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歴史?SF?文字にまつわる不思議な短編集【徒然読書63】


大学の時に読んだけれど不思議過ぎて頭に残っている本があります。

今読み直してもやっぱり不思議。
何が不思議なのかと言われても言語化しにくい。

それが『文字渦』。


中原敦の『文字禍』を意識しているのかなと思ったら、「新字」でナブ・アヘ・エリバ博士が登場!

出典は明言していないけれど、やっぱり繋げてたんだとワクワクしました。

渦と禍が違うのも文字の不思議さを示しているのかな、左が違うだけで意味が変わる文字の多さ、だから実態を留めず移り変わっている…

さておき、この本は日本SF大賞と川端康成文学賞も受賞しています。

それならばSFがメイン?と思いきや始皇帝や則天武后、境部石積、空海、王羲之、紀貫之など歴史上の人物も出てきます。

本層学やフレキシブルディスプレイ、発光する文字、転生文字といったSFっぽい短編もあります。

巻末の参考文献を見れば、説文解字や蛍光タンパク質、微化石、道教、大乗仏典、情報学、土佐日記、伊勢物語と多岐にわたっています。

多分野を基盤にしながら、歴史とSFが交互に織り交ぜられていて、互いに別の短編と繋がっている構成です。

構成も不思議さの要因の一つかもしれません。

また、「誤字」では全てにルビが振られていてしかも文章とは別の文章!
文字だけでこんな書き方があるんだと思いました。

私が惹き込まれたのはやっぱり歴史で、特に「文字渦」「新字」「天書」「かな」の短編。

史実に基づいていて、文字が持つ力、特異さを表現しています。

極論、この一言につきるのかなと思います。

文字を書くとは、国を建てることである。
p175


読むだけでも他の本とは違う感覚を味わえるので、お時間がある時にゆっくり読んでみると、「文字」の面白さを改めて実感できそうですね。

手ぶらではなくて検索しながら読むとさらに面白くなりそう。

今回はスキマ時間でぱぱっと読んでしまったので、じっくりと……ぱぱっとだと一部しか頭に入りません。

そんな不思議な本でした!

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