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【2023創作大賞応募作品】無料公開:忘れられた打ち上げ花火

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【2023創作大賞応募作品】のため。現在全話無料公開中です。オンラインゲームからはじまるリアル恋愛短編小説です。綺麗に解けてゆく夏夜の魔法、打ち上がることのない打ち上げ花火、世間…
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【2023年note創作大賞応募作品〜いいね♡応援7/24まで!お願いします〜】忘れられた打ち上げ花火:第1話

群青色のキャンバスに 筆を一振りすれば 彩どりあざやかに 発光するインクが リズムよく飛び散り 心に重く打ち込まれ 恋模様を描き出す 夏の夜だけに かけられた魔法 あなたを待つ わたしの纏う浴衣は 紺地だったかしら それとも 白地だったかしら *** >> 花火大会? あんまり行ったことない << ねぇ、冗談でしょう? 恋をしたら イコールで結ばれても おかしくないと思っていた 「花火大会」 好きな人と それはもちろん 好きと通じ合う前の人とでも 人

忘れられた打ち上げ花火:第2話

ゆりさんは どんな人と結婚したい? そうね わたしと同じ味のアイスが 好きな人かしら そう答えたら あなたは優しく笑っていた *** あるオンラインゲームの仮想世界 新大陸への冒険の出発地点である、港町 この町の一角には鍛冶ギルドがあった わたしたちはこのギルドで ふたり道具職人としてミニゲームをしながら 高度な素材アイテムを創り出していた バトルしてモンスターを倒すだけが オンラインゲームの楽しみじゃない アイテム同士を組み合わせて 新しい素材アイテムを創り

忘れられた打ち上げ花火:第3話

いつかあなたが 自信に満ちあふれて 胸を張れるような 素敵な社会人になったとき ご飯でもおごってくれないかなって 期待しないで 夢見てる それ、すごくがんばれそう *** あなたの住宅地の完成を サークルのメンバーたちも たくさんお祝いしてくれた あなたはサークルのリーダーだった サークルのメンバーであれば だれでもあなたの住宅地にワープで飛んで 素材屋や競売はもちろん、冒険に必要な宿屋、 アイテム屋、教会など便利な施設を自由に使うことができた これは本当にす

忘れられた打ち上げ花火:第4話

高校生になって 初めて自分で選んだ浴衣は あざやかな黄緑と黄色が美しい生地に 赤いトンボが描かれていた いつか 紺地の浴衣が似合う 素敵な大人の女性になりたいと 夢見てたことを 思い出す *** <<  レディーボーデンのチョコアイス、売ってなかったのよ 紺地に彩どり美しい朝顔が咲く浴衣に えんじ色の帯を合わせ 可愛らしく文庫結び(リボン結び)にした後ろ姿は まるで高校生の時に戻ったようで 気分は最高潮 >>  レディーボーデンのチョコが売ってないなんて、どこに

忘れられた打ち上げ花火:第5話

打ち上げ花火を見上げながら ふたりで過ごした けして明けない夜 きっとあなたも さほど遠くもない過去の想いが 引っ張り出されて あふれてしまったのでしょう わたしを通して 今も忘れられずにいる 白い浴衣の彼女の存在を *** 遅かれ早かれ いつかはわかることだった 気づかないふりをして 見えない気になって 浮かれてた現実のわたし 初めてあなたの現実の声を 聴くことになって 気づいてしまった想い あなたを本気で好きになりかけている 現実の年齢差は15以上 あり得

忘れられた打ち上げ花火:第6話

あなたの好きなエモい曲を聴いて あなたの好きなアイスを食べて 少しずつ少しずつ 想いを冷ませていく日々 それは正しい恋愛じゃないわと 諭せるほど わたしだって 大人に成りきれていないの *** 程なくして あなたと一緒に遊ぶことをやめた 毎日遊ぶことを約束していたわけではなかったけれど 何となくフリーにしていた午後11時からを これからは 他の人と遊ぶ時間にしていくねと 伝えた >> ゆりさんの好きにしてくれて、俺は大丈夫だよ 理由も聞かず 引き止めることもなく

忘れられた打ち上げ花火:第7話

「こんにちは」 少し緊張した様子で微笑む 現実のあなた 「ふふ、はじめまして」 はじめましてじゃない はじめまして 仮想世界で話すように いつもの会話が始まり 特にあてもなく 自然にふたりで歩き出す そう わたしにとって やっぱりあなたは  アバターのままのあなたで あなたにとっても やっぱりわたしは  アバターのままのわたしだ *** 「良かった、ゆりさんが同じくらいの歳の人で」 駅を出て交差点を渡り切ったところで ようやく現実の姿の話になる そうは言う

忘れられた打ち上げ花火:第8話

仮の世界の湖の前 仮の打ち上げ花火を 仮の姿のあなたの隣で見上げながら 夜通し聞いたあの曲を 未だって私は聴くの *** まるで夢のような一日だった あんなに楽しく過ごせるなんて 思いもしなかった すべては仮想世界で起こったこと 仮のわたしへ想いを託し 現実世界へ戻ってくる 「想いが通じ合えて良かったわね、彼のことが好きだったんでしょう? 」 そう ”わたし” に問いかけた 仮想世界の想いは 現実世界に持ってきてはいけない それはあなただって同じこと 綺麗に

忘れられた打ち上げ花火:第9話 「あなたの二番目にしてください #1’」

偶然に あなたに出逢えた その奇跡が 本当に歌詞にリンクして 運命的なものを 感じていたのは 一緒なの 「わたしもあなたの二番目にしてほしい」 *** >> ちょっとリアル(現実)で話がしたい ゲームでチャットが来たから わたしは仮想世界からログアウトして いつものように寝る体勢になってから LINE通話を鳴らした ゆったりとした優しいあなたの声が 今日はいつもより少し低めのトーンで聞こえる 「ねぇそれ、どういう意味?」 って ”わざと” 聞き返した 意

忘れられた打ち上げ花火:第10話 「あなたの二番目にしてください #2’」

奇跡って 起きたようにみえるかもしれないけれど 努力で起こす奇跡の方が大半だって あなたは知っていたのかしら *** あなたとの初めての通話は ひどく緊張した 緊張しすぎてあまり覚えていない アバター同士でチャットをするときの 元気なイメージとは少し違って ゆったりとした優しい口調だったことは ふんわりと覚えている 待ち望んでいたあなたの声 一緒にゲームをしながらの 通話ではあったけれども 気づけば通話は6時間にも及んでいた 止まることが珍しいほど チャットで

忘れられた打ち上げ花火:第11話 「あなたの二番目にしてください #3’」

はじめましてじゃない はじめまして アバターのあなたが 現実のあなたに置き換わる その瞬間が わたしはたまらなく好きなんだ *** 名古屋はよく訪れる場所だった 九州から関東・東北にかけての中間地点で 現実の冒険者たちが集合しやすいため いろんなオンラインゲームでオフ会の会場となる事が多い ”いつもの場所“ に少し安心することができた 定番の金時計前で 待ち合わせを指定した 結局お互いに顔はわからないままで ライブの日を迎えていた 実際の姿なんて どうでもよかった

忘れられた打ち上げ花火:第12話 「あなたの二番目にしてください #4’」

仮の世界の湖の前 仮の打ち上げ花火を 仮の姿のあなたの隣で見上げながら 夜通し聞いたあの曲を 未だって私は聴くの *** スモークが焚かれ、紫に霞がかった会場 ついにライブがはじまった 恋しきれない苦々しい歌詞が まるで自分たちを映し出しているような 錯覚を起こしてしまう そんな失恋ソングを得意とする アーティストのライブだった わたしたちはこのアーティストが大好きだ いや正確に言うと あなたが大好きな音楽 だからわたしも大好きになった音楽 あなたを想う歌詞が

忘れられた打ち上げ花火:第13話 「あなたの二番目にしてください #5」

想いがすれ違っていたね 声を掛ける勇気がなかったのよ 心から幸せになってほしいって 思える人に簡単に 巡り逢うことはないから 「応援してる」 握っていた手をゆっくり離すと 振り返らずに改札を抜け 新幹線に乗り込んだ *** 会場の外に出ると ひんやりと涼しい風が 火照った頬をそっと和らげてくれた 新幹線の時間まであと2時間ほど 初ライブの余韻を語り合うと思って 最終列車を予約していた あなたはさっとスマートフォンを取り出して 何かを急ぎ打ちこみ確認する 「公園