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「言葉」「図書館」について考察されている小説【徒然読書60】

みなさま台風は大丈夫でしょうか?

ろくに外に出られないので、今までためていたシリーズ本を一気読みしました。

それが『図書館の魔女』。
ファンタジーであっても、魔法ではなく「言葉」の絡み合い。

著者が言語学者というのも納得するぐらい、「言葉」に対する考察が深いです。

4冊あり、分厚いので全部読むのに時間はかかりますが、それだけの楽しみはあると思います。

主人公マツリカ(通称「図書館の魔女」)は口がきけません。
だけど手話や指話を駆使して豊かな言葉、世界観を表現しています。

このシリーズの根底に「言葉」とは文字なのか声なのかがあります。
形がないものでもあるけれどそれなら文字は「言葉」ではない?
図書館は「言葉」は見えないけれどせめぎ合ってバランスを取っているからこそ静か。

今まで当たり前と思っていた概念を問われたような感覚です。

加えてさらに面白くしているのが、ファンタジーによくある特殊な力や魔法はまったくありません。

権謀術数渦巻く世界なのは共通しているけれど、博識を武器にしているわけではない。

ただ人から漏れ出る言葉をヒントにたぐり寄せていき、本元をたたく。
まるでマツリカが紡ぐ「言葉」が魔法のように。

マツリカに言わせれば、快刀乱麻、魔法はない!と切り捨てるだろうけど。

キャラがそれぞれ立っていて、ついつい感情移入してしまいます。
マツリカに付き添うことになった少年キリヒトとの嫌み合戦しつつ息の合ったコンビネーション。

ちょっとした発見からパズルを埋めていくように外交の切り札にし、言葉だけで周りを動かしていく。

敵対する相手も明確と言えば明確だけど様々な思惑が絡み合っていて、それをひとつひとつ丁寧にひもといていくのが面白いです。

漢字も難しいものが多かったけれど、漢字が好きな人ならわくわくするかもしれない。こんな漢字があってこう読むのかこう使われるのか。

分厚さを忘れて次へ次へと読み込ませるような本に久しぶりに出会いました。

違和感があるとすれば語り方が一人称ではなくて三人称なこと。
神の視点から見ているような、すべてを知っている第三者の眼から眺めているような感覚です。

これに慣れるのに時間がかかってしまいました。
たいてい小説は登場人物の誰かの眼から、感情から見ていくもの。
それが第三者の眼というのも面白さを引き出しているのか、異質さを生み出しているのか・・・

ともかく、まとまった時間があるときに最適な本です!

実はこの本、高校生の時に図書館で一度読んでいるのですが、難しい入り込めないと感じてしまい途中で止めてしまいました。

途中で止めた本でも、ふと思い出されて読んでみたくなる。
読んでみると意外と読み切れて満足感があったり新たな気づきを得られる。

そんな二重の読書体験も楽しいものです。


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