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青髪と厚底ブーツ #11<終>

桜散る季節になると
嫌いだった
美しい配色コントラストを思い出す

” サクラサク ”

手に入れた輝かしい未来に
青髪のあなたはいなかった


***


新しい年を迎え
厳しくなる寒さとともに
目もさらにつり上がっていった

予備校ではピリッとした硬い風が吹き荒れ
教室は鉛筆のサラサラとした音しか響いてない

試験前最後の一ヶ月
わたしはひたすらに手を描き続けていた

手を描くためのモチーフは
もちろん自分の手

ふっくらと丸みを帯びた生々しい自分の手が
嫌いだった

どう上手く描いても
モデルが悪いから
カッコ良い構図にならない

たった数回繋いでもらった
骨張った手を瞳の奥から引っ張り出しては

ひたすら理想あおの手を描き続けた

画用紙100枚描き切る目標を
恵風が吹く前には達成して
ようやく吹っ切ることができたの


デッサンでは
モチーフの周りの青い風を描き切った

平面構成では
美しい配色を青い空いっぱいに塗り切った


風が通り抜けていった先には

希望する学部学科全てに
桜が咲いた



>> 昭和記念公園の桜の前で待っている


まだ暖かい風が吹かない頃から
同じ内容のメールが何通も届いていた

桜のつぼみが膨らんできた頃にも
同じ内容のメールが何通も届いてきた

若葉が芽吹き青い香りのする優しい風が吹く頃
役目を終えた桜の花が美しく散り始めた


もうメールは届かなくなった


まるでゲームの世界の主人公のような姿をした
現実のあなたは
青い髪に青い眼、黒い厚底のブーツを履いていた

わたしが最後に恋をした
アバターじゃない
現実のあなたの物語ストーリー

肌に優しく触れ
髪を愛しく撫で
唇にキスしていく
本物の「風」


それからはわたしは
現実リアルの人と恋をすることはなくなった


現実の恋を捨てたわたしには
もう二度と手に入らない最後の風


毎年春が訪れるたびに

記憶の中を吹き流れ
桜の花びらを舞い散らせていくのよ



「青髪と厚底ブーツ」

~END


#創作大賞2022

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