忘れられた打ち上げ花火:第8話
仮の世界の湖の前
仮の打ち上げ花火を
仮の姿のあなたの隣で見上げながら
夜通し聞いたあの曲を
未だって私は聴くの
***
まるで夢のような一日だった
あんなに楽しく過ごせるなんて
思いもしなかった
すべては仮想世界で起こったこと
仮のわたしへ想いを託し
現実世界へ戻ってくる
「想いが通じ合えて良かったわね、彼のことが好きだったんでしょう? 」
そう ”わたし” に問いかけた
仮想世界の想いは
現実世界に持ってきてはいけない
それはあなただって同じこと
綺麗に解けてゆく
夏夜の魔法
打ち上がることのない
打ち上げ花火
世間から忘れられてしまった
花火大会
ライブ後
最後に抱きしめられた夜の公園で
わたしは一つの嘘をついた
これであきらめがつくのならば
少しの罪を背負って
生きていくことなど
”大人” にはたやすいこと
いつかあなたが
自信に満ちあふれて
胸を張れるような
素敵な社会人になったとき
ご飯でもおごってくれないかなって
期待しないで
夢見てる
それ、すごくがんばれそうね
軽く唇に指をあてて
目を閉じる
*
それから、一年後
再び仮想世界での誕生を祝うイベントが行われた
すれ違いで会えなかった
一年前のあの日のこと
ーー もう、忘れないよ
ーー 次は絶対、一緒に打ち上げ花火を見ようね
あなたが公園で囁いたから
仮の”わたし” は打ち上げ花火が上がる街で
ずっとずっとあなたを待っていたのよ
あなたを待つ
わたしの纏う浴衣は
紺地だったかしら
それとも
白地だったかしら
もう花火とともに
忘れられてしまったけれど
きっと
これで良かったのね
「忘れられた打ち上げ花火」
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>>> 「忘れられた打ち上げ花火」続編:「あなたの二番目にしてください」をぜひご覧ください♪
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