えた


>>  ゆりさんは、うさぎさんか

<<  うさぎさん?


>>  「さびしくてしんじゃう」


<<  あら、そのセリフ、どこかで聞いたような

>>  はて?

<<  うさぎさんがもう一匹

>>  だれでしょうね



ここには
わたし以外に
あなたしかいない

ふたりきりの空間



今日もよどみなく
川は流れてゆく



「ふたりはうさぎさん」

~END



>>> こちらの作品は、お一人お一人に向けた心の手紙です。心歌として吐き出しています。


この記事が参加している募集

ゲームで学んだこと

恋し続けるために顔晴ることの一つがnote。誰しも恋が出来なくなることなんてないのだから。恋しようとしなくなることがわたしにとっての最大の恐怖。いつも 支えていただき、ありがとうございます♪